1・2年次の授業:充実した基礎教育

1・2年次は芸文の学びの基礎となる力を付ける期間
ユニークな基礎教育カリキュラム

「ミュゼオロジー」「マネジメント」「プランニング」を重要な3つの領域として、理論と表現の両面から実践的に学び、大学での全ての学びの基礎となる「見る」「聞く」「読む」「話す」「書く」「つくる」という6つの力や、芸術文化学や美術史、教育・生涯学習の知識・理論、アートやデザインのさまざまなメディア表現のための基本的なスキルを身につけていきます。
さらに、1~3年次を対象とした、社会に向けた実践的な発信のプロセスを体験する授業「アーツプロジェクト」も履修できます。また、1年次から必要な科目を履修することで、卒業時に博物館学芸員資格教員免許状を取得することも可能です。

1年次:理論と実践の基礎を育む

芸術文化学入門
担当教員:専任教員全員三代純平

1年次の必修授業として位置づけられる「芸術文化学入門」は、芸術文化学科における4年間の学びにおいて最も重要なリソースとなる専任教員の専門分野について、さらに大学での学びや研究の重要な方法・態度であるアカデミック・ライティング(レポートや論文の作成の仕方)について、日本語教育を専門とする教員から、講義・演習を通して、学びます。

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プランニング入門・実践
担当教員:塚本文雄

社会においてあらゆる場面で企画力、企画推進力が重要となっており、これらの能力がある人材が求められています。この授業では、企画力を身につけるための入門編として、企画構想のために必要な発想法、マーケティング、コンセプトメイキング、PR、ロジカルシンキングなどの基礎的知識の獲得と授業中の演習を通して企画書作りの基礎を学びます。課題として実践的テーマをもとに企画書を作成し、プレゼンテーションを行うことで、相手を納得させる良い企画、良い企画書とはどんなものかを学びます。後期は実践編として、調査分析、広報、広告宣伝、WEBコミュニケーション、ブランディングなど、イベントや大規模施設企画を行うために必要な基礎知識を獲得し、前期より規模の大きなテーマの企画書を作成します。

プランニング入門

ミュゼオロジー入門
担当教員:春原史寛

ミュージアム(博物館)は、人類の歴史が生み出した、芸術、歴史、民俗、産業、自然科学などに関する資料を、収集し、保存し、研究し、調査し、それらを一般に展示公開し、一般市民の学びを促進し、教養や娯楽に供する、希有な文化装置です。この授業は、博物館についての学問である「博物館学」の基礎編として、より専門的な博物館学の学びのための基礎知識を提供し、ミュージアムの定義や歴史、その目的と機能・役割、現状を学びます。時代の変化を受けてミュージアムにもデジタル化の動きが急速に進んでいます。「モノ」から学ぶ学問としてのミュゼオロジーの基礎を意識的に学び取り、芸術文化をミュージアムという広がりのなかで、どう問い直していくかを考えます。

ミュゼオロジー入門

ミュゼオロジーと生涯学習
担当教員:杉浦幸子

「主体的・能動的に学ぶ」=「学習」とそれを支える仕組みである「教育」の関係、学習と教育は、学校という限られた場や期間だけではなく、生まれてから亡くなるまで「生涯」かけて行う創造的な活動であることをさまざまな視点から学びます。

芸術文化特論I
担当教員:河原啓子

1年生の必修科目「芸術文化特論Ⅰ」では、大学における学びの基本となる、言葉によるコミュニケーションを学び、社会人になっても役立つスキルを実習します。授業では、インタビューや取材をして文章を作成。伝えたい情報の的確な表現法や人から話を聞く聴き取り方法について、ジャーナリスト経験のある教員が、わかりやすく指導します。プレゼンテーションにも取り組み、効果的に語る方法論を解説します。さらに、写真などのヴィジュアル・コミュニケーション、アイデア出しに有効な思考術、専門的な学術論文の執筆法も学習し、実践力を養います。

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造形総合・絵画I /彫刻I
共通絵画研究室:大浦一志原一史山本靖久
彫刻学科研究室:伊藤誠冨井大裕、大野綾子、杉浦藍、八木貴史、吉雄介

絵画や彫刻の実技を基本から学ぶことができるカリキュラムが1年次に受講する「造形総合」です。これらは学内の「共通絵画」「彫刻学科」というそれぞれ独立した教育組織によって授業が行われています。「絵画I」では、デッサン経験者と経験の少ない学生を分け、後者には、石膏の幾何形体や、リンゴなど身近なモチーフをデッサンする方法を丁寧に教えます。デッサン経験者は、複雑な表情を見せる巨大な石や、樹根などをモチーフにして、平面作品や立体作品を自由に制作します。また、「彫刻I」では、副題を「みることとつくること」として、〈1.身の回りのものごとをモチーフとしたドローイング制作→2.ドローイング制作を通じてみつけたテーマをもとに自分の頭部を観察して立体作品を制作〉の二つの連動した課題を行います。課題の中で各自が発見したことを具体的な形にしていく方法とそれに必要なプロセスは、それぞれが自由に素材を選択し、触れていくなかで見つけ出していきます。彫刻における定番の素材、技法に拘らず、彫刻の歴史が培ってきた多様な考え方=〈「みること」と「つくること」の関係〉を体験します。

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西洋美術史概論
担当教員:宮崎匠

歴史のなかで或る特定の作品が「なぜ(理由)」、「何のために(目的・役割)」そして「どのように(技法・素材・表現様式)」つくられてきたか、さらに「どのような点が歴史的に評価されてきたか」を知ること、つまり美術史を学ぶことは、造形作品に関する理解を深めるために必要不可欠なことであるといえます。その美術史について、この授業では特にヨーロッパの美術の歴史に焦点を当て、古代・中世そしてルネサンス以降の近世を前期に扱い、新古典主義から現代へとつながるアヴァンギャルドの潮流を後期で学びます。それにより作品が誕生した社会的・文化的背景の分析を通して、人間の創造の歴史とその意味、さらに多様な表現の意義を理解することを目指します。

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デジタルデザイン基礎I
担当教員:長内研二熊谷篤史米徳信一

日々進化するデジタル環境の基礎を理解し、今後の表現活動に必要となるスキルを身につけることを目標としています。講義において、グラフィックデザインを主軸に、コンピュータの登場によるメディア表現の変化を踏まえ、演習では学科のスタジオで写真撮影の実習を行い、テーマに沿って各自が執筆したテキストと合わせた情報をコンピュータで編集します。この、DTP( Desk Top Publishing )によって紙媒体に表現することで、パソコンとアプリケーションのオペレーション能力を習得し、グラフィックデザインの基礎を理解します。
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デザイン基礎
担当教員:佐々木一晋杉浦幸子米徳信一

デザインの語源は、ラテン語のdesignareであり、「計画を記号にあらわす」という意味を持ちます。人間社会を支えるさまざまな物事は、全てなんらかの目的を持ってデザインされているといえます。授業では、このデザインに必要となる思考の方法と、表現伝達の種類・技術を知り、体験することを目指します。具体的には、3名の専任教員の専門分野の視点から、社会における「デザイン」の意義や役割についての理解を深め、演習では「つなぐ」ためのデザインを実際に企画・実行し、プレゼンテーションにより伝えることを通して、「デザイン」のプロセスを実践的、体感的に理解します。

2年次:専門性の獲得に向けた具体的研究と実践のためのマネジメントを学ぶ

マネジメント入門・実践
担当教員:杉浦幸子村井良子

マネジメントの基礎知識と方法論を修得

前期は入門編として、マネジメント=経営の基本を学修します。
芸術文化と社会のつなぎ手として、常に変化する環境の中で、文化施設や芸術文化事業、アーツプロジェクト等をどうすれば効率的かつ有効にマネジメントできるか、さらに事業目標を達成させ、社会に貢献させることができるかを学びます。今後、芸術文化やアート領域でも不可欠となる「経営論的手法(評価を組み込んだ戦略的マネジメント体系)」の基礎を学び、具体的なノウハウを修得します。また、後期は実践編として、プロジェクト・マネジメントに関する基礎知識とノウハウの学修をめざします。

マネジメント入門

デジタルデザイン基礎II
担当教員:長内研二熊谷篤史米徳信一

1年次「デジタルデザイン基礎I」の課題内容とDTPのスキルをさらに深化させ、ウェブページと小冊子を制作します。テーマは「ある日」とし、1日の出来事を、テキスト、イラストレーション、写真などを使って記録・記述します。前半のウェブ制作においては、記録・記述した素材をHTML(Hyper Text Markup Language)によって情報構成する基礎を学び、ウェブの表現特性を考えた情報の編集を行います。また後半の小冊子制作では、「ある日」の内容をDTP(InDesignを使用)によって紙媒体に表現する際の、編集概念とスキルを学びます。同様のテーマを異なるメディアで表現し、その差異を意識化することで編集における思考の幅を広げます。

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展示基礎
担当教員:佐々木一晋杉浦幸子、吉雄介

「展示」の目的や意義、歴史的変遷、さまざまな「展示」のタイプ、「展示」の方法論や技術的側面、「展示」と人をつなぐ教育や広報、「展示」の評価について講義を通して学ぶとともに、展覧会を企画し、提出された展示プランから選抜されたプランのプレゼンテーションを行います。展覧会のコンセプト・テーマの設定、章立て、作品リストや図面の作成といった、展示のプランニングについて、リサーチ、ディスカッション、チュートリアルなどを通して学びます。
基本的な壁面展示および照明の実習を行い、アーティストの吉雄介氏を特別講師に迎え、アーティストの作品展示を実践的に学びます。

造形基礎
担当教員:是枝開春原史寛、結城康太朗

多様な表現につながるエッセンスを学ぶ

造形表現の基礎を理解する観点から、多様な造形表現に共通する基本的な要素を、分析しながら体感し実感する、芸文独自の造形基礎演習です。絵画、彫刻、デザイン、映像、建築、工芸、あるいはメディア・アートなど、幅広くさまざまな表現へとつながる原初的な造形のエッセンスを、演習を通して体験します。色彩演習、模写演習、立体演習、リズムや調子の演習などの実技とともに、造形の分析方法の基本的な考え方を学びます。

芸術文化学概説
担当教員:専任教員全員

芸術文化学の専門性と展開を学ぶ

本授業では、1年次の必修授業「芸術文化学入門」の発展的・応用的な内容を取り扱い、「芸術文化学」についてその専門性と展開を講義・演習を通じて学びます。芸術文化学科の学びの重要なリソースである、専任教員の芸術文化に関わる様々な専門分野について、より応用的な内容を各教員からの講義・演習を通して学び、その専門性が相互にどのように関係しているかを各自の関心に結びつけて考察します。

ヴィジュアルコミュニケーションデザインA 鑑賞のデザイン
担当教員:杉浦幸子

「鑑賞」という「こと」をデザインする

鑑賞の定義と歴史、また対話型鑑賞などのさまざまな鑑賞方法について、理論と実践から学び、人や社会とアートをつなぐ基本的な鑑賞プログラムをデザインし、実施できるようになることを目指します。

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ヴィジュアルコミュニケーションデザインB ドローイング
担当教員:田中七星

創造のはじまりを模索する

「ドローイング」を具体的行動の主体とし、デザインやアートなどの一歩手前、創造のはじまりとして捉え、そのプロセスを考察し、実践します。

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ヴィジュアルコミュニケーションデザインC 空間のデザイン
担当教員:佐々木一晋

空間を観察し、デザインする

デザイン活動を進めていく過程で、空間を観察する行為と造形表現の関わり方を探求していきます。空間についての基礎的な知識と技法を学び、インスピレーションを得るための方法について理解を深めていきます。

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映像デザインII
担当教員:米徳信一

「既知」を考察し、映像によって伝達する

わたしたちが「既知」と思っている事柄について、今一度自らが考察したことをテーマに企画を考え、映像作品を制作します。その際、表現方法や形式を自由に考え実践することで、映像の表現特性についての理解を深めます。

2018-2020 作品集

絵画II
担当教員:是枝開

平面空間と立体空間の差異と共通項を体感する

平面作品から立体作品へと変換する演習、さらにまた、その立体作品をドローイングや平面作品へと転換させていく、往還運動の演習を通して、造形空間のエッセンスを学んで行きます。

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デジタルアーカイブス
担当教員:堀越洋一郎

作品、資料の収集から整理・提示方法を考える

作品や資料=「モノ」をデジタル化することについて、芸術文化分野で扱う多様な資料を紹介しながら、メディアの特性、作品、資料の収集から整理・提示方法と共に「デジタルアーカイヴ」の作成を行います。

日本美術史概論
担当教員:鶴岡明美

大きな分脈の中で日本美術を捉える

先史から近代に至る日本美術の流れについて、各時代の特色を示す作品の紹介を通じて学びます。個々の作品の技法や様式の解説を踏まえ、制作された時代の特色や、他の文化領域の状況にも考察を広げ、より大きな文脈のなかで日本美術を捉えます。

ミュゼオロジーと教育
担当教員:杉浦幸子

ミュージアムの教育活動とデザインを学ぶ

ミュージアムにおける教育活動の理念と内容、国内外のミュージアムの教育活動について紹介します。ミュージアムを構成する3つの要素「モノ」「人」「場」を連携させ、人々の学びを支援するミュージアムの教育活動とそのデザインについて学びます。

ミュゼオロジーと保存
担当教員:岡しげみ

美術作品を長く保存し、未来へ繋げる

資料(作品)の安全を守ることも学芸員の責務のひとつです。資料を可能な限り良い状態で、かつ長く保存し、未来へ繋げることが求められます。今ある、そして歴史の証拠でもある作品を後世に残すための資料の保存・展示環境を科学的に捉え、それらへの接し方の基本を学びます。

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1~4年次に選択して履修できる専門科目

芸術文化論Ⅰ
担当教員:林家たい平

言葉の持つ力、コミュニケーションを考える

武蔵野美術大学を卒業し、落語家として活躍する林家たい平先生が担当するこの授業では、芸術文化学科の学生が身に付けたい「コミュニケーション力」を学びます。たい平先生は、「コミュニケーション力」を養うのに一番重要なのが「自分と向き合うこと」だと語ります。自分と向き合うことで自分を知り、自分を応援できるようになる。それが、他者とのコミュニケーションを可能にすると考えているのです。この授業には、芝生に座って俳句を詠み、お互いの句から相手の視点を感じ取ったり、自分自身の嫌いな部分を取り出してオリジナル妖怪を作り、それらを集めた芸文妖怪図鑑を作る、といった、日々のことに目を向けたり、自分を見直すきっかけになる、さまざまな仕掛けが取り入れられています。忙しい大学時代にこそ、ちょっと歩みを止めて、自分と向き合う時間を持ってみよう。たい平先生は、この授業を通して、学生たちにそう語りかけます。

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学科の専門科目以外の大学の共通科目

ムサビでは、各学科が独自に専門を追求する「学科別科目」に加え、総合的判断力・批判力・教養を養うために広く諸学問を学ぶ「文化総合科目」と、自分の専攻とは異なった領域や他学科の開設する授業を学ぶ「造形総合科目」をバランスよく学ぶことができます。
「文化総合科目」では、人文・社会・自然の各分野の教育科目、外国語科目、保健体育科目、美術・デザイン・建築・映像の各領域の専門科目などが開設されています。
詳しくはこちらをご覧ください。

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