Cultre Power
biennale & triennale 横浜トリエンナーレ2008 評論コンペ









Copyright © Aomi Okabe and all the Participants
© Musashino Art University, Department of Arts Policy and Management
ALL RIGHTS RESERVED.
©岡部あおみ & インタヴュー参加者
©武蔵野美術大学芸術文化学科
掲載情報の無断使用、転載を禁止致します。
阿部 葉子朝羽 由紀上原 正久大内 雄馬大森 沙樹子躍場 裕佳子柿田 真吾
神谷 悠季木村 優子佐藤 裕平ジョン スミ末永 幸歩高野 希美瀧田 梨可
竹内 舞棚田 絵理子谷口 匠當眞 未季中田 莉央パク ジュン日吉 ちひろ
藤原 瞳太馬淵 彩森下 賛良師田 有希

審査員の方々からの貴重な審査評です。

全体評 : 水沢勉

けっして見やすく、親しみやすい展覧会でないにもかかわらず、しっかりと見て、文章にしてくれたことに感謝したいと思います。あまりに規模が大きく、全体像を捉えることはむずかしく、作っている当人にとってもそれは容易ではありません。全体と部分の有機的な連関をテキストが織りなすことにさらに挑んでもらえたらうれしく思います。

全体評 : 沢山遼

頂いた10作品は、いずれも現代美術への優れた知的読解があり、また国際展のもつ巨大さや不透明さへの戸惑いや違和が、それぞれの立場から言明されているところにも好感がもてるものだった。

全体評 : 芦立さやか

一つ一つ評価をする際にとっかかりを探すのが難しい作品が多い中で、自分の好きなもの、気になるものに己のキーワードをつくってしっかりと考えようとしている姿勢をどれも感じました。一人の作家を評したり、色々な方向性の中でそれぞれに評価する点があったのですが、あくまで評論家では無い私からの視点で選ばせていただきました。これだけの文章力のある方々が、今後4年かけて様々な展覧会等を見る事で、更に自分らしさを掘り下げた面白い評論を作成することを期待します。

大賞 : 當眞未季さん

ホルヘ・マキとエドガルド・ルドニツキの《薄明》の作品体験をていねいに反芻しながら、「見る」「見えない」という事態を析出し、それを展覧会全体のテーマとの関連で、概念レベルでも往還を試みる。批評の基本的なスタンスがかなり成熟していることを印象づける力作でした。(水沢勉)

どこかで読んだことをそのまま引用したと思うような「優等生」な内容が多いのに対し、様々な経験、調査を重ねてしっかりと自分の意見としてまとめ、作品に対応しようとしている誠実な姿勢を感じました。また私自身、展覧会の作り手という立場から、展覧会全体、いくつかの作品を通じて、「美術」や、この評論のテーマとなっている「見ること」など根本的なテーマについて懐疑してもらえるような機会を与えられたらと思っており、そういった学生が増えたらいいなという希望も含めて大賞に推薦します。(芦立さやか)

準大賞 : 竹内舞さん

時間の基本構図ともいうべき三つの時制で三題噺を作文した点が秀逸。作品の選びかたも意外性があり、読者を惹きつける。さらにこの時制そのものがどこで保証されているのかを原理的に問う力が備われば、三題噺が、ほつれ、もつれて、さらに意外な論理展開を予想させることもでき、よりいっそうの広がりを論述にあたえることができたと思います。(水沢勉)

竹内さんの評論は、トリエンナーレのテーマである「タイムクレヴァス」つまり「ときの裂け目」を、過去、現在、未来それぞれの事象と主体(鑑賞者)との固有の「距離」の問題として扱っているところが斬新である。三つの時制から作品を記述していくスタイルは筆者独特のテンプレート(雛形)であるが、それが作品を記述する尺度ともなり、作品解釈に明確な輪郭を与えているように思う。個人的な主観に陥ることなくなされた作品描写も正確でわかりやすく、かつ表現力に富んでおり、資料によるリサーチによってそれが裏付けられているところにも筆者の文章的な成熟を感じる。また、いささか個人的な意見になるが、マイク・ケリーはもちろん、クロード・ワンプラー、ポール・チャンの2作品が、今回のトリエンナーレのなかでも特に注目すべき作品であったことは疑いようがなく、そこにも作家の知名度に左右されない筆者の柔軟で優れた批評意識を感じた。(沢山遼)

佳作 : 木村優子さん

作品に寄り添いながら、思考していく姿勢がたいへん好ましい文章であり、読者を作品世界へと誘う魅力を備えています。「鏡」の隠喩性も含めて、さらに作品が指示する世界とのより広い連関までも析出することができればさらに印象ぶかいものになると思います。(水沢勉)

木村さんの評論も、「タイムクレヴァス」というテーマを、竹内さんと同様に、主体(鑑賞者)と客体(作品)との「亀裂」として解釈することで、難解なトリエンナーレの主題を、自らの作品経験に着地させ描写していくという方法を見いだしている。作品経験がはらむ主客の分裂と一致を、鏡をあつかった二つの作品に絞り込み、両者の差異から、「時の亀裂」を見いだすという方法も明快である。ケリス・ウィン・エヴァンス & スロッビング・グリッスルの作品において、鏡という装置が視覚的な世界を映し出すだけではなく、現在という「時」を映し出すがゆえに、主体と客体との重なりにおいて「インタラクティブ」なのだという読解も卓抜である。続いてミケランジェロ・ピストレットの作品では作者の不在と鏡自体の破壊から、過去と現在との隔たりを測り、その感覚が「不快感」という率直な言葉で説明されているところにも筆者独特のものを感じる。ただ文章は、最終的に作家それぞれの「鑑賞者という存在の捉え方」の違いによって、作品経験に差異が生まれるのだという話に落ち着いてしまう。「時」という事象から作品と鑑賞者との緊張感が上手く書かれていただけに、結論としては短絡的なものであると感じた。(沢山遼)

「鏡」と「鑑賞者と作品との関係」をつなぎ評している点がとても良くまとまっていて最後までとても読みやすかったです。ただ、作品同士の話でほぼ終わってしまい展覧会全体の話につなぎきれてない点がもったいない。(芦立さやか)

佳作 : 阿部葉子さん

おそらく今回の横浜トリエンナーレを見た多くの人が、改めて「現代美術って何?」という疑問を抱いたと思います。その中で自分の感性を刺激する作品を通じてその疑問を解こうと、背伸びする事無く素直に考える姿勢にとても好感をもてました。(芦立さやか)

審査員による投票結果

大賞當眞未季
準大賞竹内舞
佳作

木村優子
阿部葉子
優秀賞




大内雄馬
神谷悠季
ジョン・スミ
谷口匠、馬淵彩
森下賛良

学生による投票結果

大賞師田有希
準大賞中田莉央
優秀賞パク ジュン
優秀賞高野希美

(審査員による投票結果と重複した人は学生による投票結果から省かれています)