井尾 鉱一 | 市村 あずさ | 内村 悠己 | 榎本 瑶 | 川田 誠
河野 木里 | 杉原 環樹 | 瀬野 はるか | 大黒 洋平 | 戸澤 潤一
永井 里奈 | 林 絵梨佳 | 坂野 潤三郎 | 武笠 亜紀 | 八重樫 典子
今回は休日を利用し横浜トリエンナーレに行ってきたわけだが、とても素晴らしいものだったと言える。
わざわざ自宅から三時間かけて行った甲斐があった。
“アートサーカス”というけれど、実際は“アート”というより“サーカス”という印象の方が強かった気がするが、それはそれでおもしろくてよかった。ただそれ自体を見せるのではなく、来場者を参加させることを重視していて、むしろ来場者が参加して初めて作品が完成するというような印象を受けました。
あえて欲を言うなら展示をもう少し一箇所にまとめてほしかった、僕は動くのが遅いのでおそらく全体の半分も回れていなかった気がします。
僕が今回印象に残ったのはいくつかあります。
そのうちのひとつが西野達郎さんの“天使”という作品です。最初に見たときはまだ工事中なのかなと思いましたが、違いました。鉄骨の階段を登っていくと、小さなプレハブのような部屋がありました。
中に入るとそこには小さな天使がいて、その周りを天使と同じような印象を持つ椅子やテーブル、カーペットが取り囲んでいました。一見そこは鉄骨剥き出しの階段の上にプレハブが建てられただけのように見えるかもしれないですが、僕にはこの作品は天へと舞い戻る途中の天使のように思えました。
一度羽を失ってしまった天使が再び天へ戻るべく、あの高さまで登ってくる、その途中で一息、それがあの部屋なのだと思います。一見普通の部屋のようでおもしろみがないなと思いましたが、僕達が何かに疲れたときに休むのはちょうどあれくらいのありふれた空間の方が心地よいのかもしれません。下手に崇高な、聖堂のような空間では休むに休めません。きっと天使もあれくらいの部屋が居心地がいいのだと思います。
奈良美智さんの“My Dreaming Room”もそうですが、今回のトリエンナーレで僕は“部屋”というひとつの空間をプロデュースした作品に魅かれたようです。部屋というものはその人の性格、理念、考え方がダイレクトにでます。屋外や美術館などの他の作品の横に展示することとは違い、全てに責任を負わなければならず、決して言い逃れができないところが魅力的なのだと思います。そのような意味では西野達郎さんも奈良美智さんも自分の中にある世界をとてもうまくこの部屋という空間の中に表現できていると思います。
他に強いて言うなら、百円でアート作品を買える手作り自動販売機のようなものもあったのですが、それもなかなかおもしろかったです。作り置きしたものが出てくるのではなく、いくつかあるメニューの中から選ぶことができ、自動販売機のようなものの向こう側でスタッフ(?)のかたが即興で作ってくれるのです。出てきたものは正直アートと呼べるかは疑問なのですが、美術館には無い試みだし、それはそれでおもしろいと思いました。
今回のトリエンナーレは超大規模な実験サーカスという印象を受けました。これでレポートを終わりにします。
(川田 誠)