大学院 修士課程 芸術文化学コース
武蔵野美術大学大学院 造形研究科 修士課程 美術専攻 芸術文化学コース
理念・教育目標
芸術文化を真に人々のものとするために、芸術文化を求める心や〈美〉のありかを広く探求しつつ、芸術文化と社会の関わりを考察できる、専門的な教養を身につけた人材を育成します。
アドミッション・ポリシー
主に、学芸員、美術教育者、美術館教育普及、美術・デザイン批評、出版編集、芸術文化マネジメント、学術研究者などを希望する、研究意欲の高い入学志願者を求めます。
カリキュラム・ポリシー
1、2年次を通して「芸術文化学演習」と「芸術文化学特論」を履修し、芸術文化の多面的なあり方と、現代が突き当たった芸術状況を知識と経験を通じて考察します。カリキュラムには、比較文化や美術理論の講義、オムニバスによるテーマに沿ったディスカッション、テキスト講読、論文執筆などがあります。また、美術館やギャラリーを併設し、展覧会や展示が常に開催されていますので、他大学とは違った現場教育の実際的な特長をもっています。
ディプロマ・ポリシー
所定の単位取得のほかに、1年次に、ディスカッションでの公開発表、プレ修士論文などの提出があります。2年次には、複数回の修士論文中間発表を行います。最終の修士論文は、40,000字以上という提出規定があり、これらを総合して、修了認定の評価を行います。
※大学院修士課程を修了した者には修士(造形)の学位が授与されます。
指導を担当する専任教員と専門分野
古賀稔章(デザイン史、タイポグラフィ、グラフィックデザイン、メディアの批評的実践、編集、視覚文化研究)
是枝 開(絵画、立体造形、近現代美術、造形演習)
佐々木一晋(空間芸術、空間設計、デザイン方法論、地域文化研究)
杉浦幸子(ミュゼオロジー、美術館教育、鑑賞教育、アートマネジメント、プロジェクトマネジメント)
春原史寛(ミュゼオロジー、近現代日本美術史、美術教育、ポップカルチャー研究)
米徳信一(映像デザイン、映像文化研究、ヴィジュアルコミュニケーションデザイン、映像技法研究)
武蔵野美術大学専任教員プロフィール集(芸術文化学科)も参照して下さい。
修了後の進路(一部抜粋)
美術館/ギャラリー
飯田市美術博物館/ヴァンジ彫刻庭園美術館/ウポポイ民族共生象徴空間/江戸東京博物館/佐野美術館/世田谷美術館/千葉市美術館/森美術館
公共団体/非営利団体
徳島県庁/アーツカウンシル東京/日本財団/福武財団/調布市文化・コミュニティ振興財団
企業
カイカイキキ/誠文堂新光社/テレビ朝日/美術出版社/ポプラ社
進学/留学
東京大学大学院/一橋大学大学院/北海道大学大学院/大分県立竹工芸訓練センター
※武蔵野美術大学大学院 博士後期課程 造形研究科についてはこちらをご覧ください。
修士課程選抜(入試)
大学院修士課程選抜情報をご覧下さい。
【進学に関する相談について】大学院進学希望者は指導希望教員に直接メールで相談してください。メールアドレスは芸術文化学科ウェブサイトの「教員・スタッフ」のページで確認できます
【事前面談】芸術文化学コースでは出願期間開始前までに、大学院での指導を希望する教員との事前面談(対面/オンライン)を必ず行ってください。面談を希望する教員あてに直接メールで連絡して、日程を調整してください。出願開始以降は面談を行えませんので、注意してください。
※芸術文化学コースでは、研究生の募集は行っていません。
教育課程(カリキュラム)
芸術文化政策コース造形専門科目教育課程表
(2024年度カリキュラム)
前期 | 後期 | |
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1年 | 芸術文化政策演習I(必修)[専任教員] | 芸術文化政策演習I(必修)[古賀稔章准教授] |
芸術文化政策特論I(必修)[本間桃世講師] | 芸術文化政策特論I(必修)[竹丸草子講師] | |
2年 | 芸術文化政策演習II(必修)[専任教員] | 芸術文化政策演習II(必修)[専任教員] |
芸術文化政策特論II(必修)[松浦昇講師] | 芸術文化政策特論II(必修)[森啓輔講師] |
※コース別の専門科目の他に、各コース共通科目・他コース履修可能科目があります。
※詳細は大学院造形研究科履修ガイドブックを参照して下さい。
修士課程における研究指導計画
1年次
指導教員と協議の上、研究テーマの検討、確定
研究能力・手法の育成と習得
研究テーマに関する調査研究/関連領域に関する調査研究
中間報告会、プレゼンテーションの実施
修士論文研究テーマの検討
2年次
指導教員と協議して修士論文研究テーマの設定
研究テーマに関する調査研究
主査・副査も参加する公開での研究進捗プレゼンテーションの実施等
指導教員の許可を得て修士論文・作品提出/以後審査と最終試験
大学院修了研究展
学位認定
修了要件
2年以上在学し、コース別の必修科目20単位および各コース共通の科目から10単位以上、合計30単位以上を修得し、かつ修士論文の審査および最終試験に合格することにより修了となります。
修了者の声
矢津田叡海 芸術文化政策コース 平成28年度修了
私は、人と芸術文化との関わりについて深く知りたいという思いから大学院に進学し、やまと言葉の一つ「あわれ」を軸に、芸術と文学をリンクさせた研究を行いました。
授業は主にコースの専門科目と、大学院全体に開かれている共通科目に分かれ、ゼミナール形式で進むものが多いです。科目によっては、博士課程の学生に混ざって、教授と先輩の両方に教えてもらいながら受けるものもあります。授業は私たちの研究の手掛かりになると同時に、指標になるような踏み込んだ内容です。さらに、研究を進める上で役に立つ、考え方のテクニック等も教わることができます。また、教授との距離が近く、授業後にそのまま残って雑談……というようなこともしばしばあります。学部ではなかなか積極的に教授と話ができなかった私にとっては、これがとても嬉しいことでした。
王 嘉敏(オウ カミン) 芸術文化政策コース 平成28年度修了
「なぜ人間は芸術を必要とするのか」この問いに対する答えを求めたいと思い、私は芸術文化政策コースに入学しました。
ある展覧会でピカソの作品を見たときに、作品から伝わってきた「純粋さ」に、思わず自分が微笑えんでいたことに気付き、驚きました。あの一瞬の喜びと驚きは忘れることができません。こうした作品との出会いの楽しさ、面白さを、さまざまなバックグラウンドの人々にどのように知ってもらうことができるか。それが院での研究のテーマになりました。
大学院に入ってからは、ファインアート、デザイン、映像、舞台、キュレーションといった、様々な分野の先生と出会っています。芸術文化を巡る、多彩な分野から刺激を受けながら、多様な角度から世界を見て、改めて人間という存在の奥深さを感じ取っています。「ムサビの大学院で何ができるの?」と聞かれたら、私は迷わず「世界を捉え直すこと」と答えるでしょう。
勝俣 涼 芸術文化政策コース 平成25年度修了
現在は美術批評家として活動していますが、この仕事に関心を抱くきっかけとなったのが、学部2年のときに受講した、高島直之先生の「編集計画I」でした。各自が毎週1本の展覧会評論を書き、アプリケーションソフトを使って紙面にレイアウトし、講義の時間にプレゼンする、という演習です。
作品を充分に観察・吟味し、歴史的な視点と想像力をもって思考を重ね、執筆者が守るべき体裁を踏まえながら、説得力に足る論理的な記述となるように仕上げなければなりません。それゆえ受講者は、紙面構成も含め、執筆や編集にかかわる基礎を学ぶこととなります。
私は大学院に入ってから、批評という仕事を現実的に考えはじめ、自分なりに外に出て、作家や批評家の人々とかかわるようになりました。どの時代のものであれ、人間が生み出した事物に向き合うことは過酷ですが、いかなる歴史的背景や思考、動機からそれらが生み出されたのかを総合的に感知する力は必要です。よく知り、よく吟味する、という芸文で得た心構えは、いまに生きていると実感しています。
修士論文題目一覧
令和4年度(2022年度)
植松依子「パブリックネスを構成する14の要素の抽出と検討─オートクチュール、既製服、ジーンズ、下着、そして専門家との対話─」(学科賞)
令和3年度(2021年度)
武関真衣「教育を視点とした竹工芸の普及に関する一考察ー小学校とミュージアムをつなぐ竹工芸の教育普及プログラムの実践ー」(優秀賞) →研究の詳細
令和2年度(2020年度)
加納向日葵「美術館における日本美術を対象とした鑑賞教育の可能性ー美術館と小学校の地域連携によるー」
コウ ベイラン「中国における非都市型アートプロジェクトのあり方についてー日本と中国の事例から見た一考察ー」
シュ チョウグン「展示における作品と鑑賞者の関係の変化ー中国におけるインスタレーション作品の鑑賞分析を通してー」
平成31年度(2019年度)
秋元央嗣「前衛書道運動と自由画教育運動から考察する模倣観の変遷ー生命と自然という用語をもとにー」
中嶋健人「日常と作品が交歓するーミュージアムで鑑賞者が創造的になるための「言葉」ー」
平成30年度(2018年度)
石岡 叶「路上観察の伝播とその展開」(学科賞)
岡部由紀「中学生を対象としたキリスト教絵画の活用方法の可能性」
上久保直紀「造形ワークショップの形成過程と実践をめぐる考察ー異年齢間の協働に着目してー」
島田芽生「日本のデザイン行政の歴史とデザイン文化政策にむけての考察ーイギリス・韓国の事例からー」(学科賞)
鄒 宜静「地域における芸術文化の発展についての研究ー中国小洲村を事例としてー」
孫 亜君「時空間におけるイリュージョンの拡張ーミニマル・アートを中心に考察ー」
津田愛子「地方小都市型アートプロジェクトの有用性を考察するー福井駅前市街地をモデルとしての一提案ー」
平成29年度(2017年度)
鈴木祐啓「「アートプロジェクト」における「芸術祭」の在り方と“評価指標”の考察」(優秀賞)
鄭 雅軒「日本近代のグラフィックデザインー用語の変遷、戦前戦後のデザイナー・グループ及びデザイナーの活動についてー」
西脇玉己「三重県・遠保神社におけるミュージアムとの連携の試みについてー「四日市地域ミュージアム」構想ー」
平成28年度(2016年度)
菊地 慶「いけばなの<近代>—領域横断的研究 J・コンドル・小原雪心・重森三玲を例に—」(優秀賞)
矢津田叡海「曾我派の書画文化にみる「あわれ」的思考に関する一考察」
WANG JIAMIN「美術館鑑賞教育ツールとしての美術館ワークシートの考察—中国の小学校における美術鑑賞教育の視点から—」
平成27年度(2015年度)
ジョン ホンヨン「「手で見ることを超えて」ー視覚障がい者の絵画体験を目的とした考察と作品制作ー」
杉山大輔「ボードリヤールのウォーホル 美術史の外部者」(優秀賞)
松田真莉子「ブロスフェルトの青い花—ベンヤミン、バタイユの思想に寄せて—」(優秀賞)
平成26年度(2014年度)
小澤瑤子「絵画療法の可能性」
小林美香「財閥・実業家コレクターの近代史—ノブレス・オブリージュの観点でみる日本の美術制度—」
平成25年度(2013年度)
大山香苗「「パフォーマンス的転回」による、見る/見られることの変容—マリーナ・アブラモヴィッチの作品を中心に」
勝俣 涼「切断と反省性−ダン・グレアムにおける「距離」をめぐって」(優秀賞)
當眞未季「現代における作品受容の可能性—美術作品における鑑賞体験の変容について—」
中村紗規「日本における展示空間の変遷」
森下賛良「石子順造(試)論—「美術批評」の解体(再検討)という企み」
吉田絵美「ゲリラ的芸術表現にみる都市性—ハイレッド・センターと東京」
平成24年度(2012年度)
江川公平「日本のメディアアート振興政策における課題と指針」
西 まどか「規格化住宅の文化史—ヴァルター・グロピウスのプレファブ住宅とその創造性をめぐって」
西川可奈子「アートの価値を決めるものは何なのか—日本のアートマーケットの現状と問題点を探る―」
パクヒジュ「住民参加型のまちづくり—日本と韓国の事例からみる持続可能なまちづくりの考察と提案—」
真砂恵美「公立美術館がわかちあうための方法」
平成23年度(2011年度)
小林橘花「ひとを動かすアートプロジェクト、その効用—フィールドワークから探る主体的な思考・行動のきっかけとは―」
竹内那美「北脇昇の1940年代の絵画における「図画」・「図式」・「影像」概念の検証」(優秀賞)
村上卓也「アウトサイダー・アートが交差する「場」の考察」
平成22年度(2010年度)
内山結美子「美術館と地域の関係—アートが美術館と地域を結ぶ媒介になる可能性について—」(優秀賞)
渡辺祐子「John Burninghamの絵本研究—Aldoを中心に—」(優秀賞)
瀬古春佳「都市における「らしさ」の醸成とは—吉祥寺北口における大型店舗と地元商店街の共存共栄の形の考察を通して—」
ソ ムンジン「マンガのミュゼオロジー」
平成21年度(2009年度)
西野みなみ「記憶の反プロセス—現代アートによる記憶の表象—」
荒井隆大「デザイン史における『浅井忠の図案』の位置」
吉川久美子「中高生と美術との出会い方—表現としての美術の可能性—」
平成20年度(2008年度)
李 良美「韓国と日本をめぐるポストコロニアリズム—李仲燮と郭仁植の作品の再考—」
岩本英恵「セトゥの赤—エストニア少数民族の伝統衣装にみる女性—」
岸本美々子「社会的実験〜創発が起こる場」
田口友希「自己神話の向こう側〜ジャン・コクトー壁画の詩 再考〜」
野口優子「痛みを伝えるということ」
森啓輔「高松次郎 不在・物質・イメージ1960-70年代の作品を中心として」(優秀賞)
平成19年度(2007年度)
イ ウンミ「新たなオルタナティヴ・スペースの考察—日本と韓国のオルタナティヴ・スペースの比較研究—」
齋藤玲子「絵本作家ガブリエル・バンサン「くまのアーネストおじさん」シリーズにおける心理描写を読み解く」
ヂョン ヒョンギョン「美術館における高齢者向けプログラムに関する研究—日韓の比較研究を基に—」
柳川直子「箒文化の考察」
平成18年度(2006年度)
岡本直樹「パブリック・アートに見る社会的差異—都市空間におけるアートが果たす役割について—」
澤山 遼「ヘレン・フランケンサーラーの1950年代」(優秀賞)
横井麻衣子「和製クリスマスの解明—描かれたクリスマス文化、明治〜大正を中心に—」
渡邉美輪子「地域文化行政と芸術をめぐる視点の相違—公開及び滞在制作型事業を事例に—」(優秀賞)
平成17年度(2005年度)
阿部陽子「伊藤若冲筆「動植綵絵」研究—仏教的文脈による考察—」
石川 恵「共同体の復活:情報化社会のNPOマネジメント」
小林千英「水木しげる ゲゲゲの鬼太郎に見る戦後文化」
白木栄世「しかし、絵画は在り続ける。—現代を生きる絵画の挑戦者たち—」
関香澄「シティアート—拡大する芸術概念による日常と芸術との出会い—」
高橋実和「ゲイの映像表現にみる創造性—近代からの越境へ向けて」
水田紗弥子「心象風景の獲得難波田史男作品の一考察」