略歴
1960年 鹿児島県生まれ。
コロンビア大学大学院芸術学部美術学科絵画・彫刻専攻修了。
1991-99年セゾン美術館学芸員。1999-2003年セゾン現代美術館学芸員。2003-14年神奈川県立近代美術館主任学芸員。
2014年武蔵野美術大学芸術文化学科教授着任。
アートとは自己を超え出る力を発見する力
芸術文化学科は美大でありながら、実技試験なしで入学できて、理論と同時に実技も基本から学ぶことができます。アートやデザインが社会でどのように機能しているのか、それは理論的な研究だけでは理解することができません。実際に身体を動かし制作してみる。物事の本質を深くつきつめるには自ら体感し実感することがとても大切です。そして制作実習とともに、歴史や思想などの理論との出会いもまた重要です。実技演習で直感や体感を磨き、それに伴う生きた理論を美術館・図書館の書物や画集なども利用しながら探究すること、それは美術大学だからこそできる多様な「気づき」のある学びです。
私は絵画を中心とした制作研究と理論研究の両輪で授業を進めています。これは20年以上にわたる美術館学芸員としての経験と、美術作家として制作し続けてきて得た知見を全開して伝え、学生とともに探究することを主題としています。
観念的な机上の理論を「手の思考」とでもいうべき制作体験で超出してゆくこと。特に実技の授業では、作品の構造分析とともに造形の偶然性や出現性などを重視して、学生自らが手を動かし、つくり出したものに驚きを持てるような演習を目指しています。アートとは、自己を超え出る力を自ら発見していく力であり、それを獲得していくプロセスだといえるでしょう。その獲得へと向かう無数の「気づき」の契機が、芸術文化学科のカリキュラムの中に、無限の可能性の場としてひろがっています。