楫ゼミ展2018
ゼミ展に際して
武蔵野美術大学教授 楫 義明
例年、3年次の学年末にメンバーの個人研究を発表する場として「楫ゼミ展」を開催して参りました。年毎にメンバー全員の話し合いで決めた共通テーマに基づき、各自の専門的関心事を個々に研究、展開しての発表でした。しかし、今回は私が提示した「運ぶ」というテーマを前提に、ゼミ生それぞれにイメージの飛躍を求め、様々なアートや文化を包含する社会の諸相に食い込むことを期待しました。本来であれば、昨年12月に展覧会を開催しているところですが、本来のゼミ活動が例年にも増して活発であったために、各自の作品をまとめる時間が持てない状況になりました。
一つは「鳩の街イルミネーションコンテスト」への参加です。下町文化を研究するNPO法人向島学会が主催し、五大学がエントリーしました。結果は当ゼミが大賞を受賞。もう一つは「府中市グリーンプラザ閉館告知サインデザイン」の担当です。内容とサイズが10種類以上の様々な広報用サインをゼミ生が分担してデザインし、市民に長く愛された大きな公共施設の閉館に寄与しました。このようなソーシャルデザインの取り組みをゼミ全体では実施したため、ゼミ展実施の余裕は無く、結果的に4年次に進級したこの時点での開催となりました。
目に見えない情報は勿論のこと、リアルな商品でも、「運ぶ」ことで生じる価値に大きな違いがあるのが現代の経済の在り方です。モノを運びながら気持ちも運ばれたり、気持ちを伝えるためにモノが運ばれたり。また世界各地から産品が世界中に運ばれて、大きな価値に変換されており、運ぶ目的も手段も多様化の一途です。現代のネットワークの拡大と価値の創造を考えるキーワードとして、「運ぶ」ことに視点を持った展覧会です。
卒業研究を控え、その叩き台として叩かれることを覚悟しての作品達です。一年後の卒業式迄に、社会で活躍する力量をどのように獲得するか、そのためのまだメモの集積のようなものですが、イメージの飛躍という点に絞ってご覧いただければ幸甚です。
開催日・場所
2018年4月17日(火)- 4月21日(土)10時-18時
武蔵野美術大学 9号館 6階 apmg
鳩の街イルミネーションコンテスト
府中グリーンプラザ フォトモザイク・アート