2023年度 卒業研究・制作 | 優秀賞インタビュー

2023年度 卒業研究・制作において優秀賞を受賞した作品を紹介します。

論文

土田麦僊の女性へのまなざし
─《平牀》を中心に─

ファンジス Hwang Jisoo

春原ゼミ
2023年度卒業

土田麦僊は、明治から昭和の時代を生きた日本画家である。彼は日本画と洋画の統合を目指し、その作品たちは、多くの革新に満ちたものであった。本研究では、そんな麦僊の描いた女性像に注目する。そしてその中でも、韓国の女性を描いた《平牀》を中心に据え、彼の画業を再評価することが目的となっている。
まず、麦僊の生涯や画業を全般的に振り返った上で、特に麦僊に影響を与えた文物、そして彼が描いた女性像の変遷に注目した。次に《平牀》をめぐる言説や、その造形的特徴について、詳細に分析をした。これらを踏まえた上で最後に、麦僊の画業における《平牀》の位置付けを行った。本作品が、形式的・画題的にどのような特徴を持ち、分類されるのかについて、考察をした。
その結果、《平牀》は造形的特徴・画題共に、麦僊の制作の文脈を十分に汲んだものであることが分かった。中国の院体画との造形的な類似、モデルの人間性の描写よりも衣服の表現に注目する姿勢、そして地方の働く女性を多く描いたことに、その根拠が示される。また、オリエンタリズムやジェンダー論の観点から語られることが多く、そんな状況を批判的に見る意見もあった《平牀》だが、それらの観点はこの作品を分析する上で、欠かせないということを再確認した。

作品表現

食口(シック)

イユビン Lee Yubin

杉浦ゼミ
2023年度卒業

食口(シック)という韓国の言葉をテーマに写真集を制作しました。食口は、家族または、同じ屋根の下で過ごし、食事を共にする間柄を意味します。韓国で食口は、食事を共にすることで、家族ではない存在でも、血縁関係のように近い関係になることができることを隠喩する言葉です。
食口というテーマは、6月、8月、10月から11月の韓国での撮影を経て、絞られたテーマです。日本に留学し、自炊を始めてから気がついたことは、毎日食べる食事を作ることは思ったより難しいことです。そして、自分のために食事を作ってくれた、自分と食事をした存在に気がつきました。彼らが作り出した無数の食事が自分を育てたと思い、自分の家族、祖母、母、叔母3人と、小さい頃からよく通っていた地元ソウルのトッポッキ屋さん、おかず屋さん、パン屋さんの方々を撮影しました。そして、現場からお互いを食口だと呼ぶ人たちを発見しました。そして、私と彼らの関係を食口だと呼ぶことができることが分かりました。
おばさんが食口たちの食事を作ることが母親として負担だったと言ったり、お客さんが食口だから値段を引き上げられなかったり、さまざまな食口の様子を観察しました。自分に食事を作ってくれた人たちと私は血縁、地縁で絡み合っている食口です。

制作|卒展裏方プロジェクト2023 記録班 高橋沙弥 田中哲平

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