2018年度 卒業研究・制作

2018年度 卒業研究・制作の中から、論文3作品、作品表現1作品、プランニング2作品を紹介します。

論文

ジョージア・オキーフの描く空間について
論文 / 優秀賞

大越 梓 OHKOSHI Azusa

芸術文化プロデュースコース
高島ゼミ
2018年度卒業

ジョージア・オキーフ(Georgia O’keeffe1887-1986)は、20世紀アメリカのモダニズムを代表する画家の一人だ。ほぼ初めてアメリカで評価を受けた女性アーティストでもある。1776年の独立宣言から歴史も浅く、伝統もないアメリカにおいて、自己のスタイルが確立するまでヨーロッパに向かうことなく、独自の芸術表現に向き合い続けた。ヨーロッパの芸術をアメリカに紹介し、国内の若い芸術家たちを支援してきたアルフレッド・スティーグリッツ(Alfred Stieglitz1864-1926)との出会いで、才能を開花させたオキーフは花や骨、ニューヨークに林立する摩天楼、アメリカ南西部の砂漠の風景を題材とした作品で知られる。
「アメリカ近代写真の父」と呼ばれるスティーグリッツと後にパートナーとなり、同時代のアーティストと交流を深めた。そのため、これまで彼女の作品は、しばしば写真と関連づけて語られてきた。しかし、スティーグリッツと出会う前にオキーフは、アーサー・ウェズリー・ダウによる東洋の美術理論に触れている。従来のヨーロッパ美術を模倣した教育を受けていた彼女にとって、東洋美術は新たな出発点となった。本論考では、東洋美術から得た影響を検証すると共に、ニューヨークとニューメキシコを往復する日々を送っていた彼女の作品に描かれる空間の広がりに注目し、アメリカ美術における立ち位置を考察していく。

想像力のための挿絵とは―未明童話と初山童画の親和性―
論文 / 優秀賞

嶋田智文 SHIMADA Chifumi

芸術文化プロデュースコース
高島ゼミ
2018年度卒業

想像力のための挿絵とはいったいどのようなものであるか。本論では、小川未明の童話と初山滋の童画の親和性の要因を分析するとともに、人が生まれ持つ想像力を養うための挿絵の在り方について考える。
未明も初山も「童心」を持ち続けた人物であり、作家と画家2人の精神に共通して存在した「童心」は物語と絵の親和性の根底にあったものとも言える。
そして、「幽玄」の魅力を持つ初山童画は、未明童話に存在する「余情」を描かれないことの余白によって表現し、味わい深い協奏の余韻を読者の心に残した。初山の未明童話に描いた挿絵は内容理解を促すためだけのものではなく、想像することの「とらえどころのなさ」を深めるものであり、作品の中でにおいや音など読者に五感を通した共感を育てた。
挿絵が、読者個人の想像の在処つまり読者の内的時間や心情の生きる場所として活用されることで、我々を現実のさまざまな意味や固定観念から解放するのではないか。
今私たちはネット社会の発達により情報があふれ、SNSというメディアで何もかもが共有化されてしまう時代にいる。だからこそ、読書という私的な営みから、文字や絵といった途方もない他者という外部に自己を見出し、自己の内面にその発見を残す。孤独でゆとりある想像の時間は、人生において如何なる時代も必要だ。筆者は、想像のための私的な空間と時間が確保される「書物」と向き合うこと、そして書物芸術としての挿絵の存在にその可能性と実現性に期待しているのである。

「印刷絵画」再考―1959年から1965年までの河原温―
論文 / 優秀賞

小倉達郎 OGURA Tatsuro

メディアプランニングコース
西中ゼミ
2018年度卒業

河原温による、1966年から40年以上にわたって継続的に制作された「日付絵画」(『Today』シリーズ)をはじめとする作品群は、1960年代後半に隆盛をみた芸術動向としてのコンセプチュアル・アートの文脈において、最も先駆的な取り組みのひとつとして高く評価されている。他方、河原が日本で活動していた1950年代における作品としては『浴室』の連作などがあるが、それらの物質的なイメージの作品群には、後年の概念的な諸シリーズとのあいだの形式的な共通点がほとんど見当たらず、さらに、離日後メキシコやパリでの活動を経てニューヨークに定着するまでの期間における河原の実践については、今まで十分に言及されてきたとは言い難い。過渡期とでもいえようその時期の取り組みに目を向けながら、河原温という作家についてのパラダイムの再規定を試みることが、本論における目的である。そのために、日本時代の最後期に制作された「印刷絵画」を、同時期の実践を考える上での重要な作品として位置付けながら、それが特に後年着想されるコンセプチュアルな作品群に対していかなる影響をもったのかということについて、河原自身の言説などを手がかりとしながら検討する。それぞれの時期における実践についての考察を通して本論において明らかになるのは、「印刷絵画」において模索された芸術上のコミュニケーションの問題に対する取り組みが河原のキャリアにおいて通底する主題となっていったこと、さらに、そこではじめて採用された「表現の外部化」という制作形式が、やがて後年のシリーズ群へと展開した可能性である。

作品表現

和紙とひと―越前和紙を知る―
作品表現 / 優秀賞

済藤玖美 SAITO Kumi

メディアプランニングコース
西中ゼミ
2018年度卒業

私は、和紙の魅力をあたたかみや風合いだと思っていた。しかし、これは目に映しづらいものであり、抽象的で不確かなものではないか、とも思っていた。和紙の魅力を自分以外の誰かに伝えたいのにうまく伝えることができなかった。だから、私の出身地でもあり、越前和紙の産地でもある福井県へ向かった。職人やものづくりに携わる方へのインタビューを行うことで、和紙の魅力を探った。そこで「人」という存在に意識が向いた。和紙の魅力、ものづくりの良さは「人」の存在によって生み出されているものだと考えたのだった。
自分の目と耳と足を使い、和紙のことを知り、そして伝える。
この展示で和紙やものづくりに対して、興味や関心を持つきっかけとなることを願っている。

プランニング

これからの美術鑑賞「みてみてアート」〜私と美術館ボランティアのための、作品と鑑賞者をつなぐ新しい鑑賞方法の提案〜
プランニング / 優秀賞

山崎栞奈 YAMAZAKI Kanna

芸術文化プロデュースコース
杉浦ゼミ
2018年度卒業

「これからの美術鑑賞「みてみてアート」とは、進行役のファシリテータが7つのプロセスを通しながら、参加者によくみて考えることを促し、アート作品の見方を深めていく鑑賞プログラムです。少人数のグループでひとつのアート作品に大体20分くらいの時間をかけて、気づいたこと、感じたことを話し合い、作品と鑑賞者、そして鑑賞者同士がコミュニケーションをとることを目的としています。
研究の背景として、私が六本木アートナイトのガイドボランティアや東京都美術館のアートコミュニケータ「とびラー」で対話型鑑賞の活動をしている中で、作品や作家の情報を一切与えないことや、決まった質問を繰り返すことなど、従来の鑑賞方法に違和感を持つようになりました。対話型鑑賞が日本に導入されて約20年が経ち、これまで提唱されてきた鑑賞法をあらためて見直すべき時期がきていると思います。
過去の知識偏重の美術教育の反省から、対話型鑑賞において知識は一切要らないとされていますが、知識をあっさり切り捨ててしまっていいのでしょうか。鑑賞で重要なのは、「知識」と「みる」行為を区別せずに両立させることだと思います。
「みてみてアート」は、実際に作品をじっくり「見て」みるの“みて”と、私が提案した鑑賞方法をどんな人にも実践してやって“みて”ほしいと思い、「みてみてアート」と名付けました。アートは難しかったり、敷居が高いものと感じられますが、少し見方がわかることによって、より作品を深くみていただくきっかけになればと思います。この鑑賞法が、アートをみることの楽しさや価値を、より多くの人に体験してもらい、アートの可能性を感じてもらうきっかけになれば幸いです。

地域を盛り上げるためのインターフェース―食とバーチャルライブを用いた地域活性化―
プランニング / 優秀賞

坊古居将平 BOKOI Shohei

メディアプランニングコース
楫ゼミ
2018年度卒業

2016年12月、私は母校のある佐賀県の鳥栖市にご縁があり、イルミネーションイベントの点灯式でバーチャルライブイベントを行いました。そこで感動した体験を元に、これを地域が盛り上がるための企画にできないかと思い、イベントを企画しました。イベントを企画していく過程で、鳥栖には様々な課題があることを発見し、それらを整理した上で、自分にできる地域への貢献の仕方を考えていきました。
地域を紹介する際に最も有用な手段を「食」であると捉え、既存の店舗を紹介するメディアを作成し、イベント化した上で体験してもらい、まずは参加者から鳥栖のグルメの認知度を上げていきます。
また、誰でもクリエイター(作曲やイラストレーターなど)になれるボーカロイドの創作文化に触れることで、創作の楽しさを知ってもらい、自ら創作し、それを発表することで、創作の連鎖を生み出し、ひいては鳥栖のクリエイティブな意識の向上につなげたいと考えます。
地域を盛り上げるために一番大切なことは、「継続して実行すること」だと考えています。私は今後もライフワークとしてこのイベントを続けていき、鳥栖を盛り上げていきたいと考えています。

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