芸術文化研究A(空間とメディア) :授業成果物展示

芸術文化学科3年選択必修科目|芸術文化研究A(空間とメディア)
De-Mapping Spaces with Y.
私たちは空間をどのように捉え、伝えることができるのだろうか。本授業では、Y氏の知覚経験を方向づける空間の要素に着目し、造形表現によって空間の図式を顕在化する方法を考える。
How can we illustrate a schema of spaces? We explore the way of taking it off of general maps and replacing it with something physical through spatial experiences involving Embodiment.

空間(space)という概念は、空(から)と間(あいだ)の字義が示すように、日常的には「モノが存在せず、空いている処」と考えられています。しかし、空間という対象について、考え始め、つくろうとした途端、空間それ自体ではなく、空間を形づくる周囲の環境の側に意識が向いていることに気が付きます。空間とは、単に物理的な存在ではなく、歴史や物語、季節や暮らしなどを含め、人々のさまざまな活動との関わりの中で形づくられており、空間を知覚経験している自身を含む環境によって生起されるといえるでしょう。

現象学を根底におき、場所と空間の意味を説いたクリスティアン・ノルベルグ=シュルツ(1971)は、私たちは、自分が存在して行動する場所を自身と環境との空間的な関係によって知覚しており、空間という存在は、出来事や行為が生じる場所に意味や秩序を与え、その場所を構成するさまざまな対象と自身を環境との間に生きた関係を定位する側面をもつと述べています。このような空間的な広がりをもつ対象を捉え、伝えようとした時に、難しさを感じたことがあるのではないでしょうか。

本課題では、自宅から武蔵美に至るまでの通学経路を対象とし、学生それぞれの知覚経験を記録することから始まります。空間を形づくる環境の側に五感を研ぎ澄ませ、何を視て/聴き/触り/嗅ぎ、何を手がかりにして空間を捉えているのか、知覚経験を方向づける空間の要素を探っていきます。次に、知覚経験の対象を構造的に捉え直すために、学生それぞれが架空の人物像(Y氏)を設定して表現対象の客体化を試み、角材(垂木10m)の単一の素材を用いた造形表現を通じて空間の図式(schema)を探っていきます。

今期の成果物は、学生一人一人が、空間を形づくる物質的な現れや出来事に意識を向け、独自の想像力と創意工夫によって、空間概念を押し広げてくれる作品が数多く展示されています。この展示を鑑賞し終え、帰路につく際に、身の周りの「空間」に意識を向けて、想像をひろげていただければ幸いです。

会期:2023年7月12日(水)〜7月13日(木)10:00~18:00、 最終日は16時閉廊
会場:14号館B1F展示室

※オープンキャンパス2023で一部作品の収蔵型展示を行っております。
会期:2023年7月15日(土)〜7月16日(日)9:30~16:30
会場:9号館6階佐々木ゼミ室

学生

生田綾、川上珠貴、田畑陽香、白田那千、堀井芙月、八幡奏絵、リョウ・センビン、岩下茉由、小島佑月、牧野琴美、宮﨑祐希、ヤン・ベイチャン、安藤梨紗、太田依里、小田のどか、高橋美宇、田中荘多、チン・セイ、野中柚希、パク・ヘリン、星・奈央、宮川資門、ユン・ソンジュン、小島美潤、菅野縁(50音順)

展示デザイン

岩下茉由、太田依里、小田のどか、川上珠貴、小島佑月、田畑陽香、牧野琴美、宮﨑祐希(50音順)

ポスターデザイン

田畑 陽香(芸文3年)

授業担当教員

佐々木一晋

MUSABI 100武蔵野美術大学 旅するムサビプロジェクトカルチャーパワー