Cultre Power
independent curator 太田エマ/Ota Emma


















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コメント

太田エマさんによる「アジアにおけるオルタナティブアートスペース」というテーマでお話を伺って考えたことは、アートがその国や地域におけるコミュニティーとどのように関わっていくかが非常に重要な問題である、ということだった。太田さん自身、「ディスロケイト」というプロジェクトを二〇〇六年から立ち上げ、アート・テクノロジー・ローカリティーという三つの関係性を問うことを目的に活動されていることからも今回のお話は非常に良い経験になった。
 アジアのコミュニティーとアートの関係性を考えることは、その国の地域における文化的・社会的・政治的な事柄とも深く関係していく。今回お話を伺ったインド・マレーシア・インドネシア・中国・タイ・東京とそれぞれが同じアジアでも異なる文化圏を持っている。そのため各々の国においてのローカリティーの在り方には違いが出てくる。そして、そのコミュニティーにおいてアートが関わることでどのような変化が生まれるのか、といったことを考えていかなくてはならない。太田さんのお話の中でも、「コミュニティーとは」という問いから、アートとの関わりを考察されていたことが印象的だった。
 コミュニティーにアートが関わっていくことにはさまざまな問題も出てくる。アーティストがそのコミュニティーや住人と関わっていくためには、関係を構築するためにも長期的な滞在が必要だったり、共同制作などのワークショップを行う必要がある。「誰のために、誰の利益になるのか」というコンテクストの理解が重要と太田さんは言う。文化政策を考えるうえでもこの言葉は非常に重要だと感じた。アートが社会に対してどのような役割を担っているのか、また、文化•社会・政治・経済的な問題に対してアートが関わることの必要性を太田さんのお話を伺って改めて考える機会になった。

(村上卓也)

インド・マレーシア・インドネシア・中国・タイ、そして日本。アジアのコミュニティとアートの状況について、エマさんが実際に見聞きしたことを含めてお話しいただいた。その話しぶりからは大変控えめな印象を受けるのだが、語られた内容からはエマさんの精力的な活動がうかがいしれた。
様々な事情を抱えるアジアの各地域で、それぞれにアートは存在している。アートに携わる人々は「社会におけるアートの役割」を考え、多様なかたちでのアート支援を行っているようだ。
エマさんご自身の日本での活動についてもお話しいただいたことで、彼女の興味を知ることができた。エマさんは「ディスロケイト(dislocate)」という活動を主催されており、昨年は鷹の台駅周辺で作品の展示やレジデンスなどの企画を行ったという。このディスロケイトという企画のテーマは「Art」「Technology」「Locality」で、「アートによって地域の人々はどう変わるか」ということや「テクノロジーによって地域に対する感じ方はどう変わるか」ということなどに関心があるという。とくに昨年の活動は、鷹の台駅周辺地域は“ムサビ”という美術大学がある地域なのに、あまりアートとの関わりがないようにみえたことから、「ムサビのアートを外に出していく活動」として行ったそうだ。私も鷹の台駅周辺について同じように感じていたので、とても面白いと思った。特にこのとき、ムサビの学生の作品づくりと地域との関わり方について、初めは作品が地域を無視して作られていたことから、地域のことを理解した上で行えるようにしていったことは、お互いにとってとても意義のあることだし、アートの作品づくりというものが、どうあるべきかという視点からも重要なことではないだろうか。これからのエマさんの活動がどのように社会とアートを結びつけて行くのか、楽しみだ。

(小林橘花)