実演芸術の鑑賞者育成システムのための「ぐるっとパス劇場版」 2010年 高野彩(21歳)
実演芸術
演劇、舞踊、音楽。これらを複合化した形態も含む。
現状分析
2008年の横浜トリエンナーレではパフォーマンス作品が多数選出されていたように、芸術文化では近年、演劇やダンスなどの身体性を徹底的に意識させる芸術が脚光を浴びている。しかし、実演芸術における先人の業績や同時代の一流の表現に接する機会は、映画や美術館に比べ、人々の生活には未だに浸透率が低い。その原因として、「文化に関する世論調査」内閣府大臣官房政府公報室世論調査担当によると、「時間がなかなかとれないから」、「あまり関心がないから」「近くで公演や展覧会などをやってないから」「入場料・交通費など費用がかかりすぎるから」などが挙げられる。しかし、「送り手=表現者」を受け止める優秀な「受け手=鑑賞者」を育てることは、表現者の育成に先立つものとして喫緊の課題である。日本における芸術文化の更なる活性化には、人々が優れた実演芸術に触れる機会を積極的に作り出す必要がある。
対策案
「ぐるっとパス劇場版」の発行、「ぐるっとパス劇場版」対象施設公演の予約ウェブサイトの構築
利用内容:全国の劇場、ホールなどから選定された21施設の入場券または割引券が綴られたチケットブック。
最初の利用日から利用開始日を含む2ヶ月間に、各施設の公演を1回ずつ利用できる。
発売金額:2,000円程度
有効期間:最初の利用日から2ヶ月間
管理運営:たとえば、財団法人地域創造など
対象施設の選定基準
1、積極的な教育普及プログラム(ワークショップ、アウトリーチ、レクチャー)を行っている。
2、レジデンシャルカンパニーを抱えている。
3、半年に1回以上の自主プロデュース公演を行っている。
以上の3点のうち1点でも当てはまる施設から、古典からコンテンポラリーまで幅広いカテゴリーを考慮して、21施設を選出。
選定対象施設
たざわこ芸術村、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館、世田谷パブリックシアター/シアタートラム、あうるすぽっと、シアターX、にしすがも創造舎、プーク人形劇場、座・高円寺、新国立劇場、こまばアゴラ劇場、俳優座劇場、Bunkamuraシアターコクーン、歌舞伎座、国立能楽堂、STスポット、川崎市アートセンター、彩の国さいたま芸術劇場、水戸芸術館、SPAC (財)静岡県舞台芸術センター、山口情報芸術センター、北九州芸術劇場
期待される効果
・ 新規実演芸術鑑賞者の開発
・ 既存の実演芸術鑑賞者の更なる実演芸術鑑賞機会の増加
・ 劇場利用に伴う宿泊、飲食施設の利用による施設周辺地域の経済活性化
2千円程度の安価な価格のために、1回のみ利用するだけでも多少割り引き感のある値段なので、一回券を買うのとあまり変わらずに利用できる。すぐれた活動を継続している対象施設を応援し、広く活動内容を知らしめることができる。