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美術館におけるデザイン・キュレーターの導入を 2010年 村上卓也 (26歳)

現在、さまざまな場でデザイン・ミュージアムの不在というテーマが議論されている。日本にデザインのコレクションとアーカイヴの機能を持った施設が必要である、というわけだ。そうした課題がある一方で、日本の美術館はこれまでデザインに対してどのように考えてきたのだろうか。一九九〇年代あたりからデザインの重要性を感じていた学芸員の尽力において、美術館においてもデザインの展示がいくつか開催されてきた。欧米のようにデザイン・ミュージアムを持たない日本では、美術館や企業がデザインを考えてきたわけである。しかし、そこには課題もある。それは美術館の役割のひとつであるコレクションの問題である。デザイン展を開催する共にデザインを蒐集することではじめてミュージアムとして機能するのではないか。

日本の美術館の在り方が美術史や美学を中心に構成・成立している場であるために、新しい分野であるデザインというマス・プロダクトのモノを蒐集することが極めて難しいのが現状である。文化的にその価値が認められているオリジナルの芸術作品に対して、大量生産された生活デザイン製品などを保管することは、収蔵庫の場所やコストを考えてみてもコレクションをすることに限界がある。しかし、美術館にはコレクションを保持して研究するという理念があるはずだ。今後は芸術作品と同様にデザインの蒐集も進めていくことで日本の美術館もデザインを考えていく必要がある。そのようにデザインのコレクションという観点からデザイン・キュレーターの導入を提案したい。
 
デザイン・キュレーターに求められる資質というのは、コレクションを選定し、研究していくために必要な専門的知識を持った人材である。そのためには美術史と同様にデザインに関する歴史や理論を習得する必要がある。そして、展覧会への作品の選定や、必要なコレクションを残していくことによってデザインを啓蒙していくことに繋げていくのである。教育普及の観点からもデザインを伝えていくための企画力と、デザインと産業との関係からのマネージメント力も必要である。また、専門性に対応するためにもデザイン・キュレーターの養成には、既存のミュゼオロジーの課程を見直す必要もある。なぜなら、モノに実際に触れることによって得られる経験としてのデザインや、ウェブデザインなどの新たな領域に対しての理解が必要だからだ。

デザインといってもさまざまな領域とジャンルがある。グラフィックデザイン・プロダクトデザイン・ファッションデザインのように個々の文脈がある一方で、その中にあるデザイン領域をどのように分類し、体系化していくかが今後の課題でもある。そして、それらの前提にあるものがコレクションとしてのデザインである。美術館の存在意義が研究とコレクションを前提としていることからも、デザイン・キュレーターを導入することで、デザインの啓蒙という教育的側面を持った新しいミュージアムの在り方の方向性を示してみてはどうだろうか。

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