文化省・文化大臣を 2010年 藤本 浩二 (24歳)
はじめに
いわゆるBRICsの台頭により工業生産へのさらなる圧迫が生じ、国際競争力の低下と日本経済への打撃は避けられないものと想定される。よって今こそ、日本はソフト産業へ力点を集中させるべき岐路に立っていると言えるのではないだろうか。
BRICsに対抗しうるものは優劣をつけがたい芸術文化ではないだろうか。例えば、北欧家具はひとつのブランドによって一市場が確立されている。それはデザインの良さもさることながら、北欧の総合的な豊かさのイメージが内包されていることによる。
振り返って日本の場合、芸術文化において洗練されたものを多々あげることができる。科学技術の振興とともに、こうした芸術文化の蓄積を応用し「コンテンツ」を提供するソフト産業の拡充は国家的なヴィジョンを築く土台となることだろう。
1.芸術文化組織の強化
国家は間接的な支援に徹し、民間支援の促進と補完を行うことを第一の目的とする。換言するならば、コンテンツをつくるのではなくコンテンツ生成の素地を整備することである。そこでまずなされるべきは文化庁から文化省へ昇格させ、文化担当大臣のポストを設置することである。このことによって芸術文化にかけられる予算と政策が拡大する。同時に、内閣府が芸術コンサルタントを任命し、政策の現実性、実行力を向上させることも重要になる。 つぎに、芸術文化研究機関(シンクタンク)を開設し、日本の文化を研究し、その成果を応用できるようにする。広く海外からの人材を受け入れながら、大学などの学術機関と美術館などの公共機関・文化施設とのネットワークを構築し社会に成果を還元する。
2.長期的かつ持続的な支援
芸術文化の振興には熟成期間が必要となり、時間も資金も多分に要することを考慮し、国家的政策としての長期的なヴジョンが求められる。アメリカの公共政策では10年程のプロジェクトで、その効果は20〜30年後にあらわれている。
3.文化芸術の交流の場
アメリカの公共政策にはアーティスト同士の交流の場を創設するという側面も大きくみられた。そして交流の場を介して、後に芸術の一時代を築く原動力の一因が形成されていったとみなすことができる。公共施設の有効活用という意味でも、美術館や劇場の一室を活発な議論やシンポジウムのための集いや催しのできる場として、もっと一般市民に開放する必要があるだろう。
おわりに
一般的には、芸術文化は経済行為と相反すると思われがちである。しかし、今回アメリカの公共政策を調べていくうちに、所有者以外の人々が対価を払わなくても有益に働く影響を示した社会的便益性という観点からみれば、芸術文化を有益な経済行為とも捉えることができることがわかった。この観点を展開させることで、その社会的な意義を主張していくことができるのではないかと考えられる。