culture power
artist 淺井裕介/Asai Yusuke


















Copyright © Aomi Okabe and all the Participants
© Musashino Art University, Department of Arts Policy and Management
ALL RIGHTS RESERVED.
©岡部あおみ & インタヴュー参加者
©武蔵野美術大学芸術文化学科
掲載情報の無断使用、転載を禁止致します。

コメント

腕が独立した生き物として勝手に動いているとしか思えない、淺井裕介の制作にはいつも魅入ってしまう。尋常じゃない速さで伸びる植物はどこまでも空間を浸食し、蔦に覆われた家を連想させる。蔦は時折静かに窓枠から中へと伸びていき壁を壊すこともある。彼の絵からはそういった侵犯する恐ろしさと何かに取り憑かれているような恐ろしさを感じていた。生まれ持った才能、神懸り的な行動。ただ彼が描き続ける様を眺めていただけの時はそう感じていた。今回このインタビューを経て印象が変わった。淺井は制作の何倍もの時間をかけて考えていた。むしろ制作していない時間はずっと考える時間と言っても良いだろう。どうしたら何も考えずにスムーズに絵を描くことができるか、自分のサイズに一番合った無理をしないやり方とは、様々な思考が彼の中で熟成されやっと彼から生み出される。あの滑らかな、つまづくことを知らない筆さばきは神懸りなどではない。生み出す力は必ず自分自身からしか生まれ得ないのだ。

またそう考えると遠藤一郎との関係も頷ける。一見物静かな雰囲気を湛えている淺井が遠藤のようなハチャメチャな作家と一緒に活動していると聞くと少し不思議な気もするが恐らく彼らは今この時代の若手作家の中では最も危機感を持って思索している。インタビューの中でも語られたが本人が出てきて作品の説明をした時初めて理解される、作家と作品でひとつのものという形が彼らに共通する。彼らが考え抜いたごくシンプルな直球を投げるやり方ではこの疑い深い社会では避けられてしまうのかもしれない。正直私も初めは受け取ることは出来なかった。しかし投げた本人が出てきた時、疑ってしまった自分を恥じることとなる。そうして少しずつ直球を受け取ることが出来る人を増やしていく、それが彼らの活動の大きな意味だと感じた。私もこれからの未来のために、考え続けていかなくてはならない。

(林絵梨佳)