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museum 森美術館/MORI ART MUSEUM


















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コメント

物流あるところで芸術もまた栄える。目覚ましい発展を遂げる中国のコンセプト重視な作品達は、欧米諸国の収集家の心をよく捉えている。とはいえ、日本の感覚的な作品の「わかりにくさ」を嘆く必要はないだろう。世の流れがコンセプトに傾いているからこそ、その性質が切り札になることを期待しようと思う。

(矢野 吟河)

森美術館で何回かアジアの現代アートに触れる機会がありアイウェイウェイの展覧会も行きましたが、いささか違和感を感じていました。
しかし南條先生の講義を聴講しさらに文字おこしをすることによって、より知識に肉付けができたと思うので、今再びアジアの現代アートの展覧会に行くと違う視点から鑑賞することができると思います。
現代アートの発展は経済の状況や宗教など、とりまく周囲の環境が大きく関わってくるものだと理解できました。
南條先生のお話からアジアの勢いや情熱を感じ、ぜひいつか本物の現代アートの現場を目にしたいと思います。

(渡辺 蘭 )


[森美術館−叶う夢と叶わない夢の間に]

森グループが都心の活性化を目標として建設した六本木ヒルズには、ホテル、マンション、放送局、高価な商業、娯楽の施設が集まっている。まるで都市のように完成された地域になった。その街の中心的なものが森タワー。 東京のランドマークを自称するその建物の最上部に、森美術館(以下、森美)が誕生した。

森タワーにはどこか、ニョーヨークの5thアベニューとMOMAとエンパイアステートビルを合体させようとした思惑を感じる。建物の中に入ると、54階建の7階から48階まではオフィス。49階から50階まではアカデミーヒルズと言うスクールとフォーラムの為の空間と会員制図書館。51階は非会員向けのミュージアムカフェ& 会員向けヒルズクラブ。52階から53階までと吹き抜け設計の54 階までが美術館である。森タワーと森美の空間的な特徴は何よりも、エンターテイメント施設での美術館の性格をはっきり見せていることだろう。

森美を見る視線は様々だ。バブル期、日本は美術館建立に膨大なお金を使った。しかし、その時期、作られたどの美術館も現代の日本のイメージを発信できる場所にはならなかった。日本人は浮世絵の中の存在ではなく、今の文化を発信できる存在を夢見ている。森美はその夢の叶うのと叶わないのの間にある。森美に対する批判もそこから始まる。しかし、森美は六本木ヒルズ全体をしめる大部分の商業施設の一部の美術館でしかない。森美をそのように受け入れないと、この美術館が進むべき方向についての論議は進まない。もちろん、森美は多くの人々を惹きつける所にあるから、その人々に一種の知的、芸術的エンターテイメントを提供するものとして十分な機能を果たすと思う。

森美はこうした環境の中で世界最初の展望台を兼ねた美術館という、まさにエンターテイメントと文化の両立を試すスペースとしてある。その試みが成功するか失敗するかに関わらす、森美は分化された美術館の象徴的な存在ともいえる。

経済不況が続く中、日本のアートシーンは全体的にあまり楽観できる状態には見えなかった。しかし、その厳しさの中で希望的なのは、東京に国のイメージとなりえる美術館がないという「不在」に対する自覚と、美術館の性格の分化状況だった。ニーズに答えられる美術館の不在と東京のイメージに対する悩み。森美術館を含めて、これから先どうなってゆくのか、その成果はまだ見えてこないが、こうした自覚や動きつつある現況は、日本のアートシーンに肯定的なエネルギーを与え得るのではないか思う。

(じゃん ゆんそん)