イントロダクション
広島は、世界中の人々が知っている負の歴史を荷った国際都市だ。フランスから訪れる友人の多くも、広島に足をのばした。戦争によって被爆した人と大地がもつ意味は、第2次大戦を知らない海外の若者やアーティストたちにとっても、現代を読み解くための必修科目である。広島に現代美術館が存在する意味は、まずここにある。そのことを反芻したい。
世界の平和を希求する気持ちと、豊かな芸術文化の発展を願う心は、同じ泉から湧き出てくる。だから広島からの呼びかけに、多くのアーティストが真摯に答えてきた。ときには愛、ときには原爆が、ヒロシマのテーマとなって、すばらしい作品が生まれている。これまで私自身、ヒロシマ賞や公募展の審査をはじめ、さまざまな活動にかかわらせていただいた。広島市現代美術館は、ヒロシマ賞の授与や委託作品制作などを通して、日本や世界の美術家たちが心を研ぎ澄まして制作した珠玉の作品を集めている。
アートドキュメンタリー映画祭を早期に手がけて、監督の一人として呼んでくださったときには、映像に対する熱いまなざしも感じた。広島が世界から忘れられることなく、ヒロシマを忘れられる日がくるために、美術館は現代とともに、力強い歩みを続ける。
(岡部あおみ)