データ
SPIRAL(スパイラル) ワコールアートセンター 広報部長(当時) 尾崎宣之氏インタヴュー
日時:2001年5月29日
場所:スパイラル 〒107-0062 東京都港区南青山5丁目6番23号
Tel. 03-3498-1171(代表)
http://www.spiral.co.jp/
インタヴュアー:岡部あおみ
参加学生 :白木栄世、越村直子
●沿革
1985年10月 株式会社ワコールが「文化の事業化」を目指し、東京・青山に複合文化施設としてオープン
●建物
名称 | スパイラル(SPIRAL) 地上9階、地下2階 |
完成 | 1985年9月9日 |
設計 | 槇文彦+株式会社槇総合計画事務所 |
施工 | 株式会社竹中工務店 |
内装設計 | 地下1階:高見慧 1,3,4,5階:株式会社槇総合計画事務所 2階:武松幸治+E・P・A 6,7階:株式会社ヌル・ハウス |
敷地面積 | 1736m2(525坪) |
延床面積 | 10561m2(3200坪) |
スパイラルの名称は、英語で螺旋。これは螺旋状に上昇していくイメージを表現した建物の外観と内部構造の特徴に由来。1階エントランス付近のカフェを取り巻くように現代美術のためのギャラリースペースが設けられており、カフェ・ギャラリーとも言える。
(*1987年にアメリカ建築家協会選定によるその年の世界で最も優れたアルミ使用の建築に与えられる「R.S.レイノルズ賞」受賞。)
●館内の施設
ギャラリー&カフェ、多目的ホール、レストラン・バー、生活雑貨を扱うショップ、CDとレコードのセレクトショップ、トータル・ビューティ・サロンなど多様なスペースが共存する。
●方針
「生活とアートの融合」。生活とアート(芸術)が美しく溶け合った豊かなライフスタイルの実現を目指し、美術、演劇、音楽、映像、ファッション、デザインなど、質の高い芸術活動を日常生活の中で気軽に楽しむ為の提案、暮らす、食べる、装うといった日々の生活そのものをよりアーティスティックに演出する為の提案を行う。ターゲットは20代後半の女性を中心に男性を含めた都市生活者。
●運営形態
運営にはワコールの関連会社である株式会社ワコールアートセンターがあたる。内部にはキュレーターなどの専門家を置かない。収入は貸館事業を中心に法人需要とショップやレストランなど一般消費者の需要。
●職員
建物全体のアルバイトも入れた全従業員は約180名、社員は約90名。スペースの運営、スパイラルホールは3名、ギャラリーも3名。プロデュースは広報部社員が兼務。
●企業本体との関わり
本社である株式会社ワコール創業当時から“ものをつくる会社である”という企業理念をもつ。70年の大阪万博への参加など早くから文化活動を始め、京都服飾文化研究財団(1978年設立)の研究、収集、保存、公開活動は日本における西洋衣装史上重要な位置を占めている。この財団を支援する活動とともにスパイラルにおける活動がある。企画予算は確保されておらず、運営費は自社ビル内の売上から賄う。(土地建物の維持管理費は本社の資産管理下にある。)商業的活動と文化活動の両立を目指す。
●活動内容
商業スペースの運営、ダンスや演劇、現代美術作品の展示などスペースのレンタル、提供などのほか、プロデュース事業。88年からは企業や自治体へ文化活動のプログラムを提案。90年から99年まで、株式会社シャチハタに対し「ジャパン アートスカラシップ」の提案。95年から現在に至るまで茨城県における「アーカス構想 パイロット・プログラム」。
●アーティスト支援、問題点
スパイラルルーム、ホール、ギャラリースペースを破格のレンタル料で提供。(各年間4、5本の支援に当たる)
問題点は文化性と経済性のバランスをいかにとるか。ホールの稼働率の低下、商スペースの赤字。また企業の負担(環境、社員の年金問題など)も増大する今日、益々文化活動の永続が難しくなっている。
(越村直子)