Cultre Power
mecenat ベネッセアートサイト直島/Benesse Artsite Naoshima


















Copyright © Aomi Okabe and all the Participants
© Musashino Art University, Department of Arts Policy and Management
ALL RIGHTS RESERVED.
©岡部あおみ & インタヴュー参加者
©武蔵野美術大学芸術文化学科
掲載情報の無断使用、転載を禁止致します。

データ

ベネッセアートサイト直島
http://www.naoshima-is.co.jp/

●沿革
1988年福武書店代表取締役社長福武總一郎、直島町議会にて「直島文化村構想」を発表
1989年直島国際キャンプ場オープン
1992年ベネッセハウス 直島コンテンポラリーアートミュージアム(ホテルとの複合施設)オープン
1995年ベネッセハウス アネックス(別館)オープン
1997年直島・家プロジェクト開始
2001年直島の民家などさまざまな空間を展示会場に改修して「スタンダード」展(企画展)開催
2004年直島全域にわたる現代アート活動の総称を「ベネッセアートサイト直島」と名称変更
地中美術館(運営:財団法人直島福武美術館財団)オープン
 

●建物
ベネッセハウス本館
主要用途:美術館 ホテル(客室数10室)
設計:安藤忠雄建築研究所 (安藤忠雄・岡野一也)
施工:鹿島建設広島支店
敷地面積:44,699.99m2
建築面積:1,775.46m2
延床面積:地階 1,542.64m2
1階 1,015.43m2
2階 727.68m2
3階 357.63m2
計 3,643.38m2
構造:鉄筋コンクリート

これまでの美術館建築の常識にとらわれない、個性的で存在感の強いアートのための空間。展示空間は建物内部にとどまらず、広く美術館周辺一帯がアーティストの発表の場になる。建物内部の展示は主に地階ギャラリーで行われる。

●関連施設
地中美術館(運営:財団法人直島福武美術館財団)
主要用途:美術館
設計:安藤忠雄/安藤忠雄建築研究所
施工:鹿島建設広島支店
敷地面積:9990m2 建築面積:34.98m2 延床面積:2573.48m2 構造・規模:鉄筋コンクリート造、地下3階
コレクション:クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレル

●付帯設備
地階にレストラン、2階には客室、カフェ、図書室、講義室。

●方針
開発当初のマスタープランに加え、97年、社内において「時代の変化に色褪せない普遍的な価値を、瀬戸内海の景観や現代アートの価値と意味を深めることによって想定し伝える」というコンセプトを発表。「自然・建築・アート・歴史」の4つのコンテンツをもって、訪れた人々が自分自身や人間について考えることのできる空間づくりを目指す。「Benesse(=よく生きる)」という企業精神と美術館の活動方針とが全体として文化・芸術との関わり方に生かされている。
会社は昭和40年代から美術品をコレクション。内容は備前焼や版画、国吉康雄、西洋近代絵画。それらは直島では展示せず、岡山本社で展示、保存。

●運営形態
経営母体は(株)ベネッセコーポレーション(95年、(株)福武書店から社名変更)。96年、社内の直島文化村担当部の中の、直島美術セクション(美術館を中心とした発信活動)と運営セクション(宿泊サービスを中心とした施設運営)が統合。日常の運営費は宿泊サービス部門の売上によってブレイクイーブン化を実現させ、経営的に自立した文化施設を目指す。
キャンプ場とホテルの売上は年間約3億円。作品購入限度額として企業が設定しているのは年間2億円で、セミナーやレクチャーなどのイベント費用は別途年間の運営費として用意される。

●職員
基本的にベネッセコーポレーション社員として採用。本部スタッフ1513人のうち直島関連の職員は、岡山秘書室に6人、直島に20数人(アルバイト含めて6〜70人)。学芸員は宿泊サービス部門を含めた施設全体の統括、イベント企画、広報も行う。

●自治体、企業本体との関わり
子どもたちが集える場所をつくりたいという創業者福武哲彦氏(故人)と島の南側一帯を教育的な文化エリアとして開発したいという町長三宅親連氏(故人)の考えを基に、離島4島を含む直島の南側一帯の土地購入を実現し、事業がスタート。島の開発に際しては住民の生活や島の経済を視野に入れ、「人々の向上意欲をサポートし、それにまつわるサービスをする」という企業理念との共生を図る。
美術館におけるアーティストの選定などについては、コミッティーがある訳ではなく、社内での了解を得て実行される。その他、館の活動に関しては主に3〜5年の中長期の企画を本社に対して提案。

●活動内容
92年のオープンから1年6ヶ月の間は5回のオリジナル企画展、それに併せた各種レセプションや関連イベントなど。95年以降は特別展から常設展中心へと移行。その後、作家自身を直島に招き制作を依頼するコミッションワーク中心の作品収蔵へ。シンポジウムも盛ん。97年、敷地外の本村地区で古い民家を修復し、展示空間として保存していく「直島・家プロジェクト」始動。

●観衆、地域コミュニティーとの関わり
コミッションワークやスタッフによって行われる週2回のギャラリートークなどを通して、作品制作の過程が人々に伝えられている。 地域住民の理解は美術館にとって欠くことのできない要素であり、町民からは施設料は取らずに開放、新コレクション入手の際は町民に案内、年1回共同で“つつじ祭”の開催など試みている。「直島・家プロジェクト」も地元との良い関係が築かれた頃に始めた。

●アンケート調査
月ごとに運営会議で取り上げるなどして活用。客室に設置し回答を得たものとヒヤリングによるもの。内容はサービスや企画に対する満足度などで、美術館に関する質問より宿泊施設に関する質問が主。目的は相手(利用者)を知るためと企画の出来を確かめるため。

●アーティスト支援、問題点
支援は特にしていないが、アーティスト・イン・レジデンスのノウハウを身につけたい、などの積極的な姿勢がみられる。
今後の活動方針として、アーティストだけでなくキュレイターなども呼べるような研究機関として機能させたい、海外も視野に入れ島全体をより大きなまとまりの中で活性化させていきたい、など。メンバーシップ制度も考えている。
問題点は、ホテルの稼働率の偏り。平日は稼働率30%、週末やハイシーズンは90%。平日の有効利用(例えば大学のゼミ、企業研修など)を考えているが、客室数など団体を受け入れる体制ではない。
企業内でのポジショニング、経営陣に対する説得や島民との共生など、“現実のアートの場”をつくるための対話を常に続ける必要性、全体の中での役割ということを強調していたのが印象的。

(担当:越村直子)

※データ更新:2005年5月