Cultre Power
mecenat 大日本印刷ICC本部/Dai Nippon Printing Co., Ltd.


















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©岡部あおみ & インタヴュー参加者
©武蔵野美術大学芸術文化学科
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データ

大日本印刷ICC本部 住所:〒104-0061東京都中央区銀座7-7-2
tel: 03(5568)8014 fax 03(5568)8019
URL:http://www.dnp.co.jp/artscape/ [artscape]

●沿革
1986年ggg (ギンザ・グラフィック・ギャラリー)設立
1991年DDD(DNP DUO DOJIMA)設立
1992年(株)トランスアート設立→http://www.transart.co.jp/
1995年CCGA(Center for Contemporary Graphic Art and Tyler Graphics Archive Collection)設立
MIJ(Museum Information Japan)開設
1996年nmp(network museum & magazine project)を開設し、インターネットユ96ワールドエキスポにパビリオン出展。その後MIJと統合し、artscape発足
1999年(株)DNPアーカイブコム設立→http://www.dnparchives.com/
2002年MAISON des MUウS de FRANCE(メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス)開店

●建物
○ ggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)
〒104-0061東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
http://www.dnp.co.jp/gallery/ggg/index.html
通称[スリーg]は1986年3月4日に、それまで銀座界隈にはなかったグラフィックデザイン専門ギャラリーとしてオープンした。1Fの奥階段を降りると地下1Fにもギャラリースペースが広がる。

○ MAISON des MUSE de FRANCE(メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス)
〒104-0061東京都中央区銀座7-7-4DNP銀座アネックス
tel 03(3574)2380 fax 03(3574)2381
http://www.museesdefrance.org/top.html
メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランスは銀座アネックスビルに2002年11月にプレオープン、2003年2月にグランドオープンした。1F、2Fはブティック、地下はインフォメーションセンターになっている。

○ DDD (DNP DUO DOJIMA)
〒530-0004大阪府大阪市北区堂島浜2-2-28 堂島アクシスビル1F
tel 06(347)8784
http://www.dnp.co.jp/gallery/ddd/index.html
1991年大阪・堂島にオープンした関西でも数少ないグラフィックデザイン専門のギャラリーで、マルチメディアプレゼンテーションスペースも併設されている。DNP子会社である(株)DNPスペースデザインがDDDスペースプロデュースをしている。

○ CCGA (Center for Contemporary Graphic Art and Tyler Graphics Archive Collection)
〒962-0711福島県須賀川市塩田宮田1
tel 0248(79)4811 fax 0248(79)4816
http://www.dnp.co.jp/gallery/ccga/index.html
敷地面積:8600m2
建物延床面積:1428m2
福島県須賀川市の広大な土地に設立されたCCGAは、景観設計により周囲の景観や生態系に調和するものとなっている。スペースプロデュースに(株)DNPスペースデザインも関わり、またCCGAのロゴは田中一光がデザインした。

● 方針
○ artscape
artscapeはMIJ(Museum Information Japan)とnmp(network museum & magazine project)が統合して出来上がったサイトで、全国の美術館の基本情報を収集・集積する試みとウェブマガジン形式でアート情報を発信する試みの総合体である。情報集積の面では、「アートライブラリー」(美術用語集、出版物を含め美術館・ギャラリーデーターベース)の充実、情報発信の面では、「展覧会情報」、「アートレポート」、「読者コーナー」(旬のアートプロジェクト情報、ジャーナリストによる展覧会レビュー、また学芸員や研究者によるレポート、読者投稿欄)などの充実で、両面共、広範囲且つ濃密な展開がひとつのポリシーである。

○ ggg , DDD , CCGA
ggg, DDDは共にグラフィックデザイン専門のギャラリーであり、デザイナー田中一光がオープン当初から2002年まで監修を務めていた。 ggg, DDD共に月1本のペースで展覧会が企画され、年2回のペースで団体展が企画されている。展覧会企画の運営管理費に関してはDNPがすべて負担し、 100%メセナのかたちをとっている。
CCGAは1974年に設立された版画工房タイラーグラフィックス(アメリカ・ニューヨーク)の作品を中心に現代版画、グラフィックアート作品を収集する他、シンポジウムやレクチャーを積極的に行っている。

〔DNPグラフィックデザイン・アーカイブ〕
ggg, DDD, CCGAに共通する重要な特長はアーカイブ事業への積極性である。DNPグラフィックデザイン・アーカイブ委員会が運営母体となり、1950年から現代までの日本を中心としたポスター、複写フィルム、その関連資料をアーカイブ・データベース化し、保存は勿論のこと、研究・教育機関への貸し出しや、またインターネット上で公開するなど、文化事業に新しい視点を向けている。
また、グラフィックデザインよりもっと広く視野を広げて、DNPアーカイブコムにおいてはRMN(フランス国立美術館連合)やTNM(東京国立博物館)の所蔵する美術資料をデータベース化し、ポジフィルム・デジタルデータ形式で貸し出しをするなど、アーカイブ事業の点で幅広い試みをしている。

〔出版事業〕
ggg, CCGA共に出版事業が充実している。特に「gggブックス」は92年より発行され続けている。「gggブックス」やCCGAの図録、またギャラリーとしては珍しいggg, DDDのアニュアルレポートなどの発行物は(株)トランスアートの事業により、オンラインでも購入出来る。(株)トランスアートにおいては、DNP季刊誌「本とコンピュータ」や「リキエスタ」、またグラフィックデザインに関わる書物の発行やオンデマンド出版事業など、DNP独特の出版事業を展開している点において目を見張るものがある。

○ MAISON des MUウS de FRANCE(メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス)
DNPは99年からRMN(フランス国立美術館連合)傘下の美術館・博物館が所蔵する美術作品のアーカイブ・データベース化を始めている。日本初のその試みに伴ってRMNイメージアーカイブセンターが設立され、さらにそれら美術作品を商品化したものを集めた場所、それがメゾン・デ・ミュゼ・ド・フランスである。そこではフランスの美術館・博物館の収蔵品・展覧会についての情報提供や、出版物・ミュージアムグッズの販売、レクチャーや講演会開催などフランス美術に触れるきっかけが幾つも仕掛けられている。特筆すべきは、レプリカ商品そのものから、本物に触れたくなる衝動を誘発させられるルートが確立されていることである。商品一つ一つに作品名・作家名・所蔵美術館・作家作品の分散先などの詳細情報が付随されており、気に入れば後はフランスに足を踏み入れるだけである。また、バーゲンはしないという方針もDNP独特の文化活動を特色付けている。

●運営形態
○ artscape
美術館・博物館の情報集積と発信をカバーする資金はDNPより月々260〜270万円ほど支給されている。サイト更新は月2回。

○ ggg, DDD, CCGA
ggg, DDDの企画運営は(株)トランスアートが手がけている。ggg, DDDにおいてはオープンよりデザイナー・田中一光氏が監修を務めてきたが、現在は、氏が生前に残した向こう2年間ほどの予定企画を実現しつつ運営をしている。
CCGAはDNP ICC本部が運営、館長はDNP専務取締役高橋平氏が務める。CCGAはタイラーグラフィックスとの最初の契約譲渡金以来、無料で作品を引き受けていたが、3年前にタイラーグラフィックス工房が閉鎖したため、今後CCGAのタイラーグラフィックス・コレクションが増えることはない。

○ MAISON des MUウS de FRANCE(メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス)
運営はDNP子会社、(株)メゾン・ド・DNPギンザが手がけている。MMFは今後、アジア・オセアニア諸国に展開することも視野に入れている。

●職員
○ artscape
運営管理は技術スタッフも含めて10名程度。水戸芸芸術館現代美術センターの森司氏、DNP ICC本部長の志村耕一氏などを含めてスタッフ全員本業に務めながらartscapeに関わっている。企画編集担当4人、webデザイン担当1人、web エンジニア1人、デジタルアーカイブ研究者1人の構成の他、展覧会レビュー担当の村田真氏はレギュラー執筆陣の一人として関わっている。

●活動概要
(株)大日本印刷〔DNP〕は1876(明治9)年10月創業であり、現在では17もの子会社を含め従業員数が35,182名という大企業である。出版・商業印刷以外に、生活建材やエレクトロニクス部材も取り扱うDNPがメセナ活動を始めたのはgggがオープンした86年からであり、当時リクルート事件がきっかけで企業活動の不透明さが社会問題になっていた。そこでDNPは自社の印刷活動を版画やグラフィックアートに投影する形で企業表明し、現在まで積極的にメセナ活動に力を入れている。
DNP内で企業文化活動を担うのは主にDNP ICC(インターコミュニケーションセンター)本部であるが、もはやICC本部だけにとどまらず、文化財や美術作品のアーカイブを引き受けるDNP子会社 (株)DNPアーカイブコムや、ggg, DDD運営やグラフィックデザイン関連書籍の企画・編集・発行販売を担う(株)トランスアートにまで広がり、DNPの変遷を辿ると、gggから始ったメセナ活動がDNPという企業そのものを揺るがしてきたことが分かる。
新デジタル化の波を迎え、アートブックのオンデマンド事業や美術作品のデジタルアーカイブなど、DNPの新しい視野を切り開く活動は美術業界にも影響力が高く今後も期待される。
(今西彩子)