コメント
2004年からスタートした「ジェンダー・リサーチ」の、年度末締めくくりとして行われた対談は、大盛況で終わった。女性が描いていく未来の方向性。若い世代に蔓延する終末思想。視覚表現としてのアートと批評の関係性、それを受けてのアーティストの態度の在り方。経済との関係・・・・・・。やなぎの作品を論じていくなかで、現在のアート、そして社会が抱える諸相がつぎつぎと表出するたび、はっとする、新鮮な発見があった。先鋭的というよりは、柔和でおだやかな流れで進行した2時間の講演は、女の子同士のおしゃべりを楽しむひとときのような、あざやかな1コマのように記憶に残っている。
(藤川知佳)
社会学者上野千鶴子氏の鋭い切り口で世界的なアーティスト・やなぎみわ氏が解体されていく。その様は実に見事で、やなぎの自己批評と伴って次々露呈される、現代アートと社会の不可視だった断面・側面を前にしてまず圧倒されてしまった。アートと批評との間にある私のもやもやとした思いに、和やかにはしゃぐような会話で細く長い風を吹きつけられたような、そんな感覚を覚えた。なにしろ、私たち「グランドマザーズ」のモデル世代を上野・やなぎ両氏に批評され、ともに考察するという贅沢な時間を過ごすことが出来たことを幸せに思う。
(椎橋美和)