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gender research 出光真子/Idemitsu Mako


















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レクチャー

2004/7/5
ジェンダーリサーチ研究会・出光真子(映像作家)
記録・横井麻衣子(芸術文化4年)

作品上映
[清子の場合 Kiyoko's Situation] 1989 ビデオ 24分20秒
画家である清子が、家事や家族からの抑圧によって制作活動を妨げられ、自らのアイデンティティを見失う。固定的役割を押し付けられることで自己表現ができずに苦しみ、自殺してしまう女性の悲劇を描いたドラマ。
[加恵、女の子でしょ! Kae,Act Like a Girl] 1996 16mm 47分20秒
女の子は女の子らしくしなさいと言われ続けてきた加恵は、芸術家を目指しているが、女性であるというだけで教授・画商・評論家に不公平な評価を受け続けている。また、共に芸術の道を歩む夫は、次第に家事や自分の補佐を強制し始める。加恵が、悩みながらも生き方を模索し、新しいパートナーを見つけてすばらしい個展を開くまでを描いたドラマ。

公開トークディスカッション
出光真子/岡部あおみ/クリストフ・シャルルク
ストーリーは重い内容で見た直後に感想を述べるのは難しいが、7年前日本語ができなかった頃よりも深く心に入ってきた。映像は現実との距離感をわざととっている。見ている側は映像を見て何をつかめばいいか、どう解釈すべきか、考えなければならない義務を与えられるので、効果的。この作品にどれだけ共感できるか、または共感できないか、学生にも聞いてみたい。
岡/[清子の場合]は実話が元になっているそうですが。
出/自分でも久しぶりに見たけれど、時代劇かのように感じる。それくらい1989年頃と今の世の中だと変わってきていると思う。この作品は姉の体験と自分の体験を重ね合わせてシナリオを書いた。姉は評論家と結婚したが絵を描きたいと思い、離婚してパリで活動した。しかし作家としてなかなか世に出られず、制作への意欲を失って心身を壊してなくなった。彼女はフェミニズムには出会っていない。70年代のパリ美術界はまだ男性社会で、彼女は自分が認められず、妹の夫のサム・フランシスが評価されることがわからなかった。
80年代フェミニズムアートが出始めた頃には既に自分の中に閉じこもってしまっていた。10歳年下の私は幸運だったと言える。アメリカでウーマンズハウスに出会いドキュメンタリーを制作するなど、制作者として歩む道がこんなにちがうのかと思うほど。
岡/[加恵…]に関して、母親に子どもを預けて制作をするというのは矛盾ではないかという批評もある。私は、現在子どもを持つ女性が仕事をする上でリアリティあるソリューションの一つだと考えるが出光さんは。
出/私も二人の子どもがいるので母親に助けられた。加恵が最後に母親を頼ったことはフェミニズムの女性たちからの批判をよく受けるが、私はこれがひとつの現実だと思っている。

作品上映
[直前の過去]からの抜粋、3~4分。開催中の「Borderline Cases展」に出品している作品。
1940年代の、自分の幼い頃の写真・日本軍の写真を使って、当時の市民生活と軍の動きの乖離を映像化。のどかで平和な生活をおくる私たち・軍隊としてイラクへ出て行く自衛隊、その現在と過去の戦争の悲劇を重ね合わせ、見るものを考えさせる。

会場から、質疑応答
Q  時代劇のようだと言われたが、現在の日本のジェンダーの状況についてどう思われるか
A  2年程前までは良い方向に進んでいると思っていた。女性も自由でいろんな機会を与えられて、ああ良いなあなんて。でも最近、男女参画を行政側から逆に戻していくという話を聞いたりして、日本の女性たちが「兵隊さんは命がけ、女はたすきがけ」というような立場に追い込まれていくのではないかという不安を抱いている。

Q  これからもジェンダーの問題を扱っていくのか
A  もちろんジェンダーのような社会的問題は扱う。一方で私が今一番関心を持っているのがアダルトチルドレンの問題。生まれ育った環境で心にトラウマを抱えた人のことで、自分自身もそうである。このことをジェンダーとも絡み合わせて制作したいと思う。

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