イントロダクション
現在は六本木のコンプレックスに新たな拠点を設けた。かつて食糧ビルの角の空間にあったとき、2001年冬に小粥丈晴&雄川愛の個展を開催した。それは真っ暗な闇へと観客を招き入れる大胆な試みで、いつもの明るいギャラリーの印象をすっかり変えた。
評論家でフリーのキュレーターでもある西原眠氏が、小粥&雄川の二人の作家をカナダのバンフのアーティスト・イン・レジデンスの候補者として推薦してくれたことがある。そのとき彼らの資料が、Taro Nasu Gallery から届けられた。候補者は全部で8人いたが、画廊から資料が送られたのは、彼らだけだった。作家自身が遠路はるばるポートフォリオを持参するケースもあり、日本の作家は大変だな、と思っていた。
スペースの貸しをやらず、所属する作家の作品を売ることで運営する企画画廊のなかでも、「最年少のギャラリスト」。もちろんこんなレッテルは、じきに一新されたのだろうし、されてほしいものだが、那須さんのお話を聞いて、日本のギャラリストは大変だな、と痛感した。にもかかわらず、学生たちはギャラリストへの夢を、ほんの少しふくらませたようだった。現場での苦労が、アートのための戦場として、戦うに値する場として、彼らの心に染みこんだからに違いない。
(岡部あおみ)