イントロダクション
キュレーターに必要なのは「love and passion」だと言ったのは、たしかヤン・フートだと思うが、ギャラリストに必要なのは、何なのだろう。 小柳さんの一途なお話には、「love and passion」があふれている。たとえば、クールでミステリアスな写真を撮る野口里佳について語る小柳さんの口調は、まるで恋人を語るようにホットだ。
じつに正直な人だと思う。かつてインタヴューの申し込みを辞退なさったのは、ご自分が銀座の店舗をもつ二代目という恵まれた境遇にあり、ゼロから出発しなければならない若者たちにとって、かなり特殊な例だからというのが、本当の理由だった。だが、今回、小柳さんは「待ってました」とばかり、喜んで受けてくださった。読みやすいようにインタヴューという形をとるようにしたが、実際は講義で、話しても話しても足りないといったエネルギッシュな内容に、みな圧倒され、奮い立った。
それは自信。ここまで私がやってこられたのだから、あなたたちだってできるという確信に満ちた未来へのメッセージだ。そこまで言い切れる女性が増えたら、日本は変わらざるをえなくなる。
ソフトに滑らかに、でもしっかりとしたたかに、すぐれたアーティストたちを引き寄せ、その輪を広げてゆく。自らが突出するのではなく、その渦に巻き込む。こうしてはじめて、「現状」という水たまりが動き、いつしか怒涛となって大海へと向かう、大いなる主潮となる。
(岡部あおみ)