イントロダクション
ニューヨーク大学の大学院を卒業し、クイーンズ美術館のキュレーターとして活躍する岩崎仁美氏のキャリアをたどると、そこにかずかずの恵まれた出会いがあることがわかる。
インターン時代には、ニューミュージアムというニューヨークで初めてのオルタナティヴ美術館を設立したマーシャ・タッカーというキュレーターとの出会い。そして日本人初学芸員としてのポジションを提供してくれた当時クイーンズ美術館のチーフキュレーター、ジェーン・ファーヴァーとの出会い。岩崎氏自身の芸術への情熱と行動力を理解し、支えてくれた米国のすぐれた女性パイオニアたちの熱い使命感を、彼女はこうして自らの胸に刻み込むことになる。先駆者たちへの敬意と愛は、容易とはいえない異国での活動に暖かい光を与えてきたに違いない。
キャリアリスト(出世主義者)たちがしのぎをけずる過酷な実力主義で知られるニューヨークで、岩崎仁美氏が聡明でクリティカルなまなざしを失わず、変わらぬ芸術への愛を持ち続けられるのは、プロフェッショナルな仕事を手がけながら、さらに重ねられた数々の貴重な出会いを通して、自らを磨き続けてきたからに違いない。今後の活動にも期待したい。
(岡部あおみ)