Cultre Power
art apace & alternative space トーキョーワンダーサイト/
Tokyo Wonder Site


















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コメント

石原都政になってから東京都の文化に対する政策は劇的に変化したように思う。「ヘブンアーティスト」、「ワンダーウォール」など秀逸な施策を次々出し、実行に移していく。行政とは思えないフットワークの軽さに感心させられた。構想から6ヶ月でスペースが誕生、動きながら次の作戦を練る、まさに行政の仕事としては異例中の異例である。その中でも、(賛否両論あるだろうが)特に評価出来る施策としてワンダーサイトを中心とした若手アーティストの育成があると思う。例えば、私の大学時代の友人は「0号展」で選ばれた作家の1人となった。また、ある知人はワンダーウォールで賞をとり都庁の廊下に展示された。2人共美術大学の学生で、まだ名の知れた作家ではない。ギャラリー等では行なわれてきたことであるが、公的機関がそういった種類の作家を敢えて発掘しようとする姿勢に軽いショックを覚えた。また、ワンダーサイトで展示した経歴を持つ若手作家を街や雑誌で多く見かけるようになってきた。東京都が打ち出した施策の成果が目に見えて現れ始めている。

今までは、東京都で現代美術を見ることの出来る機会は少なかった。それと同じくらい現代音楽と触れあえる機会は少なかったように思う。2つとも創作者が、労力を費やした割に採算性や発表の場がないという点で共通するのではないだろうか。だからこそ、そのような場を東京の中に意識的に仕掛けたワンダーサイトの存在は非常に意義があるといえる。クラシックなものと同じようにコンテンポラリーな活動に目を向けることこそが文化的に豊かな土壌を作り出す第一歩となるのではないだろうか。

都市のブランディングを文化産業によって行おうとする世界的動きを見据えた上での「クリエイティヴ・トーキョー」や、近年益々目が離せないアジアの動向を踏まえての「アジアンネットワークハブ」等と、ワンダーサイトの掲げる野望は尽きない。今後、行政発のオルタナティヴ・スペースとして、パブリックな役割をそれらのビジョンの中にどこまで落とし込んでいけるかを注目したい。トーキョーワンダーサイトが、多くの人が集い交流し、東京発の新しい流れを世界に向けて発信する刺激的なスペースとして存在して行くことを期待する。

(佐藤美保、2005年)