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山口晃さんへのインタヴューは、10月下旬の肌寒い日に山口さんのアトリエで行われた。駅からほど近い、懐かしい町並みの中にそのアトリエはあった。そして人数の多さに戸惑いながらも、私達を温かく迎えて下さった。
山口さんの人柄は温厚で丁寧で、インタヴューはとても楽しかった。相手を気遣いながら言葉を選んで話す様子や、日本の伝統文化に対する真摯な考え方・誠実さといった作家の性格自体が、作品にも強く影響していると感じた。
最近の日本は閉塞感が強く不安が増しているが、大和絵風俯瞰図の中に現代を盛り込む山口さんの作品を見ると、その刺激が快感だと思える。もしこの作品を後世の人が見たらどう思うだろう、と考えるだけでワクワクしてくる。今、私達が室町時代の屏風や江戸時代の浮世絵を見てその時代に思いを馳せるように、未来の人達が、山口さんの作品を見て平成という時代に興味を抱く時がきっと来るだろう。山口さんは過去と現在、そして未来を繋ぐタイムマシーンの操縦者だと思った。
(芦立さやか)