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ムサビの博士課程に在籍している中崎透さんと、北九州市に住んでいる鈴木淳さん。中崎さんは話題が尽きず、鈴木さんは、さりげなくぽつりと面白いことを言う。そんな2人による、「Favore?どうぞ?」展。
彼らはギャラリーに、あやしげな、自分たちだけの都市空間を作り上げた。
搬入と展示作業は2日間に渡った。 ギャラリー正面の壁を埋める、こうこうと光る看板。都市名を持った、一つ一つ均等な大きさの看板たちが、五十音順に並んでいる。 一つ一つが集まって、また一つの看板、いや、都市である、を作っている。 その他の壁は、都市名を使ったあいうえお作文のメモ書きが囲む。
壁が看板屋中崎さんの作品ならば、床などの他の空間には、鈴木さんの作品が設置された。
鈴木さんは映像作家である。建造物のごとく立ち上がったモニターたちの中に、人が住む。その窓から、私は日常を見た。 それは、日常であって非日常の、ある場面たち。切り取られ集められてしまうと、何かが変なある場面たち。 その映像たちに、鈴木さんは、うまく題名をつける。また何かの、あるものにしてしまう。鈴木さんが集めて作りあげた都市の人々と非日常。
そういうギャラリーにいる普通の私も、非日常空間に取り込まれたら、普通ではない気がしてきた。
この2人に共通したのは、都市ということは明らかであるが、笑いでもある。 日常に潜んでいれば何でもないものたちが、一度切り取られ集められると、非日常に変化する。2人が起こしたズレが、くすりと笑いの音を立て、非日常へと崩壊する。 このズレが原因だ。非日常への解体作業が、笑いの原因である。 中崎さんは言葉とイメージのズレを、鈴木さんは気にもしない日常を見つけだし題名を与えることで、それをした。
岡部先生のキュレーション力と、作家さんのすごさ、一つの展覧会と言う名の都市が、間近で作り上げられていくのを見て、感動した。
様々な方に、ご迷惑をお掛けして、お世話になった。
だが、出来上がっていくわくわく感と希望を、そしてその裏にはたくさんの方がいなければ成り立たなかったことを、私は忘れない。
(加藤祐子)