イントロダクション
「おそらく仲山さんにとって写真は、出会った人を記録し、忘れたくない人をそこに留めておくための道具のひとつなのだと思う。でもだから私は仲山さんの作品に可能性を感じるのだ。」第1回写真「1_WALL」(ガーディアン・ガーデンで2009年に『ひとつぼ展』よりリニューアルした、個展開催の権利をかけた公募展である)の審査員、野口里佳の言葉である。武蔵野美術大学造形学部油絵学科出身で第1回写真「1_WALL」でグランプリを受賞した仲山姉妹。油絵学科だからこそ彼女の写真には写真というジャンルから放された、違った目線を感じさせる。賞を獲った『化石』という作品では、余命があまり残されていない祖父の体にジオラマをほどこし、彼の記憶をまた、彼女自身の記憶に刻もうとしている。その手段として一番適切だったアプローチが、彼女にとっては写真だったのかもしれない。今回ガーディアン・ガーデンでは、彼女の個展「菊ヲエラブ」が2010年6月28日〜7月15日まで開催されているが、その展覧会の作品からも彼女が写真を通して何を伝えようとしているかがよくわかる。仲山姉妹は菊の生産地、沖永良部島の農園で住みこみで働きながら、普段生活の場である東京から離れた自分と向き合い、その過程を写真や映像で記録している。その行為はある意味『化石』と通じるもので、それらの写真には彼女を取り囲む環境、あるいは自ら入り込んだ新しいコミュニティと密接なつながりが表れている。そのつながりこそ、彼女が何かを表現して記録しようとする、アートの原動力になっているのではないだろうか。それが写真であれ、映像であれ、ジオラマのような立体的な何かであろうと、そこには彼女の世界の破片が収集されているのにちがいない。野口里佳の言葉のように、そこには仲山姉妹の可能性が潜んでいるのだ。今回のインタビューでは、そんな彼女の素顔にせまりたいと思う。
(ジョン・スミ)