コメント
インタビューの中にも作品を「鑑賞」ではなく「体験する」と表記している部分があるが、それは氏の作品を一度でも見たことのある人であれば分かるだろう。作り上げられた作品の美しさに驚嘆するのではなく、恐れ戦くこともない。ただ、目の前で起こっている出来事に対して、文字通り触れながら探る。時には楽しみながら、時には戸惑いながら、作品の反応を伺う。次は何が出て来るのか、次は何が起こるのか、それは作品との距離を近づけて初めて得られるものである。
だが、藤幡正樹氏の作品を「美術」という枠組みに入れてしまうには、少し抵抗がある。それは、氏の作品が感覚を揺さぶるのではなく、美を追求するのではなく、ただただ作品内で起こっている事実を見ているような印象を受けるからかもしれない。
今回のインタビューにて、インタラクティブ・アートにおける展示やインターフェースについての意見を聞くことができたのは、(完全に私の個人的な希望ではあったが)嬉しかった。インタラクティブ・アートは、まだ発展途中の分野だ。これからどのような方向に進んでいくのかも、またどのような技術やメディアと結びつくのかも、一切分からない。その中で、メディア・アートの先駆者として突き進んでいく氏の姿勢や方向性をお聞きできたことで、私は少しだけ安堵し、そしてまたわくわくしてきた。 人間と、技術。氏の作品を見ていると、それに対して疑問と回答を導き出すことができるのは、もしかしたら美術作品であるという確信すら抱けるような気がする。
(柳井有)