イントロダクション
ミュージアム構想は、府立も市立も長年暖めているのだが、いまだに具体化していない大阪。
2004年秋は、遠い万博公園から、大阪の中心街中ノ島に国立国際美術館が引っ越した。「アートのインフラ」に国のほうから“カツ”が入るという形だ。そしてやっと、大阪も重い腰をあげつつある。
「ジェットコースターがビルにとぐろを巻く新世界」と、奇妙奇天烈な噂を聞いて、大阪に駆けつけた。サイエンス・フィクション風なイメージを抱いて、下町の繁華街に足を向けると、たしかに、フェスティバスゲートのジェットコースターは、破壊的ビルから突如街路に露出してくる突飛な風情だ。遊園地という枠が消えた日常と非日常の混在は、新世界というナツメロの英雄タワーとも呼応している。
ここで、「大阪市芸術文化アクションプラン事業?新しい芸術文化の創造と多彩な文化事業の推進に関する指針?」を脱稿した才人に会った。乾正一氏は「大阪からアートを発信!」などとは、けっして標榜しない、お役人らしからぬ思想の持ち主だ。切り込まず、刀をもたない丸腰流儀は、アートのガンジーともいうべきか。
中西美穂氏、角知子氏という有能な二人の女性(もと作家)が支えるアーツアポリアとアーツパークは、築港赤レンガ倉庫と新世界フェスティバスゲートの二つの「場」に、アーティストとNPOの秘めた輝かしい拠点を築いている。
乾正一氏は職人気質と自称していたが、行政マンの既成概念をひっくりかえす、したたかで斬新なる実践家とみた。日本のエリートもあっぱれ、捨てては置けない。ヴィジョンをもちえる稀有な人を、とことん大事にするのが、芸術や文化財の保存と発展の基礎である。
先駆的なアーツアポリアとアーツパークの事業を、大阪市! しっかりたのんますよ。
(岡部あおみ)