イントロダクション
NPO 法人AIT(アーツイニシアティヴトウキョウ)がアーティスト・イン・レジデンスの拠点を東京に作った。2004年にはトヨタ財団の市民活動助成を受けて、南米コスタリカ生まれのフェデリコ・エレーロという20代の若手アーティストを招聘している。すでにヴェネチア・ビエンナーレなどで受賞したことのある有望な作家だ。
フェデリコ・エレーロがせっかく東京で制作したのだから、発表の機会も探そうと、AITのメンバーはギャラリーにコンタクトした。小柳ギャラリーが新川のスペースで彼の個展を約束し、現代美術のアート・フェアでもっとも定評のあるスイスのバーゼルにも、エレーロの東京の作品を出品する。海外のアーティストが、東京から国際的なデヴューを果たすのだ。こんなことが可能だったとは、かつては想像もできなかった。従来にはないアートのリンケージを誕生させたことになる。
AITのディレクター小沢有子氏の得意技は、社会のニーズを見つけて、人と人、モノとモノをバランスよくつなげることだというが、まさにつなぎ手の妙技の成果といえそうだ。また、AITのなかでも、MADのエデュケーション・プログラムを手がけるロジャー・マクドナルド氏や小澤慶介氏は、キュレーター養成に関するコースをはじめとして、ユーモアと機知に富む実践的なレクチャーをなさっているという。大学の助手やゼミ生が参加していたことがある。
MADのコースは今ではAからFにまで増え、キュレーション、オーディエンス、アーティスト以外に、マガジン、クリティカル・リーダーズと内容が多角化した。教えることを自ら楽しみながら、アート・イベント化しつつ、新たな企画を立ちあげてゆく。AITのリンケージが広がれば、TOKYO LIFEもさらにアーティスティックに、国際的になってゆきそうだ。
(岡部あおみ)