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NPO ミュージアム・シティ・プロジェクト/Museum City Project

ギャラリーアトリエ
photo Aomi Okabe








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イントロダクション

街路に一定期間作品を展示する大規模な連続企画が開始するのは1990年の福岡においてだった。山野真悟氏と宮本初音氏が企画事務局を務め「ミュージアム・シティ・プロジェクトMPC」の前身、「ミュージアム・シティ・天神」が、天神一帯のビルや路上に作品を設置した。世界の現代アートの潮流を先導している国際展「ドクメンタ」の町カッセルのように、福岡は観光とアートを結ぶ商業都市の文化戦略を始めたと注目を浴びた。

その5年前に単独施設として開館した福岡県美術館の学芸員、川浪千鶴氏は、初回の「ミュージアム・シティ・天神」を目の当たりにして驚愕した。「とてつもない規模で、作家数が多く、同時多発的だったので、すべてを見られた人はだれもいなかったのではないか」と。そのピークが訪れたのは1994年頃だったとも回顧している。MCPと街と美術館群の連携の成功、つまり福岡アジア美術館が独立する前の福岡市美、福岡県美、北九州市美などが各々画期的な展覧会を同時開催した時期だった。 MCP が10年以上継続したのは、「街という概念をさまざまな形で解釈し、いろいろな変化の仕掛けや試みを行ってきたからだ」とも川浪氏は指摘する。

当時から、福岡の魅力は、黒田雷児氏をはじめとする先鋭な学芸員を巻き込みながら、民間の任意団体として自由に活動していたMCPのダイナミックさや、商業ビルのイムズに1989年に開館した三菱地所が運営する先駆的なアートスペース、「アルティアム」の展覧会などに結びついていた。 山野真悟氏や宮本初音氏の独創的な視点と行動力、なみなみならぬ芸術への愛と貢献の成果とともに、福岡という地方都市の底力となっている芸術文化を今でも支えている町衆の文化力を感じざるをえない。

2004年から福岡市からの委託業務により、MCPは博多リバレインのギャラリーアトリエを運営するほか、地域再生を意図する恒久的パブリック・アート・プロジェクトを手がけ、天神芸術学校を主催している。地元の構造と意識をより活性化するために、MCPは堅実な活動へと向かっている。横浜トリエンナーレ2005でディレクターの川俣正氏とともに、キュレーターを務める山野氏の活躍にも期待したい。

(岡部あおみ)