イントロダクション
年が明けたばかりの那覇。前島アートセンターを2004年1月にはじめて訪れた。沖縄に親戚がたくさんいるという島袋道浩さんの個展の機会で、「自家製タコ壷でタコを捕る」他、いつもながら興味深い映像インスタレーションと、友人のフィリピンの映画監督キドラット・タヒミックさんの心にしみる映写会。久しぶりに那覇に来たかいがあった。沖縄通の島袋さんが農連市場で買ってきた香ばしい大型フライがふるまわれた和やかなオープニングだった。
たまたまNHKの取材で何度も沖縄に来ているディレクターの人と一緒になったので、前島アートセンターのことを話すと、すぐにぴんと来た。さすがマスコミ系の人は飲み屋街に詳しい。
前島アートセンターのことを伺うために、多忙な宮城潤氏の邪魔にならないよう、私は昼間に2度訪れ、オープニングは夕方早めに引き上げたので、残念ながら高砂ビルの本来のバー街の雰囲気まではつかめなかった。センターは疏水の近くで、海の香りも多少する。さびれたバー街というだけで、なんとなく気がひかれるのは、リノヴェーション流行りの21世紀のせいもある。
宮城氏の屈託のない話に引き込まれ、翌日また伺ったのだが、その間に新設される沖縄県美術館準備室の学芸員、翁長直樹さんと前田比呂也さんともお会いできた。彼らは長年、那覇でアートの振興のために尽力してきた。刺激的な美術館ができたら、那覇に行く楽しみがもうひとつ増える。
宮城さんのインタヴューで話題になっている前島アートセンター事務局長を嘱望されている新人は、芸術文化学科の小池舞さん。「私が行ってからぜひ来てください」と彼女は言っていたのだが、結局、正式赴任の前に行ってしまった。
それから沖縄づいて、さらに2回訪れる機会があったが、童話の本を竹富島に寄贈する目的だったり、台風で3日間も石垣島に幽閉されたり、いまだに舞さんの前島での晴れ姿を見ていない。前島アートセンターでの活躍は、刷新されたホームページなどでも、楽しそうな活動が伝わってきて、いつもホカホカする気持ちを頂いている。
NPO、しかも東京からもっとも遠い沖縄のできたばかりのスペースでの活動は、困難も多いだろうが、やりがいも山盛りある最先端の仕事だろう。いつかじっくり彼女の眼で見た「メイキング」の話も聞いてみたいと思っている。
そうこうしている内に、小池さんの代わりに、ムサビの芸術文化学科の後輩、岡田有美子さんが事務局をバトンタッチした。バイトをしながら、続けているという。沖縄のアーティストの応援をしっかりお願いしますね。
(岡部あおみ)