About Interviewee



●手羽イチロウ(てば いちろう)
ICHIRO TEBA
武蔵野美術大学 企画部 法人企画室 室長
1993年 武蔵野美術大学 彫刻学科卒
卒業後、武蔵野美術大学に入職。教務課、情報システム課、企画広報課を経て、現在企画部 法人企画室長で勤務中
2003年6月 「ムサビコム」スタート
2009年5月 「美大日記」スタート



ムサビ日記 -リアルな美大の日常を-
手羽イチロウ
武蔵野美術大学出版局 2007-07

About Interviewer



●クォン・ミョンウン(権・明殷)
MYEONG-EUN,KWON
1990年/大韓民国生まれ
2009年/武蔵野美術大学 芸術文化学科在籍中
東京ツアー大好きです

ムサビの男、ムサビを語る

「もっとムサビを愛せ!」


 

 ムサビ(=武蔵野美術大学、以下ムサビ)を受験した人なら誰でも知っている「ムサビコム」というサイトがある。名前には「ムサビ」とあるが、実はムサビの非公式サイトだ。ムサビ在学生と職員が「リアルな美大の日常」を描くブログ形式のサイトとして、20035人のメンバーでスタートした。今年に入って7年目を迎えている。長い時間を経てその規模は大きくなり、現在は保護者も参加し40人を超えるメンバーが日記を書き下ろしている。2007年には「ムサビ日記」という本を発刊、今年の5月からは大学の枠を超えて「美大日記」へと領域が広げられた。

 「ムサビコム」「美大日記」の管理者、そしてムサビの法人企画室長である手羽イチロウさん。このサイトはムサビの非公式サイトのため、ドメイン料やレンタルサーバ料などの全ての管理費を自分の財布から出していると言う。7年間「ムサビコム」を管理してきた感想は「ムサビの情報を受験生だけが知りたがってるんじゃない。在学生や保護者、卒業生もムサビのことを知りたがっていたんだ」とのこと。

 

「学校のことを色んな人が知りたがっているんだということが発見できたことが一番大きい成果だと思う。もともと受験生に対してスタートしたサイトだけど(ムサビ日記という本もそうだし)、実は在学生もムサビのことを知りたがっている、ということが分かってきた。そして、保護者も卒業生も、今のムサビの気風とか、どういう授業をやっているとか、単なる受験生のためのメディアじゃなくて、ムサビ、もっと言うと美大というものを知らせる良いメディアになる可能性を強く感じました。」

 

 


「美大はハチクロじゃない 」

本当の美大生の世界を知らせたい小さな願い。

7年間、しかも自分の財布からお金を出しながらまで、このサイトを運営している理由は何ですか?

「やっぱり美大生っていうと、誰もがベレー帽をかぶって、汚い格好をしているというイメージがあるよね。その偏見っていうか、単純に絵を描いてる人だけが美大生じゃない、誰もが持っているそういうイメージをなくしたい!と思った。皆美大生って言うと「ハチクロ(ハチミツとクローバー)」のような世界をイメージするけど、実は色んな人がいて、色んなことをやってるよね。本当の美大の良さを知らせたい、それだけの願いかな。」

 

 

ムサビの彫刻学科を卒業されていますが、学生時代のお話が聞かせてください。

2年生まで殆ど作品を作ってなかった。学校にもあんまり来なかったし、非常にダメな学生でした() 学校がすごくつまんなくて嫌だったのね。ずっとそんな感じで2年間出席だけ取って帰るような生活を送っていたんだけど、3年生になってからは、作品作りの面白さにようやく気がついて、3年からはほぼ毎日学校に来てたかな?当時は日曜日も制作できたから、入構禁止期間以外は毎日学校で作品を作ってた感じだね。

 卒業してから教務課、情報システム課、企画広報課を経て今の至るわけだけど、学校で学んで役に立ったということは、ファイン系の先生や学生さんの気持ちや作品に対する思いを何となく分かることかな()

 

「学生は、もっと学校を使うべきである」


学生時代に見てきた「ムサビ」と、職員の立場から見る「ムサビ」はどう違いますか?

 「ムサビって実はいい大学なんだということが、職員になってから分かってきた。学生さを見てると、あ~、なんでもっと大学のことを使わないのかな?とすごく思う。色んな大学のサービス、イベントがいっぱいあることに気がついていない。ムサビのサービスや情報を活用すれば、確かに学費は高いけど、結構元が取れる大学なんだよね。そして、タマビとか女子美など他の大学に色々と負けてる部分は少なからずあるんだけど、大きな部分、大学の総合力っていう言葉で見ると、ムサビは私立美大では一番の大学だと自信を持って言える。」

 

なるほど、学生はもっと大学を使うべきですよね?

 「とりあえずはムサビが好きじゃなくても構わないんだ。まずムサビに興味を持ってもらって、ムサビをどんどん活用するべきだと思う。これはムサビの教育理念にも繋がる話なんだけど、やっぱり大事なのは色んなことにアンテナを張って、積極的に吸収していくこと。人間として「人間力」を学ぶことができるのが美大、とりわけムサビなんだと思う。ムサビに興味を持って自分も頑張れば、どういう結果にいくかというのも見えてくるはずなんだ。」

 

ムサビの芸術祭が日本一の学園祭だったということ、知ってた?

来場者の数が?

 

「来場者数だとやっぱり早稲田大学さんとかが圧倒的だよね()。でも、実際自分たちでお店を作って、屋内・屋外関係なく学内中を使って展示をやる。そして、4千人規模の大学に4日間で34千人ぐらい来るのって、実はすごいことなんだよ。日本中の大学を回ってる『大学評論家』という肩書きの方が、ムサビの芸術祭を気に入ってくれて、毎年見に来てくれてます。他の大学は学園祭にアイドル呼んで、コンサートやらせて、模擬店でたこ焼き売ってそれで終わり。こんだけ学生さんが目を輝かせて自分の好きなことに打ち込んでいる大学っていうのは今では珍しいそうです。ムサビ生はこれが普通だと思ってるけど、そうじゃない。だから、ムサビであることを自信持ってほしい。」

 


「手羽イチロウのお客様は、ムサビです」

手羽さんにとって「お客様」は何だと思いますか?

「大学職員の模範解答であれば、お客様は学生さんだったり、保護者だったり、卒業生だろうけど、自分のお客さまはムサビだと思ってる。ムサビに興味を持ってる人を増やすために、学生さんや保護者に対して何ができるか考えている。そのことに最近気がつきました。」

 

学生さんによくすると、ムサビがよくなるからですよね?

 

「お客様とは何か?アウトプットとしては在学生や保護者なんだけど、もっと本質的なことを考えると自分にとってはムサビ。

ケネディ大統領の就任演説で「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国に何をできるかを考えなさい。」という有名なセリフがあるのね。自分が大学に何を貢献できるか。その答えがムサビ日記や美大日記という活動になっただけ。そしてこれは学生さんにも当てはまるんだよ。ムサビのためにという狭い意味だけではなく」

 

「あなたが社会に何ができるか」「世界のために何を貢献できるか」という話にまでも行けますよね?

 

「うんうん、そういうことだよ」

 

ムサビがよくなるために、ムサビの学生へ一言お願いします。

 

 「たくさんの視野を持ってほしい。どうしても高校・受験・学生時代って狭い範囲しか見えないもの。その狭い視野から生まれる面白さも確かにあるんだけど、せっかくムサビという変な(笑)大学に入ったんだから、立体的に物事を感じて、『なるほど。そういう見方もあるんだ』『そういう考えの人もいるんだな』ってことを知ってほしい。」

 

なんで美大って存在するか考えてみたことある?

正直…ないと思います。

 

「美大の存在価値ってなんだろう。私は世の中を幸せにするために存在するのだと思う。作家を育てるとか、絵がうまい人を作るためとかじゃなくて、世の中を幸せにできる人を育てるために、美大は存在するんだと思う。」

ムサビのOB生、職員、ムサビコムの運営者としての手羽さんの考え方を覗いてみることができた貴重な時間でした。手羽さんがどんなに母校のことを、ムサビのことを愛しているかが伝わってきました。手羽さんのような方がいるからこそ、ムサビはとても素晴らしい学校であり続けるのだと考えます。 このインタビューを通して、自分の1年間の生活を振り返ってみることができました。自分が意外と学校についてあまり知っていない、そして活用していないということを気づきました。もっとムサビを愛することのできる学生になっていきたいと思っています。

 

取材・場所/2009年11月13日 武蔵野美術大学 法人企画室応接室にて

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