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若沖の庭
飯田麻衣子
アーネスト・フェノロサが日本画の特徴としてあげたことが5点あります。
・写真のような写実を追わない。
・陰影が無い。
・鉤勒(こうろく、輪郭線)がある。
・色調が濃厚でない。
・表現が簡潔である。
これらの特徴というのは抽象化にあるのではないでしょうか。
この日本画の持つ抽象化というものに、アニメーションの演出方法に近いものを感じました。現実のモデルの情報量の変化によって抽象化され、アニメーションで再構築が行われています。
絵画である日本画での抽象と映像であるアニメーションでの抽象。
物事の再構築からイメージの生成が出来るのならば、とても興味深いものがあります。
この両者間には必然的に鑑賞者の時間的拘束の有無が発生します。映像作品は最初から最後まで見なければ、その一作品を観たという事実にはなりません。その観ている間の時間的拘束は自ずと発生することになります。
比べて絵画は観ている時間はとても自由です。通りすがりに見ようと、立ち止まって何分何時間見つめようとそれは個人差であり、観たという事実には変わりありません。
この時間の問題というのは「演出」の方法に深く関わってくるように思います。
一般的に絵画は静止したままの空間芸術であり、映像は動きのある時間芸術とされています。しかし、科学技術の進歩に伴い、その違いを大きく分けてきた暗い映画館と明るいギャラリーの区別が絶対的なものではなくなりつつあるのではないでしょうか。ブラウン管でしか見られなかった映像は液晶画面によってより薄く、明るい場所でも鮮明に、と変わってきました。
絵画に動きが介在し、映像に絵画と同質のイメージが立ち現れるような、時間芸術と空間芸術とが融合したような。そんな表現はできないものかと模索し、日本画のアニメーション化を試みました。伊藤若冲の「南天雄鶏図」。写実と想像をたくみに融合させた「奇想の画家」として知られる彼の演出方法はまさに抽象化にあるように感じます。
単に絵の精密な複製を映像で見るといったことに終わるものではなく、「南天雄鶏図」の再演出ということに重きを置き、制作しました。