2023年度作品

まちに種をまくこと

武蔵野美術大学 芸術文化学科 佐々木ゼミ

Sasaki Seminar, Department of Arts Policy and Management,
Musashino Art University

私たちは「たね」をまく。

蒔いたことに気がついた人は、

もしかしたら、そこに水をあげてくれるかもしれない。

もしくは、芽が出たり、枯れてしまった後に、

やっとその存在に気がつく人もいるだろう。

ゆっくりとした時間が流れる⻄荻窪の日常において、

「たね」のある風景へと模様替えを試み、束の間の空間をつくり出す。

展示日時:2023.11.3 [Fri.]-11.23 [Thu.]

展示場所:都立善福寺公園上池脇、西荻北四丁目エリアに点在展示

時のたね

善福寺公園 No. y2023−01

この木枠梱包は外側と内側が逆転している。本来は外側にあるべき木枠が内側に入っているのだ。ということは、中身も逆転している。私たちが今木枠梱包を見つめているこの空間が梱包されている。クレートに「梱包されながら」その場にいる人たちとコミュニケーションをとって欲しいと思い、制作するに至った。灯りを囲むようにしてこの作品に腰掛けて、ゆっくりと会話を楽しんだり、緩やかな時の流れを感じてほしい。

すきまのたね

ミンストレー西荻 No. y2023−02

ミンストレー西荻の一階には、以前寿司屋が営まれていた。しかし、今や居抜きのまま残され、寂れた雰囲気を醸し出している。
この場所は日常の背景と化し、道ゆく人には見えていない。それは、西荻窪に溢れるすきまと一緒だった。
筒を覗いた先に何が見えるのか、四角く縁取られた世界は何なのか。
今まで見えていなかったすきまを意識してしまうことで、どのように見える世界が変わるのだろうか。
すきまのたねを、ここに植える。

記憶のたね

チェリーハイム No. y2023−03

セメントの上に不思議な花を開花させてみたい。なぜなら、このような花が芸術と似ていると思うからである。
芸術は又、名知らず花は人へどのように記憶されるのか。
ただ忘れ去られていく存在かもしれないし、それさえも 覚えてすらいないかもしれない。

しかし、気がついたら、いつの間にか心の片隅に植えられた種が新しい可能性を抱くようになる。やがて発芽して花が咲くように我々の記憶にその瞬間をより特別になるだろう。

本作「記憶の種」は西荻窪での出会いをより長く記憶できるため「たね」を蒔く作品である。見つけて鑑賞し、その一部を持つ一連の過程で、鑑賞者に忘れられない経験だったと記憶されることを願う作品だ。

小さな幸せのたね

Boîteぼわっと No. y2023−04

多様な緑が息づく西荻窪の町に、花の姿をあまり見ないのはなぜだろう。普段何気なく通る場所に蕾があったら、花が咲いていたら何を思うのだろう。そんな小さな問いが始まりだった。
白いベンチの上、日常のほんの片隅で咲き誇る花畑。「花を愛でる」行為自体を「小さな幸せを拾う」感覚に準え、鑑賞者自身の手で作品に触れることで感覚的共有を行う。
糸で表現した花弁は、そこに住む人たちによって枚数を重ね、いつか綺麗に開くだろう。そして新たなたねを落とし、人々の心に「小さな幸せ」を咲かせていく。
「あなたの小さな幸せを、糸をかけ咲かせてください」

有機のたね

Hinodeya、Boîteぼわっと、ほっぺるランド西荻窪 ※展示会期中移動 No.y2023−05

この交差点の美しさ、それは人々の生活に根ざした造形からくる有機性にある。この交差点の造形はバスがスムーズに通過しやすいように、お店がより人々にとって開かれたものであるようになど、この交差点からはさまざまな人々の生活の中の望みが感じ取れる。そのような住人に寄り添うこの交差点は西荻の中で一際輝き続けている。またその有機性は曲線によってあらゆる人とものを行き来させながら街を繋ぐ環状線のようである。今回、鑑賞者の方には私の作品に寄り掛かかってもらうことにより、まるで環状線を走る電車に乗っているような遠心力を感じてもらいもう一度この交差点の有機性の素晴らしさに気づいていただきたい。

すきまの家のたね

たまめし食堂 No. y2023−06

街の隙間に「たね」を撒く謎の生命体。「たね」からは家のようなものが生え、次第に隙間を埋め尽くして行く。「たね」は根付いた土地の要素を拾い、家の表面や形状に影響を与える。根付いた場所の近くから徐々に広範囲へと要素を収集するため混沌とした家が出来上がる。謎の生命体は周囲の要素を取り込み、その環境に馴染もうとするが扉や窓の概念を理解していない為、それらは本来の機能を発揮できていないようだ。

視点のたね

大洋ハイツ No. y2023-07

この写真は上から見下ろして撮影したものである。多くの場合、人々の視点は立つ場所に左右されていると考える。その視点を写真によって操作することで、地面に立っているにもかかわらず高い場所から景色を見ているような不思議な感覚を醸し出してみた。それがこの街において、普段目を向けないところを観る契機や、別の見方に働くことになれば幸いである。

情緒のたね

旅の本屋のまど、物豆奇の間 No. y2023-08

⻄荻窪の街の隅々には情緒が溢れている。情緒は一見微弱で目立たないかもしれませんが、街の小さなディテールから、人々が懸命に生きていることがわかる。街路に多くの凸面鏡が設置されていて、人々の安全のためだけでなく、街の情緒も反射している。鏡は日常生活において最も直観的なツールで、私たちは反射を通じて自分自身を知ることができる。同時に、鏡は私たち自身と環境との相互作用をはっきりと見ることを可能にし、反応してくれるものにもなる。人は自分自身と対話する必要があり、植物は自分自身と対話する必要があり、建築も自分自身と対話する必要があると思う。それで、自分を理解して、愛すること。

生活のたね

かきぞえ食堂 No. y2023-09

作品からコードを伝いに上の方へ注目して見て欲しい。電線が屋根を横断して伸びていることに気づいただろうか。この場所の電線は複数の建物を越えて繋がっていたり、建物の隙間で集約されていたりする。商店が密集している西荻窪では、建物と電線の特徴的な関係性を発見できる場所がしばしばある。この場所に意図的に追加した配線と、元々存在する配線が相互的に関係した時、場所全体の印象にどのように影響を与えるのだろうか。

感情のたね

ルビーアート No. y2023-10 

西荻窪は長い歴史の中で醸成された感情が沢山溢れる町である。私はこの展示を通して、温かな人情に触れることが出来た。そして、様々な経験を積むことが出来た。このキノコの形をしたオブジェクトは、トロールの森を通して成長しようとしている私自身だ。

それもたね

西荻窪界隈 ※展示会期中移動 No. y2023-11

誰も拾わない人々の小さな営みの情報や現象を統計し考察する。その中で意外な発見や普遍的なもの、また西荻窪固有の振る舞いを見つける。方法としてはベニヤの板を背負い西荻窪の町を闊歩する。

11月4日(土): 13時~16時 善福寺公園内、ホーム周辺、伏見通り
11月6日(月): 12時~13時 物豆奇、伏見通り
11月9日(木) :14時~15時 善福寺ボート、
11月13日(月):20時~21時 ホーム周辺、伏見通り
11月16日(木):14時~15時 物豆奇、伏見通り
11月20日(月):20時~21時 ホーム周辺、伏見通り

特別協力:
Boîteぼわっと、Hinodeya、ほっぺるランド西荻窪、大洋興業株式会社、たまめし食堂、旅の本屋のまど、物豆奇、かきぞえ食堂

主催:
トロールの森実行委員会

後援:
東京都東部公園緑地事務所、杉並区、杉並区教育委員会

協力:
都立善福寺公園、杉並区立桃四コミュニティスクール、JR西荻窪駅、Daily Table KINOKUNIYA、西荻窪駅店、遊工房アートスペース、関東バス株式会社、ゆうゆう善福寺館、中央線あるあるプロジェクト

助成:
企業メセナ協議会 助成認定活動
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
杉並区文化芸術活動助成事業