OPEN CAMPUS 2017武蔵野美術大学 旅するムサビプロジェクトカルチャーパワー
  • [教材研究]

芸術文化学科での学びの基礎となる「聞く」「話す」「書く」「読む」の実践例として、本学の講師である河原啓子先生と<インタビュー企画>を考案し、教材として制作しました。


手の思考/河原啓子×是枝開

メタ認知から見える地平

やはり、留学は貴重な経験になったのでしょうね。

 海外に出ると、異文化に触れたり、言葉の壁があって十分に気持ちを伝えられないもどかしさがあったり、日本にいたときとは異なる視点を持つことができました。簡単にいうと、幼児的なシンプルな思考を取り戻すといった感じでした。知らない対象に遭遇してびっくりしたり、シンプルな言語表現で事態を処理したりといった思考です。

アーティスト、キュレーター、抽象、具象、部分、全体…。さまざまな立ち位置から、見えてくるものが、これからもたくさんありそうですね。

 大学では、人間同士、という感覚で、若い人たちと接していますね。自分が若かった頃を思い出しながら…。若いときは、悩んだし、迷ったりしたわけです。そんな自分と重ね合わせながら、語り合います。学生の作った作品の良し悪しは即座にはあまり言いませんね。その人が経験によって何かを見出すことが大切だと思っています。時には、自分も迷っているようなことをぶつけることもありますよ。学生と自分との間にきっと、答えはあるだろうなって思うんです。

ここでも、客観視、さまざまな立ち位置の視点ですね。

 学生が、造形でも理論でも、それ以外の何でもいいんですが、自分の世界を見つけてくれればいいなと思います。自分自身の足で立つための。あくまでも僕がやっていることは、彼らが自分で自分を探してゆくためのキッカケでしかない。僕が答えを持っているわけではなくて、自分自身の何かのつかみ方を学んで社会に出て欲しいですね。

2017年8月7日・9月12日 2号館アトリエにて


インタビュー後記

「絵を描くことは本当に難しい。いつもいつも、それを思い知らされる。僕の場合、そのためにのみ絵を描いているようなものだ。恐らくはこの先も、さしたる進歩はないだろう。それでも漠然とではあるが、自分が求める画面というものが、少しずつ見えてきたような気がする。」2007年に、このような見解をインタビュイーは示しています。多彩な経歴と真摯な制作への取り組が相俟った、豊かなハーモニーが聞こえてくるような印象が残るインタビューでした。


Profile

インタビュイー

是枝開
Kore-eda Hiraku

コロンビア大学大学院芸術学部美術学科絵画・彫刻専攻終了。1991~99年セゾン美術館学芸員。1999~2003年セゾン現代美術館学芸員。2003~14年神奈川県立近代美術館主任学芸員。2014年~武蔵野美術大学芸術文化学科教授。
http://profile.musabi.ac.jp/page/KORE-EDA_Hiraku.html

インタビュアー

河原啓子
Kawahara Keiko

海外・国内での記著経験(“The Garden City Times [Singapore]”、『新美術新聞』)を踏まえ、取材、調査、分析をしながら研究活動。文化施設における、アートマネジメント研究。第三期東京都生涯学習審議会委員、練馬区行政評価委員ほか、委員歴任。第二期NHKアーカイブス・トライアル研究員。社会人教育として本学通信教育課程、荒川区生涯学習講座、(公財)音楽文化創造ほか講師。学術博士。著書、論文多数。
http://apm.musabi.ac.jp/about/faculty/lec/