映像研究大作戦
地元の小中学生達と映像の制作をとおしてメディアの表現特性を研究する活動です。 イメージは、感じることはできても、なかなか言葉にはできません。その個人的な<感性の領域>に、 まず気がつくことが大切です。映像制作の体験は、近年注目されている<メディアリテラシー>につながることになるのです。 地域の教育機関とコラボレートしたこのような活動は、美術大学としても意義のあることと考えています。 芸術文化学科:米徳信一
ぼくらはみんな、いきている
毎年恒例、小学生を迎えて行なわれる映像研究大作戦も3回目になりました。今回の企画は『ぼくらはみんな、いきている』と題して、被写体を生活の中にある「モノ」にしました。 前年度までのピクシレーション(*1)とは変わって、普段見ている「モノ」が動き出したら、どんなイメージができるでしょう。
中学生スタッフデビュー。
一日目はゼミ学生が作ったサンプル作品の上映から始まり、続いて行われたデモンストレーションでは、大作戦初の中学生スタッフ(*2)が見事な手際でアニメーション制作の実演をしてくれました。
これにより参加者も今回の研究内容がつかめたと思います。
まずは動かす。それから考える?
用意された「モノ」の中から一つを選び、さっそく個人制作のスタートとなりました。「モノ」を少し動かしては一枚撮影する。この地道な繰り返しの作業は、
動かす人とカメラのシャッターを押す人が互いに協力しながら行われました。
皆考えこむことはなく、アイデアを思いついたらどんどん動かしていくことを楽しんでいるようでした。輪になって踊る歯間ブラシや、
増殖するつまようじ、自分でたたまれるハンカチといった、たった数秒のアニメーションを見て、彼らはどんな印象を持ったでしょう。
音でイメージをつくろう。
撮影が済んだら、次は音録りです。音を出す物は何でもOK。録音スタジオにある楽器や、そうでない物も手当り次第に叩いたり、こすったりして音を探し、
今作ったばかりの自分のアニメーションにあわせて音を入れていきます。映像は音が入ると全く別のイメージになる面白いメディアです。
この段階であれこれ試すことを期待していたのですが、以外とあっさり作業終了してしまいました。しかし、完成した映像に映る「モノ」たちは、不思議なキャラクターを備えているように見えます。
一発勝負。それが小学生。
この大作戦では、作業の途中で出てくる<思いつき>をどんどん取り入れることがポイントです。
そういう意味では小学生の仕事は<手が速い>ということはとても良いのですが、<もう一度作り直す>ということは、彼らの辞書には存在しません。
とにかく早く完成させて見たいのです。勢いに乗って次々に新作を作り出す小学生も出てきたりして、私たちは計画を変更せざるをえませんでした。
たった一コマがあるかないか、別の音ならどうなるか、それが作品の印象と深く関係しているのですが・・・これは次回の課題ですね。
二日目はグループで相談しながら一つのアニメーションを制作してもらいました。ここではゼミ生(橋本・永井・高橋)もグループの一員として参加。 3グループそれぞれが特徴ある制作過程を踏んでいくことになりました。
セリフからできるイメージ。
橋本班:最初に台詞を決めて、その長さに基づいて各シーンの秒数を決め、それに必要なコマ数を計算してから撮り始めました。ジャングルを舞台にしたシートを作り、
それを動かすことで風景が変わるように工夫もしました。ほかの班が、できた映像に音を入れるやり方をしていたのに対し、私たちの班は台詞にあったイメージを
映像にしたのが特徴的だったと思います。作ろうとするイメージに近づくために、計画的に動きを考えたいったことが、とても面白かったと思います。
イメージを演出する。
永井班:私たちの班では、セット作りや照明にこった撮影を行いました。夜から朝へと時間の変化をつくったり、カメラの動きを取り入れることで演出効果を高めました。
また、アクリル板を使って空中にモノが飛ぶという映像技術を使用したりするなど、とても細かな所にまで気を使って作り上げました。撮影に集中するあまり時間
オーバーになってしまい、音の作業に時間をかけられませんでしたが、なかなかの大作に仕上がったと思います。
音のイメージを探す。
高橋班:私たちの班が一工夫したのは音入れです。ストーリーに大きく関わるものとしてミニ扇風機があります。最初はこの扇風機の音をそのまま録音しようとしたのですが、
マイクを通すと実際に耳で聞く音と違い、思っていた音が録れません。そこで、羽に指を当てながらまわすことで、よりイメージに近い扇風機の音を再現できました。
他にもクリップが動く感じを出すために、それらしい音を探してタイミング良く鳴らすのが面白かったですね。
キャラクターをつくるということ。
私たちは今回、『動きと音でキャラを作ろう』というテーマを提供していました。動きはもちろん、音によってもキャラクターは形成されます。台詞などは良い例で、
どんな言葉をどんな口調で発するのか。というところをおさえるだけでも、個々のキャラクターを作っていくことが出来ます。動きの面では多少なりとも実践できましたが、
音の変化で映像のイメージを変えるということは、伝えきれなかった部分が多々ありました。
DVDで追加研究レポートします。
そこで、毎回参加者にプレゼントするDVD作品集に、初日に見せたサンプル映像の音声別バージョンを入れることにしました。 映像が同じでも、音を変化させることにより、「モノ」の性格や役割が全く異なったものに変化していくことに彼らは気がついてくれたでしょうか。動きと音の研究はこれからもまだまだ続きます。 (テキスト:米徳信一)
*1 ピクシレーション
人間を実写でコマ撮りするアニメーション技法。ストップモーションで撮影する。通常のカメラ撮影では出来ない、コミカルな離れ業的な動作が可能になる。代表的な作品はノーラン・マクラーレンの「隣人」など。
*2 中学生スタッフ
スタッフとして参加を希望した大抜君は、初回からの大作戦リピーターです。制作の実演はもとより、作業データのとりまとめなど率先して動いてくれました。また小学校のOBということもあって、
参加者の面倒も良くみてくれました。彼の影響か、今年の参加者には来年のスタッフ希望者もいるようです。感謝。