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ほやほやメッセージ  バンフから島袋道浩
バンフにやって来て、あっという間に1ヶ月が過ぎました。

バンフは山に囲まれた小さな観光の町、僕が滞在しているバンフセンターは町から歩いて15分ぐらいのところ、トンネルマウンテンという小さな山のふもとにあります。
(写真のまん中がトンネルマウンテン。そのすぐふもとにパラパラと見える建物群がバンフセンター。)

4月の21日に着いて以来、思ったよりもずっと寒く、つい1週間ぐらい前まで雪が降ることもしばしばでした。気温は5月だというのに0度になることもあって、春をすっかりイメージして屋外でいろんなことをやろうと思って来た僕はちょっと困っていました。海はまあまあ知っているけれど、山の変わりやすく寒い天候には慣れていなかったのでよい勉強になりました。屋外で作品を製作し発表するアーティストは漁師や農夫の人達のように天候を知り、天候と仲良くならないといけないなあ、と思っています。

たまの晴れた日をねらって凧上げをしたりしています。(写真)今度、夏の終わりにオーストリアのアルプスでの個展で凧を使ったプロジェクトをやろうと計画しているので、そのための練習とリサーチです。ここロッキー山脈はアルプスに環境が似ているのでちょうどよいです。

あとよく山歩きをしています。雪の斜面をスニーカーで歩くのがとてもうまくなりました。山にはクリスマスツリーが本当に数えきれないほどあります。クリスマスツリー工場のような感じ。見渡す限りのクリスマスツリー。他の種類の木がほとんど生えていないので、なんか人工的な感じがします。多分ここには世界中の人達の分のクリスマスツリーがあります。
動物もたくさんいてマグパイという黒と白の燕を大きくしたような鳥はきれいな鳥です。この鳥は韓国でも中国でもみかけた気がするけれど、日本では見たことがない。もしかすると日本でも山の中へ行くといるのかな。もしもパンダが空を飛び初め、1万年ぐらいたったらこれぐらい痩せて小さくなるのかな、という感じの色の鳥。
鹿も奈良ほどではないですが、よく見かけます。チョコボールみたいな鹿の糞は本当にそこら中、バンフセンターの中でも見かけ、踏まないようにするのが大変です。
鹿の仲間にも普通の鹿とエルク、ムースもいるそうですが、僕はまだムースは見ていません。なんでもとても大きいらしいです。エルクよりも鹿よりもずっと。写真で見ると顔はラクダに似ています。
エルクに森の中でばったり出会いましたが、エルクですらその大牛のような大きさにびっくりしました。多分、自然の中で僕が遭遇した野生動物の最大サイズです。ふてぶてしい感じがしました。腰骨の位置、骨格が全然鹿とは違うんです。僕の顔を見てもまったく動じません。鹿とはまったく違います。
あとリスもここには2種類いて、1種類はよくアメリカやヨーロッパでも見かけるような木の上を走るタイプなのですが、もう1種類はなんと地面に穴を掘って地中に暮らしている!このモグラみたいなリスにかなり興味を持っています。よく地面に開いた穴の横に立って遠くを見ています。木の上のリスよりちょっと太め。前述のマグパイもこのモグラリスのことが気になるらしく、時々ちょっかいをかけているのを見ますが、モグラリスはあまり相手にしません。でもモグラリスは木の上のリスよりは人間に対する警戒心が少ないようで、かなり近くまで寄れます。
あと、「冬眠から覚めた熊に注意!」の通達がきたりします。熊もちょっと見てみたいと思っています。

部屋から山を眺めながら、「そうだ、山を作ってみよう!」と思いました。ひとりの人間が1日真剣に地面を掘って山を作ったらどれぐらいの山ができるものかな?と思い、穴掘りも山作りももう当分やっていないので、ひさしぶりに1日、山でも作ってみよう!とバンフセンターの人に軽く相談してみたらこれが大変。
なんでもバンフセンターを初めバンフの町自体が国立公園に属しているので屋外に作品を設置したり、建物を建てたり、ちょっと地面を掘り返すだけでも許可がいるそうなのです。川のほとりになんにもない、いい草原をみつけているのですが。
いろいろ書類を提出したり面倒そうなのですが、国立公園のシステムを勉強するため担当のキュレイタ−の人と一緒に申請してみよう、と今まさにそれにとりかかっているところです。
僕としてはやっと雪も溶けはじめ、春の軽い体操みたいな気持ちだったのですが。

バンフセンターは美術のレジデンスだけでなく音楽や演劇のレジデンス、あと企業の人達の研修施設みたいなのもかねているので、施設の中にプールやトレーニングジム、体育館まであります。プールつきのアーティスト・レジデンスは初めて!と喜んで毎日のように泳いでいます。僕のようなタイプの作家は体が資本なので体作りにとてもよいです。
あと壁についたチューインガムみたいなのをてがかりに登っていくロッククライミングの施設まであり、これも初めて挑戦してみました。命綱をつけてなんとかてっぺんまで登ったものの体がガクガク。子供の時は毎日のように新しいことを習ったり、挑戦したりしていたなあ、と懐かしい筋肉痛でした。

ここまで書いたところで、ちょっと外に出たらなんと雪が降っていました。結構本格的な雪。頭に雪が積もりました。もうさすがに雪は降らないだろうと思っていたのに。もう5月も末だというのに。やっぱり山の天候はまだまだ分かりかねます。明日はまた雪が積もるかもしれません。
島袋道浩 SHIMABUKU アーティスト

略歴

1969 神戸に生まれる
1990 大阪芸術大学付属大阪美術専門学校卒業
1991 サンフランシスコ美術大学のインディペンダント・スタディー・プログラムによりヨーロッパ11カ国を旅行、作品制作
1992 サンフランシスコ美術大学卒業
1993 野村誠と路上バンド(仮称)を開始
1997 アーティスト・イン・レジデンス・プログラム「ARCUS'97」に参加、113日間茨城に滞在、制作 (カタログ)
1998 フランス政府給費留学芸術家としてアトリエ・アルチスト・ド・ラ・ヴィラ・ド・マルセイユに2カ月間滞在
1999 ポーラ助成により、キャパセテ・プロジェクト、リオ・デ・ジャネイロに滞在
2001 横浜在住。日本、ブラジル、フランス、オランダ、アメリカなどの海辺の町を中心に旅行、滞在制作中
2002 カナダのバンフ、クリエイティヴ・レジデンシーメUp Front and Personalモ(プライヴェートな行為とアート)参加

主な個展

1993 「コンニチハ」、名古屋市美術館、名古屋(リーフレット)
1994 「アメリカ」、広島市現代美術館、広島
1996 「シマブクロ・シマフクロウ」、オオタファインアーツ、東京
1998 「鹿をさがして」、オオタファインアーツ、東京 (アーティスト・ブック)
1999 「165mの人魚と旅をしている」、ダジバオ、モントリオール (アーティスト・ブック)
「南半球のクリスマス」、エール・ド・パリ、パリ
2001 「帰ってきたタコ」、神戸アートビレッジセンター/須磨離宮公園、神戸(アーティ
   スト・ブック)
「輪ゴムをくぐり抜ける」、エール・ド・パリ、パリ


主なグループ展

1995《フェイスさん》、「ジョン・ケージのローリーホーリーオーバーサーカス」、
   水戸芸術館現代美術ギャラリー、水戸(カタログ)
   《思春期》、「デュシャンからデュシャンへ 第2回臨江閣プロジェクト」、北関東造
   形美術館、群馬
1996《南半球》、「Displacement 第31回今日の作家展」、横浜市民ギャラリー、横浜(カ
   タログ)
   《未来の思い出》、「音のアート 岩倉市シンボルロード(パブリック・アート)
   愛知県岩倉市(リーフレット)
   《ドミニク》、「サバイバル・ツール」、佐倉市立美術館、千葉(カタログ)
   《旅行する喫茶店の物語》、「南からの潮流」、鹿児島県加世田市吹上浜
《旅行する喫茶店の物語》、「緊急の居所」、静岡県掛川市くるみ幼稚園、静岡
1998《165mの人魚と旅をしている》、「第11回シドニー・ビエンナーレ―エヴリディ」、
シドニー(カタログ)
   《チューリッヒの浜辺》、「テーブル」、エール・ド・パリ、パリ
「どないやねん!」、フランス国立高等美術学校美術館、パリ(カタログ)
   《165mの人魚と旅をしている》、「新古今」、ミュージアム・シティー、福岡(カタ
ログ)
1999 「And / Or」、グラーツ・クンストフェライン、グラーツ、オーストリア
   《海は道》、「スペース」、ヴィッテ・デ・ウィット現代美術センター、ロッテルダム
   《165mの人魚と旅をしている》「イヴレス(酩酊)」、アトリエ・アルチスト・ド・
ラ・ヴィラ・ド・マルセイユ、マルセイユ
   《タコがイヌとクマと一緒に誰かを待っている》、「Extra et Ordinaire」、プランタ
ン・ド・カオール、フランス(カタログ)
   《夜明けの鳥と》、「エンプティ・ガーデン」、ワタリウム美術館、東京
2000 《165mの人魚と旅をしている》、「エリジアン・フィールド」、ポンピドゥー・セン
ター、パリ(カタログ)
   《鹿をさがして》、「カウンター・フォトグラフィー」、モスクワ芸術センター、モス
クワ(国際巡回展)(カタログ)
   《キュウリの旅》、「アズ・イット・イズ」、アイコン・ギャラリー、バーミンガム、
   イギリス(カタログ)
   《夜明けの鳥と》、「トランスフォーマー」、マルティン・ヤンダ現代アートスペース、
ウィーン
「ドゥ・イット・デジタル」(ウェブサイト・プロジェクト)、カッセル、ドイツ
《そしてタコに東京観光を贈ることにした》、「ギフト・オブ・ホープ」、東京都現
代美術館、東京(カタログ)
2001 《タコとタヌキー島袋野村芸術研究基金》(野村誠とのコラボレーション)、「出会
い」、東京オペラシティアートギャラリー(カタログ)
   《二度起こることー象の話し》「ことのはじまり」、北九州市立美術館(カタログ)
「生きろ」、クレーラー・ミューラー美術館、オテルロ、オランダ(カタログ)
    「旅人の話し」(ウェブサイト・プロジェクト)、イニヴァ、ロンドン
   《日本の船旅》「メガ・ウェーブ」横浜トリエンナーレ(カタログ)
   「ファクツ・オブ・ライフ」ヘイワード・ギャラリー、ロンドン(カタログ)

主なプロジェクト

1991 《タコ街道プロジェクト》(高嶺格と甲子園浜から舞鶴までタコを連れて歩く)、西
宮、兵庫−舞鶴、京都
1992 《贈り物》、岩田山自然遊園地、京都
1993 《ゴリラ》、金沢サニーランド、金沢
1994 《南半球のクリスマス》、須磨、神戸
    《南半球のクリスマス》、広島あ・ぽっくFM放送局、広島
1995 「ミュージック・パワー・トゥ・神戸」(電話ライブ/共演:野村誠)、ヘスリント
ン教会、ヨーク、イギリス/神戸
1996 《シマブクロ・シマフクロウ》(鹿児島から北海道までヒッチハイクでシマフクロウ
に会いに行く)
1999 《山と谷は出会わないが、私達は出会う》(リサーチ)、オランダ - 九州
2002 《月のうさぎ》(ウェブサイト・プロジェクト)、ディア・センター・フォー・ザ・
アーツ、ニューヨーク