OPEN CAMPUS 2016武蔵野美術大学 旅するムサビプロジェクトカルチャーパワー

論文「ラナはアメリカに帰る―ヒップ資本主義と現代の自然志向」
高島ゼミ 清藤千秋さん

本稿は、アメリカにおける反逆の精神文化「ヒップ」の過去と現在、未来について、ひいては「ヒップ」を飲み込んだ資本主義と、現代の表象文化全般について、アメリカのミュージシャン、ラナ・デル・レイを通じて述べたものである。
 マーク・トゥエインの『ハックルベリー・フィンの冒険』と、亀井俊介氏の著作『ハックルベリー・フィンのアメリカ―自由はどこにあるか』をもとに、筆者は、「『ヒップ』とはある個人が二つの世界の境界線を越えた時に起こる揺れのことであり、境界線を越えた個人のことを『ヒップスター』と呼ぶ」と定義づけた。もともとは、ヨーロッパからやってきた文明人たちが、無垢な自然の美しさに心打たれ、自然志向と文明志向の両方を持つようになったという、アメリカ人独特の精神性を踏まえた定義である。
ハックルベリー・フィンも、エルヴィス・プレスリーも、エミネムも、みなヒップスターである。この「ヒップ」のエッセンスは時とともに変化し、現在では創造産業を加速させる高度資本主義と一体になり、「ヒップ資本主義」と呼ばれるに至っている。
 ラナ・デル・レイ(1985年–)はそんな「ヒップ資本主義」を代表するミュージシャンだ。古き良き時代の女優風のルックスに物悲しげな雰囲気をまとい、メロウな歌声でラヴ・ソングを歌う。自身のミュージックアルバムに、ホイットマン、ギンズバーグ、エルヴィス・プレスリーを登場させ、『イージー・ライダー』や『ブルー・ベルベッド』へのオマージュをふんだんに取り入れる彼女は、燃える魂を持った反逆者、現代のヒップスターなのだろうか。本稿では、ラナの特異な表現を取り上げ、「ヒップ資本主義」の特質とからめて考察を進める。