Cultre Power
若者の声 政府への手紙 / Voice of the young letters to government









Copyright © Aomi Okabe and all the Participants
© Musashino Art University, Department of Arts Policy and Management
ALL RIGHTS RESERVED.
©岡部あおみ & インタヴュー参加者
©武蔵野美術大学芸術文化学科
掲載情報の無断使用、転載を禁止致します。

「美術館でのアーティストの公開制作やワークショップなどを評価する支援事業の実現を!」 2010年 竹内那美(22歳)

 文化庁は平成22年度より「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」に支援金を支給する制度を導入した。その対象となるのは「劇場・音楽堂等の文化施設が中心となり、地域住民や芸術関係者等とともに取り組む、特色あるすぐれた舞台芸術に関する公演、教育普及事業、人材育成事業等」である。平成22年度7月に採択が決定した事業には、例えば、東京芸術劇場を拠点とした「フェスティバル/トーキョー」(フェスティバル/トーキョー実行委員会)のようにテーマを設定した舞台芸術フェスティバルなどが選ばれた。この支援制度の注目すべき点は、「芸術関係者」という文化施設のある地域に限定されない人材と地域住民との共同事業を支援の対象とした点にあるだろう。
 この支援制度が導入される1年前に美術館や歴史博物館に対する文化庁からの支援「美術館・歴史博物館活動基盤整備支援事業」が開始された。この事業は「芸術拠点形成事業」(平成14〜18年度は展覧会事業等支援、平成19〜20年度はミュージアムタウン構想の推進を各々中心に進められた)が発展した事業と捉えられるが、先の劇場・音楽堂に対する支援事業と比較すると、事業の方向性が「地域との関係の強化」と「国際的な交流の拡大」の2点に向けられ、その事業に関わる人材は地域の人々や地域コミュニティーのように地域住民に限定されている傾向がある。つまり、おおまかにまとめてしまうと「館 対 地域住民(コミュニティー)」、「館 対 海外の館」という関係の強化を推進する事業が支援されるのである。こうした構図の中に「芸術関係者」—表現者、アーティストを自認し、もしくはそう呼ばれる地域外の人たち—は現状では含まれていないのである。
 そもそも、美術館と歴史博物館を同一のライン上で比較し、支援対象を選定することに疑問を覚えるが、ここで美術館に限って言及すれば、美術館が今生きている表現者、アーティスト達の活動の場となりうる(なりえている)ことは、近年の美術館でアーティストを招いて地域住民との共同作業を行うワークショップやプログラムが積極的に開催されている事例を見れば明らかである。例えば、金沢21世紀美術館でアーティストの日比野克彦による「「ホーム→アンド←アウェー」方式」(2007年、2008年)などが該当するだろう。要するに、「館 対 芸術表現者」の関係を通した地域活性に貢献する事業を文化庁が支援対象とすること、そのことに日本の芸術文化(ここでは主に現代美術)発展の基盤を築く可能性があるように思われるのだ。今まさに発展中の表現を認め、支援する国の姿勢を私は望む。経験主義に偏った評価軸に固定された支援であってはならない。

> タイトルメニューに戻る