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studio & residence 神山アーティスト・イン・レジデンス/KAMIYAMA Artist In Residence


















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コメント

日本には大小様々なアーティスト・イン・レジデンス(AIR)がある。どれ一つ取っても同じものは存在しないが、その中でもKAIRの存在は特に異彩を放っている。

そもそも徳島県が推進する「とくしま国際文化村形成プロジェクト」の計画に対して、町民たちがブレーンストーミングの末に出したアイデアが「芸術村」だった。そこからKAIRのAIRが始まるのだが、異彩を放つのはスタートだけではない。「アートなんてわからない」という町民にとって宇宙人のようなアーティストに右往左往しつつも、その疲労感を楽しみに、町の誇りに変えてしまったのである。そして、彼らはたくさんの宇宙人たちを虜にしてしまった。

ここでアーティストが蒔いた種(作品)を町民は花咲かせ、今では作品のある森づくりや休校を利用した美術館へと展開し、町外のファンも生まれている。そうしたKAIRの活動を調査して私が感じたのは、彼らにとってのAIRは、アーティストとのブレーンストーミングの場なのではないか、ということである。それは、アーティストと町民が対等の立場で向かい合っているということでもある。ブレーンストーミングは立場の優劣はなく、あらゆる意見を尊重し、アイデアをさらによりよいアイデアに高めていく。アーティストのアイデアを吸収して、発展させてしまう神山町にはAIRという枠に捉われない活動があるのだ。

秋のAIR本番を前にして、早くも春からKAIRはアーティストを迎え入れる準備を始める。4月にレジデンスアーティストの選考会、初夏には教職員宿舎の大掃除、そして毎月の森づくり。新しい慣習が人口7000人足らずの過疎の町に生まれている。

さて、今年はどんな作品が神山の町を、山を彩るのだろうか。
(渡邉美輪子)