culture power
artist 田尾創樹/Tao Soju
contents

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Copyright © Aomi Okabe and all the Participants
© Musashino Art University, Department of Arts Policy and Management
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©岡部あおみ & インタヴュー参加者
©武蔵野美術大学芸術文化学科
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インタヴュー

田尾創樹(オカメプロ社長)× 須田百香・瀬野はるか(芸術文化学科3年)

日時:2007年10月18日
場所:京都市内、田尾創樹アトリエにて

01 田尾創樹を知る為の10の質問

須田:はじめまして。オペラシティーの展示(※『project N 30 田尾創樹』-2007年7月21日から10月14日まで東京オペラシティーアートギャラリーにて開催)、とても楽しく観させていただきました。

田尾:あざっす!サンキュー!

瀬野:私たちは田尾さんの人となりにすごく興味を持ちました。一体何を見て、何を感じて、あの世界観は作られるのだろうかと。ですから今日のインタビューは田尾さんと他愛のないお話なんかもしながら、そのオリジナリティー溢れる世界観が垣間見えたらなと思いまして。

田尾:うーっす!

瀬野:ではまずは一問一答形式で簡単な質問に答えてもらっていいですか?

田尾:おうおう、カム&オン!

1.田尾さんの肩書きは何になるのでしょう?
 やっぱりオカメプロ社長かなあ?(先日の役員会議で見事平社員に返り咲き)

2.もちろん有限会社ですよね?
 できるなら株式発行してみたいですけどね。でもおっしゃる通りの有限だけど、夢は無限だぜ。

3.私たちが紹介するときもオカメプロ社長がいいですかね?
 ギザ何でもいいゼ。呼びたいように、マジで。

4.京都で活動されているのはなぜですか?
 街と自然のバラン&スーが気に入ってるぜ。下鴨にユーゲって言うスゲエ素敵なカフェがあってそこがマジおすすめ。まあメインのリー&ズンは会社が京都にあるってことなんだぜ。何げ無くいい感じって言うのがそのアンサーにあたるかな?

5.好きな音楽は何ですか?
 高校生のときとかはうちの爺さんの年金を横流ししてもらってCDガンガンだったけど年とるに従ってビン&ボーになって、買えない日常だったからだからなかなか聞かなかったけど人んちで色々聞いたりビデオでマライアキャリーをよく聞いてた。昔借りてた家の前がマーケットで、住んでた五年間四六時中同じ曲を流してたからかなりあたまにこびり付いてるな、死んでからでも思い出せるかもな。でもマジな話、工藤冬里さんてロッカーで陶芸家がいて、マジ興味深い人物で…工藤さんのミュージックはよく聞くね。
(※工藤冬里:70年代から活動を行う、ピアノ・ギター・ボーカル等をこなすマルチ奏者。主な活動はマシンガン・タンゴ、Guys'n'Dolls、不定形ユニットMaher Shalal Hash Bazなど多数。世界各地でツアーを行い、高く評価されている。また、陶芸家としての活動も知られている。オカメプロに今も大きな影響を与えており、オカメプロが工藤冬里のライブに数回参加したことも。「一人で事足りるドラムに三人で参加して一人分以下の働きも出来ずに足を引っ張ったことも」田尾さん談)

6.最近一番悲しかったことは?
 悲しいことって、普通に生活の中の細かいこととかあるけど、でもなるべく忘れるようにしている。情けない悲しさならたくさんあるよな。

7.あまり悩まないタイプ?
 極力悩まない。けど、人がどうでもいいと思うようなところで心配性というか。携帯の機種変更に行くのに二日のリハーサルが必要だったりとか。

8.お酒は飲まれます?
 ダチといる時はきまって酒樽につかるように男酒っていうか…で、大体二日酔いで。吐いてる時の人はマジ詩人で哲学者だよな。

9.武勇伝を教えてください
 二十歳の時に飲んでうんこを漏らしたくらい。朝起きてみたら(お尻を押さえながら)こうちょっと高くなってるってゆうか…ああって5センチくらい床から浮いてて(笑)

10.座右の銘は何ですか?
 うーーーーーーーん。あとでひねくり出すというのでいいかい?
田尾創樹
Courtesy of the artist and Take Ninagawa

02 どさくさに紛れて生きている

瀬野:今のアートシーンに興味はありますか?

田尾:勉強不足で実際無知だね。興味はないとゆうか自分の生活している身のまわりのことや人の方が興味があるし、そこで満足できると言うかそこから俺にとってはアイデアや面白いことが得られるから。そっちまで(アートシーンなど)あんまり気が回ってないのが現実だな。まったく関係ないけどこの前、銀の座で有名人を見かけたぜ。

須田:映像作品もいくつか作られているようですが、好きな映画などは?

田尾:映画は詳しくなくて。でも話題の映画に限って、前日徹夜しててコテッと寝ちゃう。自分で「これは面白い」と思って行く映画はビンビンに起きているんだが結局つまらないことが多くて。そーゆうマヌケな目にはよくあうぜ。

須田:では本はどんなものを読みますか?

田尾:学生の頃は哲学っぽいものとかも読んでいたけど、年をとるにつれ難しいこと苦手っていうか。自分の趣味とかわかってきて。俺は小難しいことは苦手。お気楽なものばっかり。最近はブックオフとかへ行って100円コーナーにある河村隆一の詩集みたいなものや、柳葉敏郎の本だったり。

瀬野:もしかして買ったんですか?!

田尾:あたぼうよ!遊びにきてたダチにも渡したぜ。帰りの電車で読むものないっていうから、早速ギバちゃんの本をね。写真も満載で楽しめそうだし。好きじゃないものを読むのも結構楽しいな、普通に読むのとは違う視点から見れるから。でも実際に読むんだったらさくらももこの本とかが好きだぜ。    

須田:一日にどれくらい描いているのですか?

田尾:バラバラだな、一日でブイブイいわすときもあるし…どえらゃ?ムラがあるかな。これからは毎日通勤してちゃんとやろうって目標を決めまして。だから、心を入れ替えてみようと思うんだがな………今まで1日のサイクルがぐちゃぐちゃで。だんだん体までボロボロになってきたから、タバコとかもやめて…健康的になろうって夕日に誓ったんだ。やっぱり体は資本だと思うぜ。俺心を入れ替えるたびに何故か大学ノートを一冊買うんだけど、何故かみんな冒頭の4,5ページしか書いてないんだ。そんなのがここ5年で30冊もたまちまった。つい最近のノートの最初のページには箇条書きでこれからの目標がぎゅうぎゅうに描いてあったけど成し遂げられたのは「調味料類のビンの蓋をしっかり閉める」の一つだけだったんだ。    

瀬野:今のスタイルに至ったのはいつからですか?絵はいつ頃から描き始めたのでしょう?

田尾:高校の時に…あっ俺シスターが3人いるんだが、みんな美大に行ってやがって。俺もそんな流れがあったから、絵画教室とか通ったりしてみたんだぜ。が、なんか性に合わなくてな。絵画教室ではとりあえず油絵の練習をしたけど、油絵のナイフでガリガリってやっていたら「そういうテクニックもあるけど今はちゃんとやろうよ」って言われたりしたんだ。それから結局大学行くのは面倒かもなって思ったりしてビデオ屋の会員になったり近くのスーパーのポイントカード貯めたりしながら部屋の窓からスカイを眺めたりしてブラブラしていていたよ。

須田:プロフィールを拝見するとイギリスの美術大学に行かれていますよね?

田尾:あまりにもやることなくて、とりあえずイギリスへ行ってみた。向こうでも特に何もせずまたブラブラしていて。このままじゃいけないって自分にビンタして、丁度近くに美術の学校があったので、ちょっと弥生土器みたいなのとつるつるの宇宙人みたいなのを粘土でこさえてアリンコを紙の上に乗っけてその軌道をボールペンで三時間追っかけたみたいなテキトーな作品っぽいものを徹夜で作って、朝一で。多分正規のルートで行くと英語力とかそういう試験受けなきゃとかあったりするんだけど、申し込み〆切間近にどさくさに紛れて大学に入った感じ。そう、どさくさに紛れて生きてる!

瀬野:では絵を描くこと自体は元から好きだったのですか?

田尾:ああ、わりあい好きだったかもな。でもやりたいことの選択肢ってあんまり、そんなになかったんだろうな。ただ、音楽とかより絵は俺にとって始めやすいものではあったんだろうよ。

瀬野:活動が絵画、映像、音楽など多義にわたっているのは、色んなことに興味があるからですか?

田尾:全部が趣味だからかなあ。俺のハートの中では。「俺はこーゆう哲学を持ってやってる!」という訳じゃねえしな。だからテキトーな気持ち。というか、軽い気持ちで手を出すっていうか。振れる球はボール球でも振っとけって感じかな。余談だけど試合の前日にバッティングセンターに練習しに行くと、お金払って打ってるもんだから試合では見逃すボール球までふっちまう。だから翌日の試合でもそうなって・・・・でもまあいいや。んで、深く追求してやろうっていう気持ちは特にないから。表面を適当になぞって遊んでいるみたいな。でもなんか続けているうちにやっぱり心がマジホットになる。でもこれからは中途半端な適当じゃダメだってことも痛いほど分かっているんだ。だから最近は人が描いた下絵をコピーしてそれに色とか塗ってんだ。とか、ちょっとインタビュー向きの答えをしてみたりな(笑)

須田:ということは、作品を通して何か伝えたくて作るというよりは……

田尾:そうだな、何か特定のメッセージがあるというよりは、ほぼ趣味だよな。ただその趣味の先にどんなラブやフューチャーがあるのかってことさ。でも人様に見てもらえるのはすごくラッキーだよな。サンキューって気持ちはマジもってる。

須田:では自分の中で影響を受けたことや、重要だった出来事とかはありますか?

田尾:お金がなくなったこと。今もお金はねえけど、ロンドンに居た最後の2年間は本当にお金がなくなって交通費とかもないから外にも出られない状態になって…学校行くにも片道分しか切符が買えないんだぜ。それで諦めてマジ家でずっと曲を作ったり、詩を書いていた。それでもまあ、楽しかったぜ。あんまり座ってばっかりだから久しぶりに外に出るとマジ歩き方が変なんだぜ。あとから分かったけど俺にお金がないのは働かないからだって気づいたんだ。とんだ見落としだったな。
田尾創樹
photo:Haruka Seno

03 オカメプロとは?

瀬野:オカメプロのきっかけは?

田尾:ロンドンにいた時からあって、「八目商会」っていうのを立ち上げて、オカメールっていう、郵便連絡とかしてて、んで俺が日本に戻ってきてから会社の給湯所で話していて「八目商会」ってふざけてるって思われてるかもなってことで名前を変えようって。で「オカメプロ」に代えて。プロがついた方がプロっぽいかなっていうリーズンで。…でもあとで気がついたのだけど、普通「○○○○プロ」ってつくところは「プロフェッショナル」の「プロ」じゃなくて「プロダクション」の「プロ」なんだよね。

一同爆笑

須田:「オカメプロ」という名前を作った時点で最初から活動していたのですか?それとも妄想から?

田尾:最初社の林田がイギリスに遊びに来てくれた時に、日本にある某市が合併するので名前を応 募しているから考えようとか話になって…でその時に、「オカメ市は?」とか話していて。ついでにバンドも作ってオカメ市の歌を作ろうって話していたってよくある他愛もないストーリーさ。んで時間だけ流れて数年後に連絡とったときまだ我々は何もしていないって気づいたんだ。んで、とりあえず屋台を引こう音楽もだぜ!みたいな話になって。ほいで京都の社員全員が元々好きだった工藤冬里さんの所へ営業で持って行って。でマジラッキーな事に一緒にツアーをまわらせてもらえる事になって。俺はその時まだイギリスにいたからさ、社員の林田、田中とその友人達が演奏して回ったんだ。

瀬野:ということは、オカメプロの始まりは元々音楽からなのですね?

田尾:イェスだね。だから社員の林田と田中はもとより工藤冬里さんて人がいなかったらオカメプロはマジこういった形になってなかったと思うんだ。一番の恩人だよね。

須田:他のキャラクターに関してもその延長線上でできたものなのですか?

田尾:ああ、日課みてえになんかしらやっちまうんだ。大体フォークギターに声だけで、コンピューターに直接取り込むっていう、それで出来上がり!みたいな。で、ある時それにバリエーションつけてえなって、低い声で「う"うっー」みたいな声で歌ってみた。よしじゃあ今日はこの声でいこうみたいな。そしたら昔「こんな声の相撲取りがいたよなー」って思って。んで相撲取りの設定でいっちょあがりって感じでさ。  

瀬野:もしや、それがあの太頭丸山ですか?!

田尾:ああ、ああ、そうだぜ、そうなんだぜ。

瀬野:では変化が出る度にキャラクターが生まれるという感じですか?

田尾:そうだな、まさにそんな感じさ。もしくは誰か他の人と組んだ時に名前を変えるみたいな。まあキャラクターを作るとそのまわりの話も作れるから仕事も増えて良いんだぜ。とてもヒマしてだったからな。それでもなにもない時は諦めて床の拭き掃除ばっかしてたよ。

瀬野:キャラクターが変わるときは気持ちが切り替わったりするのでしょうか?

田尾:あーどうだろう?…特に気持ちの変化はねえな。

瀬野:(気持ち的には同じで)ただスタイルが違うということなのでしょうか?

田尾:あー。その辺もまだ自分でも整理できてねえ。名前がちょっと違うっていうだけなんだよ…趣味だからなー…
田尾創樹
Courtesy of the artist and Take Ninagawa

04 「つくる」ということ

須田:普段は何をして遊んでいますか?

田尾:作業自体が遊びを含んでるようなものだからな?作業以外は、暇かなあ。特に何もしてない。とにかく作業をするの好きだしね。

須田:では「好き」って何だと思いますか?

田尾:なんだろうなーーーーほっといてもなんかやっちゃうことかな。

須田:田尾さんのほっといてもやってしまうことって何でしょう?

田尾:作ることが好きだから、それはやっぱりほっといても…例えば気に入った冗談とかを人からクドいと言われるまでやっちゃうみたいな。結構とことんやってしまうというか。昔はギャグを考えてから言うまでに喉のあたりで冗談を取り締まる警察みたいなのが検問はってたんだけど30こえてからはほとんど素通りみたいな感じになってきて。どの道つまらないギャグなんだから言うだけ言っとけみたいな。周りの人たちには気を使わせてソーリーって思うけどな。

瀬野:アイデアが煮詰まってしまうことはありますか?

田尾:書いたりすることが習慣なので、書いていてつまることはないかもな。マジ善し悪しはべつにしたら普通に日常やるようなことの一部みたいな。それを後々、組み合わせていく感じかもな。本当に思いつくままに書いてるかな。

瀬野:作っていて失敗とかしますか?

田尾:失敗かと聞かれると全て失敗のようなもんだけど。僕の場合は作ったものにあまり好き嫌いってないかもな………いや、あるか・・・・おお、ソーリー質問は何だったっけ?ワリい!忘れちまったぜ・・・

須田・瀬野:いや、大丈夫ですよ!笑

瀬野:最近忙しくなられて、好きなことを続けていくことが難しいと言うか環境的に難しくなってきたのではないでしょうか?

田尾:ああ、君のご指摘通り、人から意見とか言われること多くなってきてやっぱ意識はしてしまうけどな。だけどそれって実際は俺次第、お前次第って問いかけなんだろうな。
田尾創樹
Courtesy of the artist and Take Ninagawa

05 オカメプロは青い!!!

須田:「アーティスト」と呼ばれるのは嫌いだったりします?

田尾:…ああ、恥ずかしいぜ…

須田:自分のことをアーティストって意識されたことありますか?

田尾:ねえな。

須田:例えばオカメプロが解散して田尾創樹名義で活動されることってあるんですかね?

田尾:心が変わったらあるかもしれねえけど。違う名義を使うって多分照れ隠しみたいなのもあるんだと思うんだ。クチビルってバンドがあって(現在は休業中)それとかは河村隆一みたいな世界観で。「♪せつなさに君は???」みたいな青さ。(笑)実際斜に構えた位置からやって半分自分たちを茶化してるけど、やっている内に結構アツくなっている部分があるんだ。本当はどっかしら好きな部分があるんじゃないかって思うことが多々あるぜ。でもとりあえず「僕たちは冗談でやってるんだよ」っていうエクスキューズかな。自分はまだ恥ずかしいと思っているから、その防御のために。でも本当は恥ずかしくないはずなんだぜ。自分の自意識の過剰さ。不必要だよな。んで何でもマジでやった方が恥ずかしさも楽しさも倍増するとマジ思うからそっちのがいいよね、実際。だからガールズ&ボーイズはドンビーシャイって言いたいぜ。ビーアンビシャスラブって具合にな。

瀬野:もしかしてオカメプロの解散は照れがなくなったらということですか?

田尾:ああ、かもな。でもカメプロ(オカメプロの略称)はカメプロでこの社員じゃなきゃ出せない会社マジックってのがあるから皆に辞表を出されるまではどんな些細なビジネスチャンスも逃さない気持ちで、貪欲に明日のベンチャー企業の神輿汗を飛び散らせたいと思っているよ。でも自分の名前で弾き語りとかできたら、きっと青くなくなったってことかもな。いやいや・・・きっとそこが本当の俺の青の時代のスタートさ。さあ!ってな感じかな。
田尾創樹
Courtesy of the artist and Take Ninagawa

06 溢れ出るアイデア

田尾:この間、ダチと話していたんだけど、京都ってやっぱり観光客が多いだろ?「あの人たちがみんな、観光客のフリしてるだけだったらマジウケねえ?」って言ってさ。んで帰り道でちょうどゴスっぽい格好したバンドマンたちがいて…あれ全部、バンドのフリだったらマジうけるよなーってバカ話しして。きっとバンドやっているフリの世界にもコミュニティーがあって…本当にやっているような勢いで、家でドラムを練習するフリをしてまでバンドするフリをしたいみたいな!

一同爆笑

瀬野:作品を作るヒントはふとしたことや、友達と話している時とかに思いつくのですね?

田尾:そんなダチなんて多くねえけどソイツらと集まって飲んだり、茶しばきたおしてバカ話ってあ誰でもあるじゃん?本当にただその延長線上で…ただちょっとそれを実際にやってみるっていう。

須田:そこで実現させちゃうのが本当お見事です!!そのパワーは一体どこにあるのでしょう?

田尾:いやっ、パワーと言うよりはそれしかやりたいことがないっていうか。消去法でそれが残ったというか。だから多分あんまりマジメに絵ばっかりを描いたりもできないと思うしな。

須田:そうしてアウトプットしたものに対して、例えば中傷された時に結構傷つく方ですか?

田尾:あー結構傷つくさ。

瀬野:…それでも活動を続けるのですね!?

田尾:ああ。普段は結構「どうでもいいぜ」とか言うタイプ。だから、ご飯を食べる時に「何が良い?」って聞かれて「何でもいいぜ」って答えるんだけど、「じゃあ中華にしよう」って言われて、「でも中華は嫌だ」っていうそんな感じ。美術史とかよく知らねえけど…上から見下ろしたような感じで決めつけられることについてはちょっと傷つくと言うか闇夜で背後から襲いかかってビンタしてやるぜくらいには思うかも知れねえ。でも極力忘れて俺は、もっともっと泣き濡れた目で明日の朝顔の絵を描くような気持ちを忘れたくねえ。

瀬野:今、話されているような他愛もない話は昔からしてました?

田尾:昔はいわゆる一般的にカッコいいと言われているものが好きだったし、もっとマジメとゆうか固かった。今は年取ってきたせいか、色々オッケーって感じになってきた。人が臭いのは気になるけど自分が臭いのはもうオーケーみたいな。今年の夏を境に足もマジ大分臭くなって来た。鼻毛なんかタワシのようだぜ。こんなに飛び出してたらかくれんぼじゃ一番最初につかまっちまうな。
田尾創樹
Courtesy of the artist and Take Ninagawa

07 言葉とイメージ

瀬野:ちょっと…話は完全にそれるんですが…

田尾:鬼剃りくらいそってこい!

須田:…恋はしていますか?

田尾:ああ、うんまあ…色々。地球がまわっている感じで。

瀬野:恋の詩の作品が多いですよね?

田尾:おう!書きやすいんだよな、なんか。愛着があるものに例えたりしながら。犬とか、とろろ昆布とか油揚げなんかも好きだね。

須田:言葉とイメージを自然に組み合わせて作られていると思うのですが、言葉とイメージという二つのものをそれぞれどう捉えていますか?

田尾:ヘイ、グッドクエスチョンじゃんシスター!…組み合わせる時とかって今まで作ったドローイングのイメージとこれまでに作ってきた言葉とこれが雰囲気的に合うかなとか感覚的に決めてる。普通は多分、特定の伝えたいことがあってある程度伝えたいことが、あって作品作っていると思うのけど俺はそうではなくて、観ようによっていくらでも意味が変わってくるように限定されないように作れたらと望んでるんだ。だからどう解釈してもらっても構わなくて。もちろん、あまりに自由な解釈でたまに腹立つことはありますけれども…それはライフってことだから。ちょっとでも自分の作品の中から、その人なりに面白いものを見つけてもらえたりしたらラッキーだなと。

瀬野:制作する時に、絵と言葉別々で作るのですか?

田尾:そういうパターンが多いかな。でも絵を描いてる時に言葉が浮かんだり、何か言葉を書いてる時に落書きし始めたり。

瀬野:わりと同じイメージを使った作品が多いですよね。

田尾:そうかもな、また組み合わせを変えることによって違うことが思い浮かべられる限り同じイメージはいくらでも使いますね。気分によってという感じかなあ。だから作品の名前とかもあんまり決めないけど、展覧会の時にはつけなきゃいけないから考えるけど、それも気分によって変ったりするよな。

瀬野:音楽のイベントにも出てらっしゃいますよね。

田尾:ああ、たまーにな。あまりお呼びはかからねえけど。たまに趣味がよくて物好きでホスピタリティーに溢れた人が声かけてくれて俺はやっとステージに上がることができる。そこで俺は始めて自分のティーンネスを解放できるんだ。

須田:どんなことされているのでしょう?

田尾:パーフェクトダンサーっていうのは社の林田と田中のバンドで、俺はドクタービッグブラっていうプロデューサー役なんだ、ほとんど何もしてねえけどな。あとは大体俺がやっている。例えば、クチビルっていうのは俺と相方のエイジ・サカモトのユニットなんだ。俺がカニ座で相方が魚座だから、カニと魚なんです。前は上唇と下唇だったんだけどそれだとヒエラルキーができてちまうから今の名前にしたんだ。 (と話しながらクチビルのCDをかけてくれました★)

瀬野:フォークソングは好きですか?

田尾:ああ、好きだよ。けど、買ったりはしねーな、自分の想像でフォークソングを作ったりするよ。でも銭湯帰りの人の鼻歌とかマジ好きだね。

須田:クチビルはCDデビューしてるんですか?

田尾:ああ、たまに作るぜ。おっこれシスターたちにあげるぜよ!

須田・瀬野:(CDをもらい感激し、インタビューを忘れはしゃぐ私たち)嬉しい、ありがとうございます!!!

田尾:おうおう、みずくせえよ。気にすんなってんだ!今まで一枚も売れた事がねえぜ(笑)BGMとしてかかっている曲を指して)この曲はwomanという曲のliveヴァージョンなんだぜ。

瀬野:ライブされたときのですね?

田尾:ノーっ、擬似ライブだぜ。アツイ夏の日に多重録音して…黄色い声援とかも自分たちで採ってピッチ変えたりして…これ全部アドリブなので片方が笑うとそれでジ・エンドさ、だから実はすごいテイクを重ねているんだ。これごときに!相当、今聞き返すとどうってこたねえけど笑いをかみ殺しながらやってんだ。もっと言うとこれはドラムのジュンが辞める設定なんだ。なのに曲にはドラムが入ってないんだ。あとから気がついて…(笑)ジュン、ソーリーな!

須田:それにしても本当にクオリティーが高いですね!!

田尾:こんなの熱意さえあればいくらでも出来るぜ!

田尾:「♪摩天楼がぁーーー」(突然、BGMで流れていた曲を口ずさむ田尾さん)

インタビューなどすっかり忘れた私たちはオカメプロワールドにすっかり呑み込まれ、楽しい時間はまだまだ続く…

最後に。田尾さんが絶えず入れ続けてくれたルイボスティーの味とか、秋なのに異様に強すぎる日差しとか、部屋に入ってきた虫を必要以上に気にする姿とか、さりげなく置かれている謎のぬいぐるみとか、アトリエの窓に描かれていたバラが素敵だなとか、何のウケも狙ってない上履き姿とか、まさか一緒に聴くとは思わなかったチャットモンチーのシャングリラとか、私たちはその全てを忘れません!感謝!!
田尾創樹
Courtesy of the artist and Take Ninagawa

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