イントロダクション
アーティスティックなwebのトップを切った現代美術館。当時、展示風景をヴァーチュアルに見られるという3Dの講演会に、大勢がつめかけた。司会を務めた安田氏の落ち着いた横顔に、かすかな不安と高揚が感じられた。今でもホームページや英語訳が入った季刊誌「ハラ ミュージアム リヴュー」が充実している。つまりディテールからして国際的なのである。
アール・デコ様式の邸宅を美術館にするという卓見も、同時代に建てられた朝香宮邸の東京都庭園美術館に先駆けること4年。天井階にはフランスの作家ジャン=ピエール・レイノーに依頼して、真っ白なタイルで『ゼロの空間』(1981)を早々と設けた。「サイト・スペシフィック」という言葉が日本で流通する前のことだ。同じようにタイル製でパリ近郊に建てられたレイノーの自宅が消滅した今、原美術館の空間は、小柄ながら世界においてもかけがえがない。環境を生かした(あるいは、殺した)個性的な常設作品は、宮島達男のデジタル・カウンターの回廊、トイレに設置した森村泰昌の『輪舞』(1994)などへと続いている。
庭園も気持ちがいい。庭師のおじいさんは気さくで、真夏に観衆調査をした学生たちに、アイスクリームをおごってくれたらしい(感謝)。展覧会にちなんだカフェ・ダールのアート・ケーキもおすすめだ。草間彌生、森村泰昌・・・ずいぶん食した。群馬県の別館ARCにも原俊夫館長の独特のセンスが光っている。原美術館は、質の高い戦前の日本の芸術の粋と現代の先進性が、見事にエレガントな結晶となった類稀な宝石である。
(岡部あおみ)

