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実は、このインタビューで訪れるまで、私はここの展覧会を見たことがなかった。もちろん広告やらで、知ってはいたが、自分の住む多摩地区から遠いという理由でなかなか行く事がなかった。だから、東京都現代美術館・MOT、さぞすごいところだろうというイメージだけが先行していた。館内を色々と見る前に、インタビューで、様々な問題があり、苦境に立たされていることを知った。箱モノに対する周囲からの批判、場所・アクセスの悪さ、使い勝手の悪い建物、減らされる補助金、そして、館長がいなくて、これからの方針が決まっていないバラバラの状態であるということ。全体的にみると、スペースは広いが、残念ながら、名前程のものではないかなといった印象だった。とはいえ、コンスタントに素晴らしい企画展を開催しているようだ。常設展も日本の戦後美術の流れを勉強するのに適しているし、ていねいな説明カードまで用意されていて、充実している。図書館もあるし、隣にでかい公園もあるし、人によっては、かなり使えて楽しめるところであるはずだと思う。だが、それぞれがうまく結びついていないのか、誰もが楽しめるスポットになり得ていない。少しずつ開いていくことが必要だと思った。あの建物を使い倒せるぐらいまで。
しかし今、地域の顔を目指し、教育機関として積極的な活動が見受けられるようになった。子供向けに制作されたMOT観光マップは、美術館を親しみやすくするのに、一役買っている。主に子供を対象にした美術教育プログラム等も充実してきた。企画展に合わせたシンポジウム、大人向け現代美術講座等、興味深い。少しずつ、開かれてきている、ソフトな感じだ。これからも、美術と人を近づけるさらなる工夫に期待したい。
(担当:吉村一磯)