Cultre Power
mecenat 大日本印刷ICC本部/Dai Nippon Printing Co., Ltd.

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photo Mitsumasa Fujitsuka








Copyright © Aomi Okabe and all the Participants
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©岡部あおみ & インタヴュー参加者
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イントロダクション

大日本印刷(株)ICC本部本部長加藤恒夫氏は、レクチャーに大変慣れていらっしゃるご様子で、大学の名講義を受けているようだった。Artscapeを検索し、インターネットを駆使する学生たちにとっても、出版や情報産業の新たな動向の鍵を握る大日本の実態や抱負、さらに社会貢献活動を知るのは、期待以上の刺激と興奮に満ちていたようだ。さまざまな現場からのヴィヴィッドなお話も大変興味深かった。

印刷という、ものづくりの現場をもち、デザインの発表の場を提供し、作品のコレクション展示空間を開設する。さらにネット上でアートやミュージアムを包括する大規模な情報システムを展開し、デジタル・アーカイブやオンデマンド・プリントへと、休むことなく進み続けるDNP。外部とのコラボレーションによってつねに先端的な研究を重ねながら、ものから人へ、コミュニケーションへと広がってきたその力強い歩みは、現代の文化政策の課題を問いかけるキーワードに満ちている。

しかも、その歩みは堅実で無理がない。たとえば、2002年に銀座にオープンしたメゾン・デ・ミュゼ・ド・フランスにしても、泰西名画のカレンダー制作の積み重ねから、図版の著作権をもつフランス国立美術館連合(RMN)とのかかわりができ、デジタル・データの蓄積を経て、日本に「RMNイメージアーカイブセンター」を設けた。さらにCD−ROMなどのイメージソフトの作成から、具体的なレプリカグッズという日常的なオブジェへビジネス展開をするといった具合なのだ。

それを特別な宣伝をせずに、口コミで、高質なものを理解してくれる人にだけ提供する。一見、大量消費社会とは矛盾し、すぐには利潤にもつながらないように見えるが、時間をかけて少しづつ浸透させてゆくそのスローテンポこそ、高度なイメージの形成にとって不可欠であること、同時にポスト消費社会の文化的速度ともみなしているように思えた。

ご多忙のなか、志村耕一氏の企画で、加藤恒夫氏 原瀬裕孝氏、村田真氏と、多くの方々から専門的なお話を伺えたことを心から感謝致します。
(岡部あおみ)