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gallery Gallery HAM
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インタヴュー

神野公男(ディレクター)×三輪美津子(アーティスト)×岡部あおみ

学生:田中恵郁
日時:2000年6月22日
場所:Gallery HAM(名古屋)

01 名古屋の現代アートと親子二代コレクター

岡部あおみ(岡部):Gallery HAMを開設するに至った経由をお話いただきたいのですが。神野さんはもとはコレクターで、ヨーロッパとの関わりが強いですよね。

神野公男(神野):はじめは、観光ホテルの近くにある、ギャラリーたかぎに勤めていました。

岡部:名古屋の現代アートシーンでは、ギャラリーたかぎが、一番早く開設されたギャラリーでしょうか。

神野:桜画廊という画廊が最初です。そのあと、池田くんが今池ではじめ、ギャラリーたかぎが開廊して、おもしろくなりました。

岡部:名古屋の現代アートのさきがけとなったわけですね。

神野:そうですね。『現代美術のパイオニア』という展覧会を、桜画廊と一緒に、東京画廊の山本さんと、南画廊の清水さんに作品をお借りして、カタログを作りました。その展覧会が、名古屋の現代アートのはじまりですね。

岡部:神野さんがギャラリーに勤めはじめたのは、何年ごろですか?

神野:1970年代の終わりです。ちょうど荒川修作さんが活躍しはじめた時で、彼は、ドイツで展覧会をやったりしていましたね。4、5回目に開催されたドクメンタや、アメリカなど、ギャラリーがそれぞれの場所に協力したり、競いながら作品を買いつけに行っていました。

岡部:ギャラリーが買い付けた現代アート作品を買うコレクターが名古屋にはかなりいたというわけですね。

神野:そうですね。もともと、戦後から、中小企業の経営者などの、名古屋には単独のコレクターがいました。その子ども世代が、自分の親が作品を買うのをみていて、親とは違う作品を集めだしたんです。70年代、バブルの時期は、サロンというか・・仕事が終わる時間になるとサラリーマンや自由業のひとたちが画廊にあつまってきて、みんなでわいわいやっていました。まだ、コンピュータがもてはやされる前でしたから、みな、投資するものがなかったんです。コンピュータ時代に入ると、みな、家にこもってパソコンをいじるようになっていきましたね。そうなると、またちがう層のコレクターがでてきました。


神野公男(右)と田中恵郁(左)
© Aomi Okabe

02 ギャラリーの現況

岡部:Gallery HAMは、いつオープンしたのでしょうか?

神野:1992年です。

岡部:現在は、どのくらいのペースで作家の紹介をしているのですか?

神野:10人ほどの作家を、2年に1回ほどのペースで紹介しています。今は、日本の作家が中心です。

岡部:日本の作家のほうが、現在、人気があるからですか?

神野:そうですね…難しいところですが、ここ5、6年で傾向が変わってしまったところはありますね。外国の作家を紹介するばあいは、経費もかかりますし、価値観や契約の概念などのちがいもありますから、大変です。

岡部:ヨーロッパやアメリカの場合、三輪美津子さんのような、チャレンジイングで幅の広い人のほうが評価されやすいということがありますよね。日本の場合、ずっと同じことをやっている人のほうが評価されやすいという面があるかもしれませんが。

三輪美津子:そうですね、名前で評価されてしまうところがありますよね。

神野:本来は、知的なゲームなのですが、日本だと、集団的なゲームになってしまっていますね。

岡部:文化のちがいもありますよね。画廊を経営なさっていて、どのような点がここ5,6年で変わったといえますか?

神野:画廊の数も減ってきているし、観に来る人も減りましたね。こちらが流した情報にたいする反応が、極端に減りました。

岡部:情報がどんどん増えていて、それだけをみると、ずいぶん活気があると感じられますが、実際に作品が展示されている現場に来て見る人は少なくなったかもしれませんね。

神野:そうですね、ここ10年くらいは、新しいコレクターも、なかなかでてこないです。

03 インターネットに飽きたら

岡部:美術館も購入予算がとれなくなってきているところがありますし。IT時代に入って、一般の人のモノ離れが目立つのではないかという感じがします。作品も、インターネットでイメージをみて、満足してしまうといったように。

神野:そうなっていく部分と、反対に、インターネットに飽きる人も、これからでてくるでしょうね…。

岡部:最近は、インテリアを楽しむお洒落な人たちが、小型の作品を買っているようです。値段のはる家具などの実際のインテリアを買うのと同じレベルで、自分の好きなアート作品を買って部屋に飾ってみるといった傾向です。

神野:バブルのころは、OLが100万や200万の作品を買っていきましたよ。

岡部:作品をコレクションするという意識よりは、インテリア感覚だと思いますが。それから、もうひとつ顕著な現象としては、マンガと関連するネオ・ポップの作品が国際的にずいぶんとりあげられるようになっていますね。

神野:一種の社会現象ですよね。最近の日本の評論は、マンガのものが一番しっかりしていると思います。内容に具体性があって、しっかり捉えています。アメリカなどの海外では、マンガを、アートというより社会現象として捉えているようです。

岡部:名古屋は、デザイン系やメディア系が強い気がするのですが。それは、市や県の文化政策などの方針があるのでしょうか。そうしたなかで、名古屋の現代アートが、今後どのように動いていくのか、とても気になります。

神野:デザインなどは、県や市の文化政策はあると思いますが、現代アートは、東京や大阪など他の地域とは関係なく、個で動いているところはあります。そんなに画廊の数も多くないですから…。

岡部:画廊が作品を売買したり、情報を流したりすることを通して、アーティストを支援してゆくことが基本的に重要ですが、作家、画廊、コレクター、評論家、キュレーターなどとの連携が、うまく機能していくことが求められていますね。

(テープ起こし:水野慶子)


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