art apace & alternative space遊工房アートスペース/youkobo ART SPACE
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遊工房アートスペース、主催者の村田ご夫妻とNYからのレジデンシィー・アーティスト、ルイスとサンドラ。
©youkobo








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©岡部あおみ & インタヴュー参加者
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イントロダクション

遊工房の活動をネットで見ていたときは、あまりにも活動が多岐にわたり、全体を把握するのが難しかった。主宰者の一人、村田弘子氏とはアート関連の行事などでお会いする機会があったが、謙虚な方なのでご自分の活動の話はあまりされなかった。

夫の村田達彦氏とともに、遊工房にはご夫妻が運営するアーティストインレジデンスがある。小規模だが居心地のいいアットホームな国際的なレジデンスに、海外の作家が年間10-20人ほど滞在している。杉並区の西方にある遊工房の施設は、医師だった達彦氏のお父様が使っていた自宅で、結核患者のための診療所もあった。そこをレジデンス兼スタジオに改造し、エントランス・スペースを国内の作家が使用できるギャラリーにしている。中央線の西荻窪からバスに乗れば10分以内に到着する都内の閑静な住宅地にある。

エンジニアだった達彦氏と彫刻家の弘子氏が、自ら体験した実り豊かな海外での研修や彫刻シンポジウムの参加経験が、こうした活動を日本で始めたいという強い動機につながった。ギャラリーを国内作家に開放しているのは、レンタル営業のためというより、国内国外の作家同士の交流をはかり、見に来る地域の人々に施設を開放するためだ。

明確な目的意識(ミッション)をもったフレキシブルなシステム作りのお二人の話はじつに興味深く、実践から生まれた指針は示唆に富む。とくに感銘深かったのは、日本の貸し画廊で個展をする作家に対しての鋭い批評であった。高価なレンタル費用を出すために、バイトに明け暮れ、だがいったん作品を展示すると、そのケアをせずに、また制作とバイトに没頭する、という悪循環。作品を公開するという社会性を、もう一度考え直す必要がある、という提案なのだ。

国際的なネットワークを駆使して、海外での展覧会の企画を手がけ、人的交流の拠点ともなり、キュレーションやマネージメントを学びたい海外からのインターンへの支援も行っている。同時に、西荻まちメディアというNPOを設立し、今では千人も来場者が集まる伝統芸能「西荻薪能」を開始し、杉並区に34カ所もある「ゆうゆう館(敬老会館)」の運営を受託し、能を舞うワークショップや図工教室まで手がけている。週末にアーティストと子供が小学校でクリエイティヴに遊ぶ「アートキッズ」、高校生が商店街に独自のデザインを提案する試みも楽しく、かつ有効。

行政や諸財団から年間一千万円ほどの資金調達をしながら運営する中規模のNPOだが、それは運営資金にしか当てられず、若いスタッフのお給料を支払えないため、次世代育成が困難なのが大きなネックになっているという。ともあれ、超多忙ななかで、キラキラ輝いているお二人を見ていると、アートへの情熱に生き、生かされている、うらやましいばかりの幸福感が伝わってくる。
(岡部あおみ)