culture power
artist 田中功起/Tanaka Koki
Tanaka Koki
田中功起氏ポートレート写真
©Koki Tanaka Courtesy Aoyama Meguro

Tanaka Koki
田中功起
あたりまえのこと、あたりまえでないこと、そしてたぶんそのほかのこと
2007
installation view at The National Art Center, Tokyo
©Koki Tanaka Courtesy Aoyama Meguro








Copyright © Aomi Okabe and all the Participants
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©岡部あおみ & インタヴュー参加者
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イントロダクション

おもえば2007年は、あらゆる場所に「田中功起」の名前があった。
上野の森美術館、国立新美術館、森美術館、東京都写真美術館に水戸芸術館など、国内で多数の個展を開催、グループ展に参加。さらに海外へ目を向ければパレ・ド・トーキョー(フランス、パリ)やパウル・クレー・センター(スイス、ベルン)で作品を展示するなど、国内外でとにかく精力的に活動し、田中にとってはそれまで以上に多忙を極めた一年だったのではないだろうか。
本インタビューはそんな2007年の11月半ば、彼がカナダ・バンクーバーのノンプロフィット・アートスペースCentre Aでの個展オープニングを終え、帰国して間もない頃に実施された。自然、バンクーバーで発表した当時の最新作「Turning the Lights on」の話を軸にインタビューは進んだ。(しかし今にして思えば、その後同作品に言及した資料は少なく、これはなかなか貴重なインタビューの機会となったのだった)

その後田中は、2009年より文化庁の新進芸術家海外留学制度によって制作の拠点をアメリカ・ロサンゼルスにかまえることとなる。近年ではVitamin Creative Space(中国、広州)で個展を開催、世界各地での展覧会・プロジェクトに参加し、日本国外での本格的な活動が始まっている。そして第54回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表の最終選考に名前が挙がるなど、田中功起が1970年代生まれの日本人作家を代表する一人であるは自明のことだろう。

そもそも田中功起という作家、その作品に引っかかりを覚えたきっかけは、インタビュー同年の4月に国立新美術館で展示されたインスタレーションだった。
長い長い廊下状の展示室には、映像とオブジェとがランダムに構成されていた(一見、ただ無造作に設置したかに思えてしまうほど、「自然に」計算された配置で)。そこでわたしは、身体のなかに眠っていた感覚を喚起するスイッチのようなものが「カチリ」と押されたかのような感覚をおぼえた。水滴が転がりながら蒸発し、プラスチックコップがクシャッと握りつぶされ、大量のオレンジが階段から転がり落ち、バケツがガラガラとぶつかり合う。田中がつくりあげた単純な事象の連続には、パッと見たところのわかりやすさとなにかあっけらかんとした作風とは裏腹に、豊かでしっかりとした厚みがあった。それはいったい何であるのか、手がかりを見つけられたらと思い、彼へのインタビューに臨んだのだ。

(永田絢子)