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東京芸術大学で彫刻を専攻していた小谷の作品からは、透明感あふれる表面の奥に隠された高い熱をもった肉肉しい塊の感触を感じさせる。透明感あふれ、精錬された快感を与えてくれるのだが、一方で、透明過ぎるが故に感じる不安や恐怖。小谷は、現代社会で派生する様々な「温度」を確実に「リアリティ」をもった媒体で表現を続ける。それは時にジェンダー差であったり、美しさと醜さや生と死の関係のように両極がひとつの媒体で混ざりあう。世界各国で開催される国際展で彼の作品を頻繁にみることができるのは、現代の日本がもつ「温度」をまさに表現しているからではないだろうか。小谷は、多くの海外での作品発表の経験により日本の美術教育の問題や日本のアートの状況を冷静に見つめている。
(白木栄世)